物議を醸す言動が多いことで有名なチェルシーのジョゼ・モウリーニョ監督。つい先日も、「マンチェスター・ユナイテッドが犯したファウルにはＰＫの判定が下されず、チェルシーにはＰＫが与えられない。これがプレミアリーグに生まれた新ルールだ」と語り、タイトル争いを繰り広げるライバルクラブの反感を買ったばかりだ。

　歯に衣着せぬ発言で、処分を受けることも少なくないモウリーニョ。しかし、スポーツ心理学の権威であるアンディ・バートン氏は、このポルトガル人監督の言動を「意図的」と分析。“暴言”との批判を受けがちなモウリーニョ発言の数々は、緻密に計算されたチームマネージメントの一環であるという。

「モウリーニョは選手からプレッシャーを取り除こうとしているのだ。彼がプレッシャーを背負うほど、選手は試合に集中できる。刺激的な言動でわざと注目を集める。これが彼のやり方なんだ。その言動から誤解されがちだが、彼の発言が選手を鼓舞しているのは事実だ。モウリーニョにとっては、すべて計算どおりのはず。あえて四面楚歌の状況を作り出すことで、チームを結束させる。戦時に敵と対峙した兵士たちが結束するのと似た状況だ。モウリーニョは意図的に敵を作り上げる。彼はプレッシャーを楽しんでいるんだ」

　ライバルチームの監督だけでは飽き足らず、雇い主であるロマン・アブラモビッチ会長とも敵対関係に陥り、一時は来シーズン以降の去就が危ぶまれたモウリーニョだが、すでに獲得したリーグカップのタイトルに加え、プレミアリーグ、チャンピオンズ・リーグ、ＦＡカップと、いまだシーズン４冠の可能性を残している。バートン氏が語るとおり、すべてがこのポルトガル人監督の演出であるとするならば、今シーズンのチェルシーが前人未到の偉業を達成する可能性は十分にあると言えそうだ。