去就に注目が集まるイチロー【写真:Getty Images】

写真拡大

合意間近で地元ラジオ局が特集も…2人の記者の意見は割れる

 マーリンズからフリーエージェント(FA)となっていたイチロー外野手が、古巣マリナーズとの1年契約に合意間近だと5日(日本時間6日)に米複数メディアが伝えた。米ヤフースポーツのジョーダン・シュルツ記者はツイッターで「マリナーズとの身体検査を通過後に明日、球団と契約を結ぶかもしれない、とイチロー・スズキは私に伝えた」とレポートするなど、まさに契約目前の状況のようだ。

 では、引退後の殿堂入りが確実とされている44歳の外野手が復帰することは、地元ではどのようにとらえられているのか。ラジオ局「ESPNシアトル」(電子版)の記者2人の見解は割れている。

「なぜイチローマリナーズ復帰は理に適っているのか」とのタイトルで伝えたのは、女性記者のシャノン・ドレイヤー氏。記事の中でも「これは理にかなったものである」と明確に記している。

 イチロー獲得へマリナーズの背中を押したのは、負傷者が続出したことだった。ここに来て、ベン・ギャメルも腹斜筋の故障で4〜6週間の離脱が予想されており、外野手の補強が急務に。マーリンズでの3年間ではバックアップとして外野の全ポジションを守ってきたマリナーズの“レジェンド”との契約に動いたようだ。

イチロー獲得が「理に適っている」理由は…

「昨秋のいくつかの情報は、イチローを連れ戻すことに興味を抱いていると伝えてはいたが、結局、マリナーズは44歳の外野手のために適した居場所を見つけることができなかった。今のイチローは我々が2000年代初頭に目にした彼とは明らかに同じではないが、彼はここしばらくの間、左翼を守る生産的な第4の外野手で居続けている。ベン・ギャメルが腹斜筋を痛めたことによる4〜6週間の離脱が予想されることに伴い、イチローに今スポットが与えられたのだ」

 ドレイヤー記者は、このように分析。さらに、「私は彼のことを素晴らしいチームメートと常に目してきた一方で、マリナーズのクラブハウスを去って以降はかなり心を開いてきており、特に若手の選手たちとの触れ合い方は得意である。彼は試合における彼の新しい役割を快く思っているようであり、年齢を重ねるごとにプレーをし続けるチャレンジに確実に心を突き動かされているのである」とも指摘。マーリンズでは、若手のお手本としても尊敬を集めたイチローの“存在感”に期待を寄せている。

 一方、同じ「ESPNシアトル」のコラムニストであるジム・ムーア氏は「なぜ私がイチローマリナーズで見たくないのか」とのタイトルで記事を掲載。こちらはやや否定的な見解を示している。

 同氏は、イチローと同じく昨年までマーリンズでプレーし、マリナーズではセカンドからセンターへとコンバートされたゴードンについて「唯一健康な外野手はディー・ゴードンであり、彼は今のところ二塁手から中堅手へスムーズな転向を果たせているのである」と指摘。そんな状況の中で、イチローの獲得は他の選手に怪我人が続出したことによる「応急処置」であると綴っている。

 さらに、「元マリナーズのゴールドグラブ&オールスターの外野手は昨年マーリンズで打率.255を残したFAである。彼は将来の殿堂入り選手、そしてマリナーズ史における最も優れた選手の一人である。しかし、イチローは現在44歳だ」とも言及。その上で「私はチーム内のルートからの方が好ましいと思う」と、若手の起用を優先すべきとの見解を示している。キャメロン・パーキンスや、内野のユーティリティーのテイラー・モッター、さらにアンドリュー・ロマインといった選手を外野で起用するほうが望ましいというのだ。

イチロー以外でお願いしたい」「2001年への逆戻りではなく」

 今オフはFA市場の動きが遅く、未契約の選手も多く残っている。それだけに、ムーア氏は「他のFAの外野手には、カルロス・ゴンザレス、メルキー・カブレラ、そしてイチローを上回っていると私は保証する元マリナーズのセス・スミスもいるのだ」とも指摘。また、「ネルソン・クルーズは指名打者としてより良い選択肢で、怪我の可能性もガメルやエレディアより低いが、イチローよりもクルーズを外野手の選択肢として目することが私には好ましいのである」と、現在は主にDHとして起用されている主砲クルーズの外野起用も勧めている。

 マーリンズでは4番手外野手として献身的にチームを支え、若手との強固な信頼関係を築いていたイチロー。ただ、シアトルの地元メディアでもある同氏は「これに関して私は間違っているのかもしれない」と前置きした上で「イチローはチームのことよりも、彼自身や彼の成績に興味を持っていると私は常に感じたのだ」とも言及。一方で、「もしかしたらそれは誤解かもしれない。それに彼は年齢も重ねて、目標であった3000安打もとっくに越したこともあり、変わったのかもしれない」と付け加えている。

 ただ、最終的な結論は変わらないようで「ジェリー(ディポトGM)、どうかイチロー以外でお願いしたい。サンキュー」と締めくくり、最後に「私は新しい名前(選手)を迎え入れる準備ができている。2001年への逆戻りではなく」とも付け加えた。

 イチローは昨季、マーリンズの一員としてセーフコ・フィールドに凱旋し、大歓声を浴びた。そして、最終戦で放った本塁打は、シアトルのファンを大興奮させた。マリナーズ復帰が正式に決まれば、歓迎されることは間違いない。ただ、全てが肯定的な意見ではないだけに、実際のプレーでこの復帰が正しいことを証明してもらいたいところだ。(Full-Count編集部)