4月7日に行なわれたセルビア戦で、日本のボール支配率が70パーセントを越えていたことはすでに述べた。ところが、シュート数はセルビアより2本多いだけで、スコアは0−3である。

ボールポゼッションが有効な攻撃に結びついていなかったわけだが、では、日本はどのようなボールまわしをしていたのか。各選手が誰からパスを受け、誰にパス(クロス)を出したのかを、テレビ中継から調べてみた。

テレビの中継ではシュートシーンのリプレイがあり、監督や選手の表情も挿入されるため、ボールの動きを追いきれないところが何度かあった。ただ、大切と思われる場面はほぼフォローされていたので、出てきた数字に極端なブレはないと考える。

データの収集にあたっては、不成功のパスやフィードは含んでいない。しかし、ゴール前で競り合いになったクロスは、誰を狙っているのかがはっきりしている場合に限りカウントしてある。

前半の日本でもっとも頻繁にパスが交換されたのは、長友と中澤だった。長友から中澤が15本で、中澤から長友へのパスは7本である。合計すると22本だ。左サイドバックと左センターバックによるつなぎが最上位にあげられるチームが、相手守備陣を効果的に崩せるはずもない。

22本のパスがかわされた関係は、もうひとつある。中澤と稲本だ。中澤から稲本が13本、稲本から中澤が9本を数える。中澤から稲本へのつなぎは前方向へのボールの動きだが、稲本から中澤はバックパスか横パスと考えるのが妥当だ。ボール支配率の高さは実効性に乏しいものだったことが浮き彫りになる。

パスを受けている回数がもっとも多いのは、中村の52本だった。次いで中澤が44本、遠藤と稲本が42本、阿部が40本、長友が38本と続く。右センターバックの栗原は28本、右サイドバックの徳永は27本だ。長友と中澤のパス交換がもっとも多かったことを含めても、前半のボールまわしが左サイドへ偏りがちだったことが分かる。

1トップの興梠が受けたパスは19本だった。

もっとも多いのは中村からの6本で、遠藤は2本である。

4−2−3−1の『3の中央』でスタートした遠藤には、1トップの興梠と太いパイプを築くことが求められたはずだ。ポジションが流動的になった0−2以降も、要求される仕事は変わらない。それだけに、興梠と遠藤の関係性が希薄だったことは、前半の攻撃が機能しなかった一因にあげられる。

岡崎が受けたパスは、興梠よりも寂しいものだった。チームでもっとも少ない16本にとどまる。シュートも20分の決定機だけだった。

最前線でどっしりと構えるのではなく、スペースヘ飛び出してシュートへ持ち込む岡崎は、そもそもパスを受ける回数が多いタイプではない。それにしても、ボールタッチ数が少なすぎる。パスの出し手となる中村からは4本、遠藤からはわずかに2本である。

先行したセルビアは4−1−4−1に似た布陣を敷き、しっかりと守備のブロックを作ってきた。アタッカーへのボールの供給が難しかったのは間違いないが、だからといって「相手の守備ブロックが固かった」と片づけるわけにはいかないだろう。ボールの動かし方、パスの引き出し方、マークを剥がすためのフリーランニングなど、すべてにおいて不十分だったと言わざるを得ない。異常なほど高いボール支配率は、攻撃面でのハードワークを怠っていたからに他ならないのである。

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