今大注目のDMPを活用しマーケティングの新時代を開くVizuryの戦略とは?

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クロスデバイス・マーケティングキャンペーンを可能にするDMP「Engage」を国内に導入したVizury Interactive Solutions(以下、Vizury)。Vizuryは2008年にインドのバンガロールで事業を開始後、東京、デリー、北京、上海、広州、シンガポール、ジャカルタ、台北、ドバイ、ソウル、シドニー、サンパウロ、メキシコなど、アジアを中心に50か国でグローバル展開している。

DMPとはData Management Platformの略で、長期間調査し積み重ねてきた結果、ビッグデータにまで成長した自社の顧客データや自社サイトのログデータといった貴重な情報を一元管理・分析し、最終的に広告配信などのアクションプランの最適化を実現するプラットフォームとして注目されている。

Vizuryはeコマース、旅行、不動産、人材、教育、金融サービスなど、600以上の企業に対しソリューション提供しており、「デロイト・アジア太平洋地域Fast500」(新興企業500社)に2年連続(2013年、2014年)ランクインしているほか、アジア初のFacebook認定パートナー、Twitterリターゲティング・プラットフォーム・パートナーでもある。

今回Vizury日本法人の代表である富松敬一朗氏と、日本でのオペレーションを担当する同社のビジネスデベロップメントマネージャーである松原創氏に、Vizuryの今後の展開について聞いた。

――富松社長と松原マネージャーの経歴をお教えいただけますか。

富松敬一朗氏(以下、敬称略):簡単に自己紹介をしますと、私は広告主サイドの経験が多くて、実際年間10億円から200億円規模の予算を預かる宣伝部長をやったり、CMOをやったりしていました。主に金融業界(シティバンク、GEキャピタル)とエンターテイメント業界(ユニバーサル・スタジオ、20世紀フォックス映画社)などのグローバル企業におりました。直近3年はグーグル、あとはテレビCMのデジタルオンライン送稿をする日本支社を立ち上げたりしていまして、昨年縁があってインドVizury社の日本支社を立ち上げたという形です。

なぜVizuryに入ったかというと、まず1つ目は素晴らしい技術を持っていると言うこと。そして2つ目は、サービスの魅力です。私は広告主側が長かったので、広告主としてこの商品を買うかどうかを、まず考えました。自分が欲しいと思えない、買おうと思わないものを人に売れるわけがないですから・・・。私自身だったら思わず買ってしまうと思ったので、それならと参加をした次第です。

Vizury Japan代表取締役社長兼Vizury日本法人代表 富松敬一朗氏

松原 創氏(以下、敬称略):前職が楽天で、その前がビスタプリントというアメリカの会社にいました。オンラインで印刷サービスを展開している会社です。ボストンに拠点があるのですが、そこに7年間いました。アフェリエイトやサーチだとか、ディスプレイ広告全部を自分でマネージメントしながら、ROIを指標として売上を上げることをやっていました。

そのあとは楽天という、サービスを提供する側に入りまして、さらにアドテクという分野に興味があったというか、前の職で7年間やってきましたので、そこをもっと突き詰めていくなど、いろいろなことを楽天でやらせていただきました。

オンライン広告分野は今後、ビッグデータがキーワードになります。ビッグデータをどうやって活用するのかといった時に、DMPという手法を知りました。そこでDMPをどう活用できるかと自分なりに考えていたのですが、去年の10月までアメリカの楽天の子会社に出向していて帰ってきたときに、Vizuryを紹介していただきました。テクノロジーをいろいろと拝見した所、私が考えていたDMP、ビッグデータを活用できるプラットフォームがあり、是非Vizuryの今後のビジネスに携わりたいと思いまして、一発奮起して、楽天を退社して移りました。今はリターゲティングを含めて、DMPを日本に広めるべく活動しています。

――Vizuryが急成長している要因はなんでしょうか。

富松:やはり一番はテクノロジーですね。中学生、小学生からプログラムを書けるというインドの風土、インド人の強みで、常に新しい商品を出していこうという気持ちが強いですね。新しいアルゴリズムを開発して少しでもいいパフォーマンス上げることができる、常に新しいサービスを出していこう、既存のサービスを改善していこうという姿勢が強くて、常にITイノベーションをしているのが成長の要因としてあると思います。

もう1つはやはり、お客様に近いところですね。それは広告主とか、一般企業になるのですが、やはりそこで、総合的にお客様の立場に立って、技術革新をしよう、もしくはよりよいサービスを提供していこうという姿勢を貫いているのが強いポイントです。

