「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「緑」。新緑がまぶしい季節にひもときたい漢字です。今回は「緑」に込められた物語を紹介します。



「緑」という漢字の旧字体も今の字に似ていますが、糸へんのとなりは「彔(ロク)」という字を書きます。

この「彔(ロク)」は、竹や木の表面の皮を剥ぎとって、その皮が左右に散らばる様子を示しているといいます。

そこから「緑」という字は、剥ぎ取られた若竹の皮のような緑色に染まった糸を意味し、「みどり」という色を表すようになりました。

「紅」「紫」「紺」など、色を表す漢字に糸へんが使われるのは、織物や衣服と関係があるからという説があります。

木々や草花をじっと見つめ、その生命力を我が身にうつしとろうとしたいにしえの人たち。

彼らはさらに、自然が生み出した色で染めた糸を身にまとったのです。

濃厚な空気を胸いっぱいに吸い込んで、夏木立の中をゆったりと歩くいにしえの人。

心地よい疲れを感じたら、苔むす岩に腰掛けてひとやすみ。

小さなヤマモモの実をかじれば、甘酸っぱい香りが広がります。

せせらぎの音に誘われて、しばしのうたた寝を。

赤子のように無防備なまま、緑のゆりかごに抱かれて眠る喜び。

深いやすらぎの中でいにしえの人がみた夢は、私たちがみる夢と、時空を超えてつながっているかもしれません。

ではここで、もう一度「緑」という字を感じてみてください。

水、土、光と空気を使ってエネルギーを創り出す緑。

たとえ色あせて枯れることがあっても、自らの力で生まれ変わり、永遠に続くいのちの巡りを見せてくれます。

そしてすべての生き物たちに恵みを与え、みずみずしい魂を取り戻す手助けをしてくれるのです。

遠くわきあがる万緑、光をはねかえす常盤緑、涼しさをとどめる緑の陰。

緑を目にするとき、人は、言いようのない安心感に包まれます。

希望に満ちた新生活を始めたものの、厳しい現実の壁を前に立ち往生しているあなたにこそ、緑の力が必要です。

心身の疲れを剥ぎ取れば、本当に望む答えが見つかるでしょう。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『地球大百科生きている森9 森のひみつ いのちを支える緑の力』(高橋孝輝/文 ナメ川コーイチ/絵 カマル社/企画・編集 生きている森編集委員会 ぎょうせい)

5月28日の放送では「正」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。

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<番組概要>

番組名:「感じて、漢字の世界」

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/