日本のスポーツ新聞を大幅に意訳した英語のスポーツサイトが元で、今季限りで4年契約が切れるイチロー外野手の去就が、地元シアトルで大きな話題を呼んでいる。ことの起こりは、日本時間の10日に神戸市内で自主トレを始動したイチローの発言だ。その内容は、翌11日に日本の新聞紙上で取り上げられたが、その中で、サンケイスポーツが「FA移籍に含みを持たせる発言」と、移籍も視野にあると報じた記事を、英語のスポーツサイト「Japanesebaseballdaily.com」が大幅意訳して掲載したことによる。

同サイトは、マイケル・ウェストバイ氏によって運営されているもので、「イチローが07年でシアトルを去るとサンケイスポーツに語った!」と見出しを掲げ、更に「イチローの言葉からはマ軍への皮肉が滴り落ちた。イチローは、自身の目標であるワールドシリーズ制覇をどこで達成するかというステージにいる。だから、シーズン後のアングルは、優勝争いをするチームに向いている。ヤンキースか、ボストンか? お楽しみに」とまで断言的に意訳したために、地元シアトルが大混乱してしまったのだ。

シアトルタイムス紙は、13日付けで「イチローの代理人が移籍報道を全面否定」と後追い記事を掲載。「イチローがそんなことを言ったら大ショックだ」というアタナシオ代理人のコメントを紹介する一方で、「彼は勝利にこだわるプロ意識の強い人間。相手がマ軍かどうかに関わらず、チームの成功は交渉に大きな影響を及ぼすだろう」と、球団への評価が去就の決め手の1つになるという日本語新聞の解釈を容認する発言も行っている。

更に、日本語が堪能な米国人ジャーナリストの特別寄稿原稿を掲載。「私が日本語の新聞を忠実に訳したところ、彼は現実的な話をしたに過ぎない。それに、大勢の報道陣に囲まれた写真は、重大発表の会見のような印象を与えるが、日本では年始の自主トレ初日を大きく取材するのが慣例だ」と、英語のスポーツネットが誤訳に走った背景を説明するほどだ。

イチローは、2年前にも、低迷するチーム状況に問題提起した日本語の記事が地元紙に大きく意訳され、監督批判、同僚批判と取りざたされた過去がある。イチローは慎重に言葉を選ぶ選手で、その語録は本にもなっているほどだが、時として、微妙な言い回しは、日本語と英語のニュアンスの違いを生じてしまう。それだけ、スーパースターの一言一句は地元での影響力が大きいという証明でもある。4年契約が切れる今季。シアトルタイムス紙は「球団関係者が、どんなことをしても彼を永遠に引き止める努力をすると語った」と、マ軍側の“永久契約”希望を報じており、その行方が注目される。【USA通信】