ドイツワールドカップ以来のゴールを決めた玉田<br>【photo by Kiminori SAWADA】

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 岡田監督は、1−0と勝利で終えたコートジボアール戦後、満足気にこう語った。

「ディフェンス、攻撃に関して、やろうとしていることを選手たちは積極的にトライしてくれたと思う。ただ、まだまだ前半においても自滅するような場面があったり、後半足が止まって押し込まれることもあったが、最後まで体を張ってがんばってくれた」

 3月に行われたバーレーン戦から2か月余り、日本代表はワールドカップアジア3次予選に向けて、勝利で再スタートとなる一戦を飾れた。

 試合開始早々から、ピッチ中央で周囲のチームメイトへ声をかけていたのが、1月からドイツでプレーする長谷部誠だった。

 「僕のポジションは周りに声をかけるのも大事な仕事。ドイツに行ったといっても4カ月くらいだし、何かが伸びたとかそういうところはわからない。ただ、球際で激しくプレーすることの重要性を再認識したし、そういう部分では相手に負けたくなかった」

 前半21分、今野がボールをキープし、大きくスペースの空いた右サイドへと走り出す長谷部へとパスを送る。長谷部がそのボールを受けると、ゴール前中央へ走りこんだ玉田へ絶妙なクロスを送る。大久保が絶妙な動き出しで、二人のDFを連れ出し、玉田をフリーにしていたことも大きかった。

 「ゴールは狙い通りだった。(ドイツワールドカップの)ブラジル戦以来。今思えば、やっぱり長かったですね。代表でというよりも、グランパスでもつらい時期もあったし。でもその時間があったから、今があると思いたい。いつも自信を持ってやっていますけど、ゴールを決めて、試合にも勝てたことは、やっぱり新たな自信になる」

 約1年半、代表から離れていた。昨シーズンはグランパスでの出場機会もわずかしか与えられなかった。今シーズンは開幕からスタメンに定着し、豊富な運動量と動き出しの余さは、代表でも発揮していた。そして、玉田とコンビを組む大久保も、切れのある動きだけでなく、守備への貢献度も光った。

 前線二人の動き出しの良さに、スタミナと力強さを見せる長友のパワフルなプレーが絡み、日本は何度かチャンスを作ることに成功した。

 「守備の面では上手くいったけれど、攻撃面ではもっとやれたと思う」とは大久保。松井大輔も同じようなことを話しており、中盤で試合を作った遠藤保仁も「まだまだ味方同士の距離が離れすぎていたり、連携面でも課題が多い。もっとそういうところをつめて行かなくてはいけない」と振り返っている。

 今回はバーレーン戦のスタメンから8人が入れ替わっている。体調不良や海外組の参加など、その理由は様々だが、新戦力を試すという意味では、長友の台頭など、手ごたえもつかめた。しかし、二人での連携が良くとも、三人の連携という面では、あまり上手くいっていなかった。

 前指揮官の下では練習時間の多くを攻撃に割き、同じ形を繰り返すことで、組織としての攻め方、そのイメージをチームへ植えつけた。誰が出場してもある程度の形、基本の形があった。しかし、その練習時間を守備練習へ費やしている、岡田ジャパンではまだまだ、チームとしての形が作れていないのが現状だ。

 「前線からプレスをかけてボールを奪う」という意識で奪ったボールをどうゴールまで運ぶのか、同じ絵を描ける選手が何人いるかのか?体力的に余裕のあった前半は、前への意識をプレーで見せることができた日本も、疲れの目立った後半は、ゴールを狙うため積極的に“攻め”を意識し始めたコートジボワールへ押し込まれる時間が長くなっていく。連動的な守備やカバーリングの意識など、守備面での手ごたえはあっただろうが、中1日で試合を重ねたコートジボワールのミスに救われた場面も少なくない。

 バーレーン戦後に「これからは俺のやり方で行く」と監督が宣言してから、まだ3ヶ月弱という時間を考えれば、そう簡単にチームが上手く機能しないのは、当然といえば当然である。しかし、その課題を克服する時間がそうたくさん残されているわけではないのも事実である。

 「とにかく、監督がやろうとしているサッカーをやり遂げないと、予選は勝ち抜けない」

 久しぶりにキャプテンマークをつけた中澤佑ニの言葉からは、選手たちの覚悟が伝わってくる。内容的の悪さを一番認識しているのは選手自身であり、ほとんどの選手が課題を口にしている姿は頼もしく映った。そして、25日にはいよいよ中村俊輔が合流する。果たしてどんな化学反応が生まれるのか、非常に楽しみである。

text by 寺野典子