石川遼

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石川遼のプロ転向記者会見は、いろんな意味で興味深かった。まだ16歳だというのに、日本の報道陣300人超を集める理由――それは、彼が「アイドル的スター」であると同時に「ゴルフのビッグスター」になる可能性を多分に擁しているからだ。

だが、彼はすでに国民的アイドルではあるけれど、プロゴルファーとしては、まだビッグスターではない。幅広い視聴者に向けて放送するテレビ局の記者たちは、まるで芸能人やタレントに対するかのごとき質問を石川に浴びせ、それはそれで理解できるが、プロゴルファーとしてビッグな将来性がある若者のプロ転向会見という本質を考えれば、もっと「ゴルフ」そのものに対する突っ込んだ質問で「プロゴルファー石川遼」を追究すべきではないかと感じた。

たとえば、「お年玉はもらったか?」「プロ転向を決意するための家族会議は、おせちを食べながらやったのか?」なんて質問は、かわいいハニカミ王子を演出する上では効果的だったのかもしれないが、プロゴルファーとしての彼の未来を占うものではない。

逆に、「プロとしての最初(当面)の具体的な目標は?」という問いかけは当然の質問だったのだが、石川の返答は「はっきり言ってしまうと、ほとんどない」という曖昧さ。だが、ここで「えっ、目標がないってどういうこと?」という具合に突っ込んでいかない展開には驚かされるばかり。米メディアだったら、石川のこの返答を聞いただけで、彼の決意の甘さをこっぴどく酷評したに違いない。

プロとしての夢は「マスターズで優勝すること。小学4年生からの夢だった」。だが、これに対しても日本のメディアからは突っ込みがない。そこで、「どのぐらい現実的、具体的にマスターズへの道筋を思い描いているのか?」とズバリ尋ねてみたら、石川はややしどろもどろになりながらも一生懸命考えて「まずは日本のトッププレーヤーになりたい」。

05年に15歳でプロ転向したミッシェル・ウィーの夢は「マスターズに出ること」。石川の「マスターズで優勝すること」より一段控えめで、ウィーは「出場すること」が夢だ。もちろん彼女は女性ゆえ、「出る」だけでも大変なこと。だが、彼女はその夢を描き始めたときから、「米PGAツアーに出て優勝を重ねる」という具体策をしっかり抱いていた。はっきりと「オーガスタへの道」が描けていても、プロ転向し、さまざまなプレッシャーや状況の変化の中で彼女は成績下降に見舞われた。そんな近年の例を眺めながら石川のプロ転向を比較すると、外野としては、どうしても不安を覚えてしまう。

その不安はないのかと、これまた石川にズバリ尋ねたところ、「(成績が)良くても悪くても、がんばっていれば(人々に)支えてもらえると思う」。彼の言う「人々」がどんな範囲の人々かによるが、成績が落ちればファンも注目もある程度は離れるという現実は、16歳の彼には、まだ見えていないし、見えていなくて当然なのかもしれない。

いずれにしても、プロゴルファーとしては「まだまだ甘い」と言わざるを得ないことが、はっきりと見て取れた石川遼。だが、そんな甘さが残るからこそ、大勢のファンから「かわいいハニカミ王子」と慕われ、アイドル的価値がさらに上がっているのも現実。「国民的アイドル」としての石川が「プロゴルファーとしてのビッグスター」というレベルまで成長してくれれば、日本のプロゴルフ界は本当の意味で盛り上がるのだろうけれど、そうなってくれるかどうかは、まだまだ「?」だ。(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)