セミナーの講師はジョセップ・バラオナさん(写真)と柴田書店編集者である木村真季さん

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ここ数年、世界的にタパスがブームになっている。タパスとはスペインで生まれたおつまみ文化のこと。最近は日本でも耳にする機会は増えたが、実はよく知らない人も多いのでは?

先日、都内で開催されたスペイン食品とワインを紹介する展示商談会「スペイングルメフェア2013」で、タパスをテーマにしたセミナーに参加。意外に知らないおつまみ文化について聞いてきた。

タパスとはひと言でいえば、小皿にのせた料理、おつまみのこと。
「タパスは特別な料理じゃなく、出し方のこと。日本の肉じゃがだって、小皿にのせて出したらタパスと呼べる」
と教えてくれたのは、この日の講師を務めたジョセップ・バラオナさん。スペイン出身のジョセップさんは1991年に来日。現在は、1日1組のみのレストランアトリエ「L’estudi(レ・ストゥディ)」を主宰している。

タパスのメニューは店や地域によって違うが、オリーブや生ハム、マリネ料理や揚げ物類などが定番。もともとタパとはスペイン語で蓋の意味で、タパスはその複数形。昔はワイングラスに虫が入らないよう、生ハムなどで蓋をしながら飲んだのが名前の由来。13世紀には、アルフォンソ10世が酒と一緒に食べ物を出すことを命じる勅令を出したことが、おつまみ文化発祥のきっかけといわれているそう。

日本を含むアジア各国には少しずついろいろな料理を食べる文化が昔からあるが、欧米では1品がそれなりのボリュームで出てくるのが一般的。そのため、タパスはレストランや家庭ではなく、バルで食べるものという位置づけだ。ちなみにバルは日本ではバーと訳されることが多いが、実は朝から晩までやっていて、喫茶店やファミレス感覚でも使える場所。スペイン人の生活には欠かせないもので、1日に2〜3回同じ店に行く人もいるのだとか。

タパスと並んで最近パーティーフードとして見かけることが増えたピンチョスもスペインらしいおつまみだ。ピンチョスはフォークやナイフを使わずに食べられる、ひとくちサイズのフィンガーフードで、タパスの1つ。串が突き刺してあることが多く、バルなどでは串の数で会計をする。

実はジョセップさんはシンプルでスマートにアレンジしたピンチョスをはじめて紹介し、日本にブームを巻き起こした本人。『ピンチョス360°: all about finger food』(柴田書店)などピンチョスにまつわる著書もある。そんなジョセップさんに、
「日本人は1番ピンチョスを食べているかも」
といわれて驚いたが、焼き鳥に寿司……と例を挙げられて、なるほど納得。箸などを使わず食べられる料理は結構ある。

最近は本場スペインでも、洒落たレストランなどでタパス的なメニューを提供するところが出てきたり、星付きシェフのグルメなバルも登場したりと、タパスやバルのスタイルも多彩になっているという。

少量ずつ多数の料理を味わえるタパスやピンチョスは日本人が親近感を持ちやすいスタイル。すでに日本にもブームはやってきているが、今後ますます楽しみ方が増えていきそうだ。
(古屋江美子)