喜び爆発、エイバル乾貴士の今季初ゴールと「帰国騒動」の真相
ビジャレアル戦で今季初ゴールをあげた乾貴士 リーガエスパニョーラ第29節、ビジャレアル対エイバルの一戦は2-3でエイバルが勝利を収めた。安倍晋三首相が主催するスペイン国王歓迎会に出席するため、日本に帰国することが決まっている乾貴士は、スペインを離れる前の最後の試合で、チームを勝利に導く今シーズン初得点を決めた。
「見ました? 点を取った後に、監督がでんぐり返ししたの。俺が点を取れなさすぎて、一昨日の練習から、俺が点を取ったら監督がでんぐり返しして、外したら俺がでんぐり返しっていうのを、シュート練習からしていた。だから今日は、ゴールを決めて監督のでんぐり返しを見ようと思っていた。気づいたときにはもうやっていたらしいですけど(笑)」
そこには笑顔と喜びが満ち溢れていた。乾はこれまでの試合でも、ゴールになってもおかしくないシュートを何度となく放っていた。だが、チャンスはことごとく相手GKの好セーブに阻まれたり、枠に弾かれたり、わずかに外れるなどして、数字として結果を残すことができなかった。
「お前は普通のゴールは決められないよ。ファインゴールか外に外れるかのどっちかだ」
肩の力を抜かせるためか、ただの”いじり”なのかはわからないが、そんなMFカパの言葉通り、乾の初ゴールはファインゴールで生まれた。77分、前線からのプレスで相手のパスミスを誘発し、ボールを奪う。エリア内に侵入し右足を振り抜くと、その弾道はしっかりと枠を捉え、逆サイドネットに突き刺さった。
その瞬間、エイバルの選手やベンチのメンディリバル監督、スタッフは笑顔に包まれ、ガッツポーズをする者もいれば、飛びつき抱き合う者もいた。誰もが乾のゴールを喜んでいた。
彼らの笑顔を引き出したのは乾の人柄にもある。試合終了後、定位置を争うライバルのベベが乾のもとへ近づき抱擁をかわしたことや、裏方である広報スタッフとも抱き合って喜びを分かち合っていたことは、乾がいかにチームを愛し、愛されているかを証明している。
「自分が決めたことより、みんなが喜んでくれている方が嬉しかった。あんなに喜んでくれるんだ、と。監督には本当に感謝しないといけないですし、チームメートにも。20試合くらい出ていて、1点も取ってない中で、ずっと使い続けてくれた監督には本当に感謝ですし、チームメートも自分を信頼してくれて常に声をかけ続けてくれたことは、すごく自分の支えにもなった。それがなかったら今日のゴールはなかったと思うので、嬉しいです」
シーズン初得点以上に、家族ともいえるエイバルの仲間が自分のことのように喜んでくれたことが、乾には嬉しく感じられた。
話題となっているスペイン国王歓迎会出席のための日本への帰国は、チームからの要請によるものだった。だからこそ、一度はメンディリバル監督に不参加の意思を告げたものの、愛するクラブのことを思って参加することを決め、ポジティブに考えるようにした。
「チームのためにと思って参加することにした。エイバルの決定に従いますし、サッカー以外でも、チームに『やってくれ』と頼まれることがあればやらないといけない。行って、しっかり何かできればいいと思います。光栄なことなのでプラスに考えて、チームに戻ったらまたサッカーで頑張りたい」
サッカー選手・乾貴士としては不本意かもしれないし、今回のクラブの決断には納得していない人も多い。それでも日本での歓迎会参加は、この試合のゴール同様、エイバルの多くの人をきっと喜ばすものになるはずだ。
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