2つ以上の通信手段を持っておくのがお勧め

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■携帯電話はもっとも連絡がつきづらい

大規模な地震などの天変地異が起きた場合、いかに家族の安否を確認すべきなのか? カギを握るのは「いかに準備をしておくか」ということだ。

現在もっとも身近な通信手段は「携帯電話」だろう。通話にしろメールにしろ、各人が常に持っている携帯電話に頼ることは多いはずだ。

だが、インフラが破壊される可能性の高い大規模災害のとき、携帯電話網はもっとも「連絡のつきづらい方法」になりうる。理由は、通信回線のトラブルが起きやすいことに加え、通話・メールが込み合ってつながりづらくなるためだ。携帯電話網は、被災直後の場合、仮に被災地近辺でなかったとしても、通話や通信がしづらい可能性が高い、と考えるべきだ。

実際問題「つながりにくくなる」のは携帯電話に限ったことではない。東日本大震災では、固定電話も、インターネットも、あらゆる通信が一時的につながりにくくなった。「どの通信手段がいいか」と考えること自体が矛盾しているのである。

ならどうすればいいのか?

答えは「1つの通信手段に頼らない」ことだ。東日本大震災の被災地で、連絡が取れずに困った人々の多くには「1つの通信手段しか使えない」という共通項があった。携帯電話しか持っていない、あるいは固定電話しかない、という人には、それらがなくなると連絡ができなくなる。2つ以上の通信手段を使い、「1つがダメならもう1つ」といった形で使うのがいいだろう。

その際「2つめ」として強くおすすめできるのが、「携帯電話回線以外で利用するインターネット」だ。そもそもインターネットは、一般的な音声通話回線に比べ、通信が途絶しづらい特質を持っている。一方混雑には弱いのだが、災害時の場合、音声通話ほど込み合いづらい傾向にある。もし携帯電話の通話やメールで連絡がつかない場合には、パソコンを使い、インターネットのメールなどで連絡を試みるのがいいだろう。

スマートフォンを使っている場合には、携帯電話網でなく「無線LAN」を使って通信をしてみよう。カフェや駅、コンビニエンスストアなどには「公衆無線LANサービス」がある。通常この種のサービスは有料だが、東日本大震災の経験から、公衆無線LANサービスを運営する各社は、大規模災害時、通信混雑の回避策として、無料開放するよう、方針を定めており、いざというときには「サブ回線」として使える。またセブン&アイ・ホールディングスは、傘下のセブン−イレブンやイトーヨーカドーなどで、無料の公衆無線LANサービス「セブンスポット」をスタートした。まだ東京23区での展開に限られるが、身近にある店が多いので、いざというときには頼りにしたい。

平時から使い方を覚えておくと便利なのが「災害伝言板」だ。各携帯電話事業者は、大規模災害が発生した際、自分の電話番号宛にメッセージを残す機能を用意することになっている。これが災害伝言板だ。自分が使っている携帯電話事業者の災害伝言板は、他の携帯電話事業者の回線や、パソコンのインターネットからも確認できる。情報を登録したことを、自動的に家族などにメールで伝える機能もあるので、一度のアクションで、家族全員に安否を伝えられる点もありがたい。被災地から連絡を取りたい場合には、無理に何度も家族に連絡しようとするのでなく、災害伝言板などを使ったほうが、確実だし効率もいい。

なにより重要なのは、いざというとき、どうやって連絡するかを話し合っておくことだ。電話がつながらなければメール、メールがつながらないときは災害伝言板といった感じで、「どの手段を使って、どうやって連絡するか」をお互いに確認しておこう。書面にして残しておくのもいい。

なにか起きてから慌てるのでなく、なにかあったときどうするかを知っておくことが、安否確認にとってもっとも重要なこと。ここでも「備えあれば憂いなし」だ。

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ジャーナリスト
西田宗千佳
1971年、福井県生まれ。著書多数。近著に『災害時 ケータイ&ネット 活用BOOK』(共著、朝日新聞出版)がある。

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(ジャーナリスト 西田宗千佳)