3つ目は、事業を展開する場所選びが上手なところ。アメリカとかヨーロッパに出ていなくて、中心は新興国が多いアジア、中近東、アフリカ、南米というところが我々のテリトリーなんです。こういう地域は当然、ネットビジネス、広告ビジネスがすごく伸びているんです。国自身の成長速度もすごく速い、こうした地域を選んでいるというのは特徴ですね。

こうした流れをウォールストリートから見ると、すごくユニークに見えるらしいんですよ。アメリカとかヨーロッパは市場としてはとても大きいのですが、一方で競争相手も多いし、価格競争もある。そういう意味では、当社が展開している国はある意味まだまだブルーオーシャンが広がっています。そしてもう1つは、中国市場にすんなり入り込めたというのが強みですね。インド企業だから入り込めたんだと思います。昨今の緊張状態で日本の企業やアメリカの企業だと中国進出は非常に難しいですから。

松原:インド発で、アジアのアドテク企業として成功している企業は数少ないと思うんですね。アジアというくくりの中では、日本でもスタートアップの企業は数多いんですが、日本から外に出ることができない。Vizuryがすごくうまいのは、インドから発祥していってどんどん伸びていること。最初からグローバル目線を持ってやっていますので、各国で成功を収められているというのが大きいですね。

最初のポイントでも挙げましたが、クライアント目線を重視するんです。各国のクライアントの求めることは、それぞれ違うということをDNAレベルで分かっている。逆にアメリカの企業はそれが分からない気がします。アメリカでは「自分たちがやっていることが常に正しい」なので、日本であれば、「お国柄を考慮しこう変えろ」というのができない。日本の企業もフレキシブルさがあまりないので海外になかなか進出できない。日本のクオリティのまま外に出なくてもいいのに、それをやらないと自分たちのアイデンティティが崩れるみたいなことがあると思うんです。その辺、当社はうまく順応できているなと思うところはあります。

Vizury Japanビジネスデベロップメントマネージャー 松原 創氏

――その国にうまくフィットする形でサービスを展開されていると言うことですね

富松:いい例があります。昔「日本は特別だ」と言われていたことを覚えていますでしょうか。欧米の彼らにとって日本は特別だったらしいんです。でも最近ではグローバル化されてきて、そんなに特殊ではなくなってきましたが。でも今は、中国へいくと、中国こそ特殊だと言われています。中国ではTwitterもなければFacebookもなければGoogleの検索エンジンもない。このためデジタルの世界は、彼ら独特の世界になっており非常にユニークです。もちろん海外のサービスを真似たサービスはありますが、でも独自に進化している。そういう所でも当社は成功しています。中国の視点でサービスをローカライゼーションするのがうまくいっているからだと思っています。

インドは元々世界のITセンターで、金融やIT企業のバックオフィスがあそこにあります。彼らは優れたITのテクノロジーを持ちながらも、各国それぞれに対応することに慣れているという特徴があります。彼らに「これはできるか?」というと「イエス」しか帰ってこない。「中国だったら中国流にやりましょう。」「日本だったら日本流にやりましょうと。」「南米に行ったら南米流にやりましょう」といったところは強みであるかもしれないですね。これがアメリカの企業だと「はいこれ使って」と・・・。UIの文字だけ変えますが、あとは変えませんという感じですし。

松原:例えば、「なんで日本はこうなんだ?」というような言葉を、この会社に入ってから聞いたことがないんですよ。私は以前、外資系企業に勤めていましたが、日本はこうしなきゃいけないとか、こういったものが必要だといくら言っても、現地ではそれがスタンダードでない以上、「なぜなんだ?」という理由を聞かれて、その理由をとくとくと説明しても理解してもらえなくて、どんどん優先順位が下がっていくことが多くありました。でも当社では、この部分は日本向けに何かしなくていいのか、と聞いてくるような、分かっているというか、所々でしっかりとローカライズするというか、各国で根を生やせよう、育てようとしているように見受けられます。

富松:まさしくアジアパシフィックで独自の進化をしているという所と、あとはモバイル(スマホやタブレット端末)ですね。アジアでは、PCを買う前にモバイルを持っている人が多いわけです。PCの前にスマホを持っている。それも100ドル以下で買えるみたいな世界があるわけで。このためモバイルは進歩している。その先端を行っているのは中国、韓国、日本が挙げられます。戦略的にこの3か国は、モバイルでは世界をリードできるのかなという風には思います。細かく言えば、スマホの中でも日本はまだまだWebが強いのですが、中国ではアプリが強いです。こうした違いはあります。

