オランダ戦。岡田サンは交替のカードを2枚しか切らなかった。5人を綺麗に交替させたオランダのファンマルバイク監督とは対照的だった。公式戦同様「絶対に負けられない戦い」をした末に、練習試合そのままの感覚で臨んだオランダに0−3で敗れた。両者の間にはスコア以上の開きがあったと言うべきだろう。

岡田サンはガーナ戦前日の記者会見でこう述べている。

「これまでW杯予選をメインに戦ってきたので、メンバーをある程度固定してやってきました。そのせいもあり、いつも出ているメンバーが揃うとそこそこいくのですが、1人、2人メンバーが欠けると、かなり開きが出てきてしまうと言う反省が、私の中にはあります。そういう意味で底上げも当然したい。しかし、W杯に向けて、限られた時間の中でもっとこのチームを伸ばしたいというジレンマの中で、明日のメンバーを決めたいと思う」

固定メンバーで戦うことを反省しているものの、全面的に反省しているわけではない。要約するとそうなるが、疑問は、チームを底上げすることと、チームを伸ばしていくことを相反するものと捉え、自身の中で葛藤していることだ。

W杯は1戦必勝のトーナメント戦ではない。グループリーグだけでも3試合ある。目標に掲げる「ベスト4」まで進めば、3位決定戦を含めて7試合戦うことになる。ベスト4を目標に掲げる監督には、フィールドプレイヤー20人すべてを有効に使い切る術が不可欠になる。いくら相手がオランダとはいえ、普段戦うことができない強豪とはいえ、そこで2人しか替えられないようではベスト4は夢にもならない。それで後半20分までしか持たなかったと言うなら、なぜメンバーを替えなかったのかと突っ込みたくなる。いつもの試合より、たくさん替えられるルールだったのに。

悪いのは、それができなかった選手と言わんばかりのその言いっぷりに、僕は無性に腹が立つ。岡田サンのプレスのかけ方には無駄走りが多いと感じる僕にはなおさらだ。

僕は自分の著書である「日本サッカー偏差値52」でも述べている通り、日本の監督のサッカー偏差値を50に設定している。これに対して選手は54。日本サッカーのレベルを上げているのは選手であり、足を引っ張っているのは監督。そう記している。岡田サンと日本代表選手の関係もしかり。岡田サンに監督としての力がもう少しあれば、日本代表はもう少し強くなると確信している。

そもそも、W杯予選をメインで戦うとなぜ固定メンバーになるのか。日本のグループは客観的に見て、世界で一番緩いグループだった。テストしながら勝ち上がる環境に、これほど適したグループも珍しかった。にもかかわらず岡田サンは、高校生の甲子園野球的な「絶対負けられない戦い」をした。余裕を一切感じさせない、ぎりぎりの戦いをした。予選突破が決まっても、その傾向に変わりはない。

他国は決してそうではない。試行錯誤を繰り返しながら予選を戦っている。強いチームほど、そこに余裕を感じることができる。本大会での可能性が広がるわけだ。

練習試合であるにもかかわらず、メンバーを2人しか交替させなかったらどうなるか。各クラブから批判が噴出していることは間違いない。岡田サンに対してとても優しい態度を示しているJリーグの各クラブのようなことはない。

ガーナ戦。阿部勇樹がピッチに登場したのは後半44分だった。そのときスコアは4−3。まさに時間稼ぎというべき交替を、岡田サンは練習試合で行った。失礼にもほどがある。僕はそう思う。浦和レッズの関係者並びにファンは、もっと激しく腹を立てるべきだと思う。

岡田サンは世界で最も恵まれた監督と言うべきかも知れない。何をしても批判を浴びることがほとんどない。周囲は優しい人で固められている。それで日本が強くなるのなら良いけれど、僕にはとてもそう見えない。

日本のサッカー界にもいろんな意味で「チェンジ」が必要だ。大幅な。

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