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大阪大学(阪大)は6月21日、膵がんと肺がんにおけるがん促進因子を発見したと発表した。

同成果は、大阪大学大学院医学系研究科生化学・分子生物学講座(分子病態生化学) 菊池章教授らの研究グループによるもので、6月20日付けの米国医学誌「Journal of Clinical Investigation」オンライン版に掲載された。

膵がんや肺がんでは、正常細胞の増殖を促進するRasやEGF受容体と呼ばれるタンパク質が異常に活性化されるために、細胞が無制限に増殖すると考えられている。分子標的治療薬と呼ばれる抗がん剤は、これらの異常活性化を阻害することによりがん細胞の増殖を抑制するが、その効果は限定的であるため、がんの促進に働く新たなタンパク質を見つけ、そのタンパク質の働きを阻害する抗がん剤の開発が望まれている。

同研究グループは今回、膵がんや肺がんで多く発現しているタンパク質Dkk1に着目。細胞表面に存在しているDkk1に結合するタンパク質を網羅的に解析することにより、CKAP4と呼ばれるタンパク質がDkk1の受容体として働くことを発見した。さらに、Dkk1とCKAP4が結合すると、がん細胞の増殖を促進することが知られているAKTと呼ばれるタンパク質を活性化することもわかった。

また、同研究グループはCKAP4に対する抗体を作製し、これががん細胞の増殖を抑制することをマウスの実験で確認している。同抗体は、Dkk1とCKAP4の両タンパク質が同時に多く発現しているがん細胞に有効であったため、膵がん、肺がん患者の中でDkk1とCKAP4の両タンパク質が発現しているかどうか調べることで、CKAP4抗体を投与する患者を選択することが可能になる。

今回の成果について、同研究グループは、Dkk1とCKAP4が両がんのバイオマーカーになることで、早期発見に繋がる診断薬の開発につながるとともに、CKAP4に対する抗体が治療に応用できれば、効果の高い治療薬開発につながることが期待されると説明している。

(周藤瞳美)