運転免許制度が改正され「準中型免許」が新設されてから、およそ1年が経ちました。ドライバーの高齢化が進み、若手を確保したい物流業界の要請を受けて登場した準中型免許、ドライバー不足の解決につながったのでしょうか。

教習では普通車と貨物車の双方を使用

 2017年3月12日に運転免許制度が改正され、「準中型自動車免許」が新設されてから、およそ1年が経過しました。


準中型免許の新設で、車両総重量7.5t未満の自動車を18歳から運転できるようになった。写真はイメージ(画像:写真AC)。

「準中型」は普通自動車免許と中型自動車免許のあいだに新設された区分で、車両総重量3.5t以上7.5t未満、最大積載量2t以上4.5t未満、定員10人以下の自動車が運転できます。中型免許は20歳以上にならないと取得できませんが、準中型免許は普通免許と同じく18歳から取得が可能です。

 この準中型免許は、若手ドライバーを確保したい運送業界の要望を受けて新設されたという経緯があります。それまで普通免許で運転できた車両総重量3.5tのトラックなどが準中型区分となった一方、中型区分だった5t以上7.5t未満のトラックなどが準中型区分に移行し、18歳から運転できるようになりました。

 全日本指定自動車教習所協会連合会(東京都千代田区)に、準中型免許について話を聞きました。

--どのような人が取得するのでしょうか?

 18歳から受けられるため、高校を卒業し運送業に就職する人などを想定しています。

--教習内容はどのようものでしょうか?

 準中型が最初の免許になる人もいることから、普通自動車を使用した講習と、貨物自動車を使用した講習の双方を行います。普通自動車と異なる貨物自動車の挙動や車高、視点の高さといった特性を理解するための専門的な内容が含まれるのが特徴です。

準中型新設で現場はどう変わったのか

--準中型免許を取得した人数はどれほどでしょうか?

 2017年内、つまり3月12日の免許制度改正から12月31日までのあいだに、全国の指定自動車学校で準中型免許の教習を受け卒業した人は7450人です。

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 この数値はどれほどの規模なのでしょうか。警察庁が毎年発表している「運転免許統計」によると、2016年中に指定自動車学校を卒業した人の数は普通免許で115万8327人、中型免許で3万8453人でした。準中型の統計期間が2か月短いことを考慮しても、普通免許とは言うに及ばず、中型免許の卒業者数と比べても少ないことがわかります。

 物流業界では準中型免許をどのように捉えているのでしょうか。全日本トラック協会は、「準中型免許ができて、とてもよかったという話は聞きませんが」としたうえで、「協会として、おもに29歳未満のドライバーを対象とした免許取得の助成制度を設けており、それを活用いただいているケースが多いです。業界では、車両総重量7.5tのトラックに乗れれば一人前という認識があるので、その意味では準中型免許がドライバーのステップアップに有利に働いています」と話します。

 運送大手の福山通運も、「高校から新卒で入社した社員には、1年の見習い期間のあいだに当社が費用を負担して準中型免許を取得してもらい、取得後は一人前のドライバーとして巣立っています。18歳で乗れるトラックの種類が増えたので、ドライバーとしての巣立ちは早くなっています」と話します。しかしながら、「準中型免許の新設によって人が増えたかといえば、そうとは言えません」とのことです。

 免許制度の面で若者がドライバーの仕事に従事しやすくなったものの、人手の確保には必ずしもつながっていないようです。全日本トラック協会は、「物流業界には『長時間労働』『賃金が安い』といったイメージがついてしまっています。若い人に興味を持ってもらえるような施策を打ち出し、そのイメージを払拭することが課題です」と話します。

【表】準中型新設で免許制度はこう変わった


運転免許制度の新旧比較(警視庁の資料をもとに乗りものニュース編集部で作成)。