アジアパシフィック、パシフィックを入れてくるとアメリカも入ってくるんですが、アジアに関しては急成長しています。中でも先ほどの3か国は技術が先行していますので上手く事業成長していければ、東南アジア、中近東、アフリカに技術を展開していける。もちろんインドにおいてもそうです。

当社は毎年、3つか4つの新しい新商品、新サービスを世に出しているんですが、これまでは中国とかインドでテストマーケティングをしていたんです。しかし今後はできれば、日本でテストマーケティングして、そのまま今度は逆輸出みたいなことができればと我々は考えています。何でか?というと、日本のお客様は見る目がシビアですし、テクノロジーも優れている。これに加えてマーケットも大きいし、もちろん通信環境も優れているという意味では、アジアの中ではトップを走っている。中国もありますが、トレンドに関して言えば日本がずっと先進的なので、日本でテストしたものは、うまくこう、アジアで展開できるのではないかと思っています。日本はそういう拠点としても面白いのかなと思いますね。

そして、DMPの開発に取り組むという話がいろいろな企業で出ていて、IBM、オラクル、アドビ、セールスフォース、アクセンチュアといった企業がやろうとしている。DMPは弊社としても今後注力していきたいと考えています。企業が今までやりたくてもずっとできなかった、オフラインとオンラインの情報を融合してお客様を管理していく手法。こういうことを実現できるDMPを日本でも広めていきたいと考えています。

松原:優位性という意味では、当社の製品はすでに海外で実績があります。十数社ほど実績があるんですが、何の実績かというと、オフラインのデータを含めて、社内で散らばっている大量のデータを統合し、マーケティングに活用したという実績です。統合するだけではなくて、それを効果的に使えるようにして、実際にお客様が使ってその効果も出ていますという所までの実績なんです。

一般的に言われるDMPは、オンラインにすごくフォーカスしていますね。Webサイト等のオンラインから得られたユーザーの行動データをベースにして、お客様(クライアント)が持っているCRMのデータを繋げて、何らかの深掘り分析を行いオンラインでの施策に当てはめていくのが基本です。

弊社の場合は、これまでオンラインのプラットフォームを売ってきたわけではなく、いわゆるリターゲティングサービスを提供してきましたので、オンラインだけのサービスではないんです。弊社のDMPは何がすごいのかというと、オフラインのデータとオンラインのデータとを統合し、ユーザーがオフラインでどういう行動を取って、オンラインでどういう行動を取っているのかが一気通貫で分析できるようになっていることです。このデータを使って、オンライン・オフラインを問わない形でいろいろなところに施策を打ってくださいと言えることです。

その一例としては、デスクトップPCであればEメール、オフラインならばコールセンターがユーザーのインターフェイスですね。そのほか面白いところで言えば、これらを銀行のATMなどとつなげてしまうこともできるんです。そして、たとえばユーザーがATMに行ってカードを入れて暗証番号を押したときに、そのユーザーに対して一番適切なマーケティングの商品が表示されるといったコントロールがDMPでできるのです。つまりVizury DMP「Engage」は、分析の所はビジネスインテリジェント、BIツールなのです。これに加えてDMPはマーケティングオートメーションツールなど、そのすべてが一体化しているというのも、ほかには例を見ないところですね。

他社サービスの場合はそういったBIツール、マーケティングオートメーションツールに繋がりますとはいっても、それぞれプラットフォームが別になっていて、データの受け渡しをしているだけの例が実は多いんです。ただ弊社の場合はすべてが1つになっています。なので、こちらで作業をして、次にあちらのサービスに移って作業をして、ということをやらなくていい。ワンプラットフォームですべてを提供しているのは非常にユニークでしょう。そしてこうしたプラットフォームの実績をしっかりと持っています。こうした点がかなりの優位性になっていますね。日本でもやっとトライアルフェーズまでたどり着けそうですので、これから徐々に実際に使い始めて、その効果を体感していただけるようになっていけると思っています。

富松:実はここ2、3か月で30社ほどの日本の大手企業に当社のツールを持って行ってデモをしたんですよ。説明をはじめて最初の10分、15分は眠たそうな顔をしていた担当者の方も、最後は前のめりになって話を聞いてくれました。これはそのとき語られた言葉なのですが、「こういった商品が現在日本にあったことが驚き」だと。「私が5年前に思っていたことがやっと実現できる」と。こういう風に仰る方が結構多い。理想が形として見えた…と。

