中国政府・外交部の洪磊報道官は9日の記者会見で、中国の地方紙が集団的自衛権の問題などで日本を批判する記事に広島と長崎に原爆のキノコ雲を描いた日本地図を掲載した件で質問を受けたが、事実上、無視した。掲載紙側も日本政府の抗議を受け入れなかった。

 重慶青年報が、3日付で掲載した記事「我々は過去に、日本に対して友好的すぎたのか?」に、広島と長崎に原爆のキノコ雲を描いた日本地図を掲載した。重慶青年報は中国共産党の付随組織である共産主義青年団(共青団)の重慶市委員会が管轄する週刊新聞だ。

 日本政府は岸田文雄外相が、「容認できない。被爆者の感情を逆なでするものだ」と発言するなど猛反発。現地の在重慶日本領事館に事実を確認した上で、重慶青年報の厳重に抗議するよう指示した。

 中国側報道によると、在重慶日本領事館のスタッフが重慶青年報社に足を運んで抗議したが、青年報社側は「同報道はわが方の判断で掲載した」とだけ回答し、抗議を受け付けなかったという。ただし、同紙は7日までに、公式サイトに掲載した同号から、地図掲載の第4面を削除した。

 中国外交部の洪報道官は9日の記者会見で、同問題に絡めて「中国は、日本が1945年に原爆投下されたことについて、どのような見方をしているのか」との質問を受けた。

 洪報道官は「日本軍国主義は侵略戦争を発動し、アジアの隣国に深刻な災難をもたらしただけでなく、日本の人民にも大きな被害をもたらした」、「最近の日本国内では、歴史の問題について絶えず消極的な動向が出現し、しきりに問題を起こしている」、「日本が歴史を鑑(かがみ)として平和の道を歩み、歴史の悲劇の再演を防ぐよう、希望している」と述べ、「原爆投下についての中国の考え方」についての回答を避けた。(編集担当:如月隼人)