お腹にもたれるような料理ではないはずなのに、このところの業界の動きには食傷を感じざるを得ない牛丼業界。「牛丼戦争」はとうとう最終章を迎えた。しかし、誰も幸せにならない結末しか見えてこないのだ。

 <すき家と松屋、最安値250円に 吉野家つぶし“仁義なき牛丼戦争”>(msn産経ニュース2010.4.5)
  http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100405/biz1004051522009-n1.htm

 <「すき家」を展開するゼンショーは5日、全国の繁華街や都市部の店舗百数十店で、牛丼並盛りを通常の280円から250円に値引きするキャンペーンを4月9日〜21日まで実施><松屋フーズも同日、牛めし並を通常の320円から250円に値引きするなどのキャンペーンを12日〜23日まで実施><吉野家が7日〜13日まで通常380円を270円に値引きするキャンペーンに対抗する>(同)

 つまり、吉野家渾身の値下げ攻勢は先行できる7日〜8日の2日間しか効果を発揮しない。その後はすき家・松屋に客を奪われ、通常価格に戻った時点でさらに自社顧客からも割高に感じられて利用を控えられるというカンフルの反動が出るのは必定である。

 吉野家の不幸は、牛丼業界のリーダー企業へと復権する夢を捨て切れていないことだ。規模で上回られた時点で、もはやリーダーの座はすき家(ゼンショー)に奪われていたのは明白だ。規模に勝る相手に価格勝負を挑むことは戦略の定石からして明らかに得策ではない。リーダー企業は規模の経済・経験効果でコスト低減が図れ、コストリーダーシップ戦略をとることができるからだ。また、吉野家は「味へのこだわり」として、他社がニュージーランドや豪州産牛肉を使用するのに対し、仕入れ値1.5倍の米国産牛を用いている。バリューチェーン上の弱点を抱えた上でのコスト勝負はどう考えても無謀だとしかいいようない。


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