中南米の新興国といえばBRICsの一角であるブラジルが最も注目されているが、日本人投資家の間でも、このところ徐々に人気が高まっているのがメキシコだ。メキシコ関連の金融商品を多数取り扱う楽天証券に、その魅力について聞いた。


ほかの新興国に比べてメキシコ経済は好調。株価も底堅く、今後に期待

楽天証券は今年4月から、メキシコペソ建て債券の売り出しを再開した。ほぼ毎月のように売り出しており、人気も上々だという。ほかにも、メキシコペソ建て債券の取り扱いを始めた証券会社は増えているようだ。では、なぜ今メキシコなのだろうか?

「新興国通貨建ての債券は、高金利のブラジルレアル建てやトルコリラ建てなどが根強い人気ですが、為替変動幅が相対的に大きいことが難点です。これらに対してメキシコペソ建ては、金利はやや低めですが、為替変動が比較的緩やかなことが人気の理由だと思われます」(楽天証券債券事業部長/相馬勉さん)

確かに過去3年間のメキシコペソ相場は対米ドルで1ドル=12〜14ペソのボックス圏で推移しており、このところ下落基調が続いているブラジルレアルやインドルピーなどと比べると安定している。楽天証券が取り扱っている「メキシコペソ建て利付債券」は、年利率(税引き前)が4〜4・5%と、ブラジルレアル建て債券などに比べれば低いものの、為替変動の安定感は大きな魅力だ。




しかも、「国外への資金流出を制限しているブラジルレアル建てやトルコリラ建ての債券は、現物の通貨ではなく、オフショア為替先物市場で取引されるNDF(ノン・デリバラブル・フォワード)通貨で運用され、需給が急変すると現物の通貨以上に相場が大きく変動する可能性があります。これに対しメキシコペソ建て利付債券は、現物のメキシコペソで運用されるので、安心感が大きいのです」(相馬さん)という。

このところ、米国の金融緩和縮小懸念や中国の景気減速懸念から多くの新興国経済が苦境に陥っているが、メキシコ経済は比較的好調を維持している。

「隣接する米国が景気回復に向かっていることが、メキシコ経済にも追い風となっているようです。メキシコの輸出の約8割は米国向けが占めています。ここ数カ月は、米国の金融緩和縮小懸念などの外的要因でメキシコの株価はやや低迷していますが、そもそも金融緩和縮小は米国経済が順調に回復に向かっていることを示す動きなので、懸念が後退すれば債券利回りは上昇し、メキシコ株も少しずつ上がっていくのではないでしょうか」(相馬さん)

ちなみに楽天証券では、メキシコペソ建て利付債券のほかに、「メキシコ債券オープン(毎月分配型)」(大和住銀投信)などの債券ファンド、「HSBCメキシコ株オープン」(HSBC投信)などの株式ファンド、ADR(米国預託証券)方式で米国に上場しているメキシコ株2銘柄などを取り扱っている。

「他の新興国に比べるとメキシコの株式相場は比較的底堅い動きを見せています。中南米市場の中ではブラジル株の陰に隠れていましたが、今後注目度が高まるかもしれません」(同・株式デリバティブ事業部マネージャー/河内直樹さん)




楽天証券取り扱いの主な追加型メキシコ投信と新発債券

メキシコ債券オープン(毎月分配型)
運用会社:大和住銀投信
基準価格:1万544円
設定日:2012.6.1
純資産総額:約328億円
騰落率(6カ月・%):−1.38

米国ハイ・イールド債オープン(通貨選択型)メキシコ・ペソコース(毎月決算型)
運用会社:国際投信
基準価格:9542円
設定日:2013.5.29
純資産総額:約182億円
騰落率(6カ月・%):―

HSBC メキシコ株式オープン
運用会社:HSBC投信