羽田空港と渋谷や新宿、池袋方面を乗り換えなしで結ぶ新空港線「蒲蒲線」構想(画像出典:大田区)。

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ラッピング電車が登場するなど、「蒲蒲線」の動きが活発になっています。実現すれば渋谷や新宿、また埼玉方面など広範囲が羽田空港と結ばれるその新線計画、いま動きが活発なことには、大きな意味がありました。

東急線に蒲蒲線ラッピング電車が登場

 2015年12月20日(日)、「蒲蒲線」の絵でラッピングした電車が東急線に登場。そのお披露目会が蒲田駅(東京都大田区)で開催されました。

「蒲蒲線」とは、およそ800m離れている東急・JRの蒲田駅と京急蒲田駅を接続する新路線の構想です。羽田空港へ直結している京急線と連携し、“空港アクセス線”として活用することが想定されているため、蒲蒲線は「新空港線」とも表現されます。

「実現したら、羽田空港はいろいろな人たちにとって身近になると思います。その計画を知り、ワクワクした気持ちで描きました」

 今回、大田区は電車を蒲蒲線の絵でラッピングするにあたり、「新空港線と未来のまち」というテーマで区内の小学生から作品を募集。最優秀賞に輝いた大田区立道塚小学校6年の上田ひなたさんは、絵を描いたときの気持ちをお披露目会でそのように話しました。

 大田区によると、わずか800mしか離れていない東急と京急の蒲田駅ですが、それを結ぶことによる効果は同区内に留まらず、非常に広い範囲へ及ぶといいます。

 蒲蒲線が実現した場合、羽田空港直結の京急線と東急多摩川線が接続されます。そしてこの東急多摩川線は、東京メトロ副都心線を介し西武線、東武東上線と直通運転を行っている東急東横線と、線路が繋がっています。

 すなわち東急蒲田〜京急蒲田間の800mが結ばれると、渋谷・新宿三丁目・池袋・所沢・川越方面から羽田空港へ、直通列車を走らせることが可能になるのです。大田区は蒲蒲線について、羽田空港の国際化が進行し就航便数が増える見込みであるなか、空港アクセスの強化には大きな意義があり、また災害時の迂回ルート確保といった効果も得られるとしています。

 ただ蒲蒲線の実現には、こうした新線建設で懸念される「財源」以外にひとつ、ある問題が存在しています。線路の幅(軌間)が東急線は1067mm、京急線は1435mmと異なり、そもそも直通運転が困難なことです。

 大田区はこの問題について、九州新幹線西九州ルート(長崎新幹線)などでの導入が目指されている「フリーゲージトレイン」(軌間可変電車)を利用することにより、解決できるとしています。

 しかしフリーゲージトレインは現在、実用化を目指しテストが行われていますが、開発が難航。2022年度が予定されている長崎新幹線の開業に、間に合わない恐れも出ています。

 この点に関して大田区の担当者は、在来線の蒲蒲線は新幹線と違い走行速度が低いことから問題にはならないだろうと話しますが、現実に開発が難航しているフリーゲージトレイン。実用化は時間を要する見込みのため、東急線と京急線の直結はあとにして、大田区はまず東急蒲田駅と京急蒲田駅付近とのあいだに線路を敷設。京急蒲田駅で乗り換える“暫定的な整備”を進める考えです。

 また蒲蒲線の建設は、東急多摩川線・矢口渡〜蒲田間と京急空港線・糀谷〜大鳥居間を、東急蒲田駅と京急蒲田駅付近の地下を経由して結ぶ計画のため、新線を設ける距離は800mより長くなります。

実は重要な意味がある、いま蒲蒲線ラッピング電車が登場したワケ

 大田区によると、この時期に蒲蒲線の絵で電車をラッピングするイベントを行ったことには、重要な理由があるといいます。今年度末に国の交通政策審議会で、整備を進めるべき鉄道路線について答申が出される予定だからです。

 鉄道の新線計画に大きく影響するその答申が出されるのは15年に1度。それに合わせて蒲蒲線の効果や、建設機運が高まっていることをアピールする目的があるのです。大田区は蒲蒲線の実現を「30年来の悲願」としており、松原区長は「今度こそ新空港線を実現したい」と話します。

 増加を続ける外国人観光客などを背景に、JR東日本もアクセス線の建設計画を表明するなど近年、存在感が高まっている羽田空港へのアクセス鉄道。2016年3月に出される予定の交通政策審議会による答申が注目されます。

 また、蒲蒲線のラッピング電車は12月20日から約2ヶ月間、東急多摩川線と池上線で運行される予定です。