船乗りたちの心意気のようなものを感じさせます。

 2019年6月3日(月)、東京都千代田区の気象庁講堂で開催された気象記念日式典にて、日本郵船が運航する大型原油タンカー「高松丸」が気象庁より表彰されました。

「高松丸」は上述のとおり原油を運ぶためのタンカーで、2012(平成24)年に竣工し、年間約200万tの原油を、おもに中東から日本へ輸送している船舶です。そのような船が気象庁から表彰を受けた理由は、多年にわたる海上気象の観測通報に協力して、気象業務の発展に寄与した功績が認められたためです。


日本郵船の原油タンカー「高松丸」(画像:日本郵船)。

 世界中の船舶のなかには、実はこうした気象観測データの収集に協力している船が数多くあります。地球表面の70%を占める海は、世界の気象現象に大きな影響をおよぼしますが、洋上の気象データは観測が難しく、これを補うための活動というわけです。国連の専門機関であるWMO(世界気象機関)が奨励し、同じく国連機関であるIMO(国際海事機関)のSOLAS条約(海上における人命の安全のための条約)にも規範として定められています。背景にあるのは、各国の気象機関が外洋を航行する船舶のために気象情報を提供する代わりに、船舶は観測の難しい海洋上での気象情報収集に協力するという、ギブアンドテイクの考え方だそうです。

 国土交通大臣および気象庁長官は、こうした海上気象または海洋観測・通報を励行している船舶に対し、毎年表彰を行っています。日本郵船の運航する船舶では、は2018年に引き続き、気象長官表彰を受賞したとのことです。

 日本郵船は「この度の受賞を励みにより一層の安全運航に努めるとともに、引続き海洋上の気象情報提供に協力します」としています。

【写真】新造LNG船「武州丸」の「サヤリンゴ」


2019年6月竣工の、日本郵船とJERA社(東京都中央区)が共同保有する新造LNG運搬船「武州丸」。船上の白い構造物は、リンゴの形をしたガスタンクを覆うカバー(さや)で、建造した三菱重工はこれを「サヤリンゴ」と称する(画像:日本郵船)。