そこで嫌でも思い出すのが、被保険者、年金受給者等のために、全国13カ所に建設された保養施設『グリーンピア』だ。国民が積み立てた年金保険料1953億円を投じ、経営不振に陥るや、全てをたった48億円で売却。しかも当時の厚労官僚は「法律で決まったことを粛々と実行しただけ」と開き直り、責任を一切取っていない。
 何のことはない。年金原資は役人の天下り先の特殊法人や「官のサイフ」と呼ばれた特別会計に流れ、浪費され、蒸発したのだ。これではどんなに保険料を納めても、穴の開いたバケツに水をくんでいるのと同じである。

 官僚機構に詳しいジャーナリストの北沢栄氏が指弾する。
 「国民の資産である積立金は、かつて郵貯、簡保などとともに主要な原資として財政投融資に投入され、特殊法人の焦げ付きが生じるなどしたため、目減りする原因となった。その後も社保庁のマッサージチェア問題が発覚するなど、どこにどう使ったかさえわからずじまい。今回の受給年齢引き上げは、仙谷由人党政策調査会長代行、今は無所属の与謝野馨前経財相、藤井裕久党税制調査会長の3人で決めたことです。国民には何も知らせず、イタズラに危機を煽り、消費税増税と一体となった国民負担に世論を向かわせようとしている。民主党と厚労官僚は国家詐欺集団です」
 現役・OB揃って自らの多くの利権と雇用を維持するために、庶民の老後を操っているのが、年金官僚集団である。そもそも、政治家がやるべきことをサボって改革を委ねようとすること自体が間違っている。

 ところで、この暴力団顔負けの悪党官僚が加入する共済年金は、厚生年金よりも優遇されているばかりか財務省管理で一銭も損を出していない。
 「年金の官民格差は著しい。'07年に自民党政権が年金一元化法案を提出したが、官僚の抵抗で廃案になっている。民間に比べて公務員への支給は手厚く、掛け金は安く、しかも定年制度でも優遇されている。さらにキャリアになると天下り先が用意され、退職金も民間水準以上。しかも格安の公務員宿舎や有給休暇の取りやすさなど福利厚生も圧倒的に厚遇で、いまやギリシャの公務員並みの特権階級になりつつある。国滅びて役人栄えるということです」(前出の担当記者)

 まさに「100年安心とダマした責任者、出てこいや!」と、叫びたくなる。
 「年金不信は、日本の国力を削ぐ負のスパイラルの入り口です。仮に現在出ている複数の年金制度改革案を実行し、年金財政が維持できたとしても、今度は生活保護給付が政府の財政を圧迫する。加えて70歳までの雇用を企業に強いるとすれば、人件費、若年者雇用の縮小、組織の高齢化による経営の沈滞など、企業社会に大きな弊害が出る。これらは企業の実質的なコスト負担増を意味し、明らかにマイナスの影響を及ぼします。それら要因が回り回って、庶民の生活を貧しくしていくのです」(雇用問題に詳しいジャーナリスト)

 年金と雇用制度、生活保護、そして企業経営は密接に結びついている。2カ月前、全国で暴力団排除条例が施行されたが、日本から排除されるべきは、サボリの民主党と官僚かっぱらい集団の方である。