でもネガティブな面が1つあって、我々がお話をさせていただく方はデジタルマーケティングの責任者や担当者の方です。当社のDMPツールはカバーしている分野がデジタルマーケティングの領域を超えており、導入するとなると営業、広報、企画、システムなどの他部署にも話を通さないといけない。なぜかというと例えばEメールは広報部が担当している等、マーケティングチャネルの担当部署が社内で分担されているケースが多いからです。コールセンターは営業部であったり、あとシステム部はシステム部で担当していたりとか。あまりにも多部署にわたってきます。こうなると自分たちの領域を超えていると。だからすぐに採用はできないし、小規模なところから始めましょう、という話になるので導入までに結構な時間がかかるんですよ。ですのでCFO、CTOだとか、COOクラスにも話を持って行かないといけないのかなという風には思っていますね。マーケティングと言ったことを遙かに超えてしまった商品だというところはあります。

DMPとリターゲティングは全然違う世界なんです。極論を言えば、DMPができれば、リターゲティングはいらなくなり、その中の機能の一部でしかなくなります。将来的には。オフラインとオンラインを1つにまとめてしまえば、総合的なCRMというか、顧客管理ができると考えています。営業も広報もシステムもすべて。会社としてお客様を見ることができる。お客様の行動履歴から、お客様のすべての情報が1つに集約できるわけです。

リターゲティングというのはあくまでも、買おうとしてその日に買わなかったお客様の取りこぼしをいかに拾っていくか、ですよね。その域を遙かに超えたのがDMPということかなと。我々がこういう商品を持っているということは、やはりユニークですし、なおかつこれが、今後の我々のビジネスの柱になっていくと感じています。

――リターゲティング広告については、ネガティブな意見を持つ方も少なくないと思います。それについては、どうお考えでしょうか。

富松:一般的なリターゲティングサービスは、「一度買ったお客様は何度も買ってくれるかもしれない」と思って何回も広告を出し続けるケースがありますが、我々はそれによるマイナスイメージも理解していますので、広告表示に制限を設けています。他社のサービスではそのようなユーザーの心理をまったく無視して1日何十回、何百回と広告表示するし、何度買ってもまだ広告を出し続けるといった感じですよね。クッキーをはずそうとしても外国のサイトに行かなければならない、加えて説明が英語表示だけのため、外し方も分からないようなケースもあるようです。そういう意味ではリターゲティングをネガティブに捉えてしまう方もいらっしゃるのかなと思っています。

我々としてはこのような状況をエデュケーションとうして、ユーザーの方に分かりやすいように、例えば右にマウスオーバーすればクッキーを外せる機能を用意していたり、1日に何回広告表示させるかという制限を設けています。そうすることで、できる限りリターゲティング広告へのマイナスイメージを持たれることをなくそうと考えています。それともう1つ。既に買ったお客様には広告を表示しないことにしています。一方で、広告主様にもクッキーを外すことや、1日の出稿回数制限をするべきといったことを言えるような会社にならないといけないと思いますね。広告主様の中には「ROI、ROI」といって、何度広告表示してもいいといったスタンスの方もいらっしゃるので、我々としても少し、是正しなくてはいけないのではと思いますね。

――日本市場に向けての今後の展開をお聞かせください

富松:会社の売上目標としては、去年330%だった売上伸張率を今年は400%くらいまで達成できればと思っております。それと、DMPというキーとなるサービス、これこそが本来我々の目指す姿なので、そこをもっと拡張していきたい。日本法人としては現状100%がリターゲティングによる収益なので、そこもまだまだ伸ばしていかないといけません。

将来的には私は、テレビとどううまく結びつけられるかな? と言うことを考えています。マーケティングの予算の半分以上はテレビなんです。テレビとデジタルは未だにまだ結びついていないし、全然違う指標でこの2つが評価されている。つまりデジタルの方はROIでTVはGRPで指標を立てています。このあたりをうまくどこかのタイミングで、テレビと融合できるはずだと思うので。おそらくデジタルがテレビを取り込むんだと思うのですが。そうなってくると本当の意味での顧客に合った広告表示というのができるんだと思いますね。

テレビはご存じの通り、見ていて自分と全然関係ない、例えば男性の視聴者にとって女性向けのシャンプーのCMが流れていても、興味がわかないわけです。本当はそこで、男性向けシャンプー、もしくはカメラなのか、車なのか分からないですが、その人の志向に合ったCMが出てくるというのが、企業側としても顧客としても一番望まれる姿なのかなと思いますね。そこまで取り込めればマーケットも大きくなりますし、広告主にとっても一番いい形かなと。

松原:日本市場における目標という点では、DMPは今年中には導入企業様を二ケタにしたいなというのがあるのと、リターゲティングサービスに関しては大手の広告主様がほとんど入っているような状況を作りたいですね。また、今後も新しいサービスを展開しようと思っています。

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