マリオン・バルトリ。テニス4大大会の頂点に、初めて上り詰めた

 テニスのウィンブルドン選手権女子シングルス決勝が6日に行われ、フランスのマリオン・バルトリ(28歳)がドイツのザビーネ・リシキを6−1、6−4で破り、初優勝を飾った。

 フランス人選手がウィンブルドンで優勝したのは2006年大会のアメリ・モレスモ以来。また、バルトリは4大大会初制覇を出場47度目で成し遂げ、これは45度目で1998年のウィンブルドンを初優勝したヤナ・ノボトナ(チェコ)の記録を塗り替える最も遅い達成となった。父の手ほどきで6歳の時からテニスを始め、2000年にプロ転向。苦節13年目にして初の栄冠だった。

 初制覇ながら全試合ストレート勝ちという圧倒的な強さを見せたバルトリだが、コートの外でも、その存在感を発揮した一幕があった。イギリスBBCの司会者ジョン・インバーデール氏が優勝したバルトリに対し、「バルトリのパパは彼女が小さい頃、『お前は美人にはなれない。シャラポワのようになれるわけないから、根性持って戦わなければいけない』って教えたのかな?」と発言。あまりに失礼過ぎるとしてBBCが直ちに謝罪する事態に至ったが、当のバルトリは次のように一笑に付した。

「本当に気にしていないわ。私が金髪でないことは事実だもの。それとも、私がモデルになりたいと夢見たことがあったと思う? 悪いけど一度もなかった。ウィンブルドン優勝? それはもちろん夢見てたわ」

 この見事な返しを受け、世界中からバルトリを賞賛する声が殺到。「これはカッコいい」「バルトリまじで惚れたわ」「今秋、(東京の)有明にきてもらいたい」と日本のネット界でも話題となっている。

 過去にも不快に思われる経験があった。自国フランスのラジオ局のキャスターが、マイクがオンになっていることを忘れ、スポンサーの数が他の選手より少ない要因を「マリオン・バルトリは、デブだもん」と発した声が、全国に流れる出来事があった。またもや、マスコミから悪口を受けたが、相手にしなかった。

 決勝で火花を散らした対戦相手、ザビーネ・リシキ(23歳/ドイツ)選手にも、優しい気遣いを見せた。

 リシキ選手は、決勝戦へと初めて駒を進めた。「わたしも前回は優勝できなかった(2007年の大会でビーナス・ウィリアムズに屈した)。ザビーネの今の気持ちが分かる。いつかあなたもきっと優勝できる」と話し、相手プレイヤーを思いやった。

▼ 表彰式を終えて、言葉を交わすバルトリ(左)とリシキ

(全ての写真は、Witters/フォート・キシモトから)


 父の手ほどきの下、幼い頃から抱き続けてきた夢を成し遂げた新女王が、女子テニス界の新たな扉をこじ開けた。