【うちの本棚】第三十五回 豹マン/南波健二・宮崎 惇
「うちの本棚」、前回に続いて幻の特撮ヒーロー『豹マン』の南波健二ヴァージョンをご紹介いたします。
ピープロダクションが企画した特撮ドラマのコミカライズ作品で、「ぼくら」連載の桑田次郎版に先だって連載されたもの。
「ぼくら」よりも読者の対象年齢が高い「マガジン」だけあって、作画に劇画の南波健二を起用し、実写ドラマのリアリティをコミック版でも表現しようとしていたのかもしれない。また南波の作画はピープロのうしおそうじも気に入り、パイロットフィルムで南波の作画によるイラストを使用していた。
探偵の秋月光太郎が瀕死の重傷を負い、滝村博士の手で豹マンとして蘇る設定は同じだが、本作では「X300」という薬品によって蘇生されることになっていて、桑田版と微妙な違いがある。
ストーリーも、原作に宮崎 惇を迎えて宇宙生物の侵略、コンピューター制御の原子力客船の暴走と独自の展開となっているが、パイロットフィルムに登場し、テレビ化されれば豹マンの敵として登場したであろう地底人間が登場しないままに終わったのはちょっと残念な気もする。
南波はこのころすでに貸本マンガでも人気があり『トップ屋ジョー』などのシリーズも知られていたと思うが、「豹マン」という異形のヒーローを描くのには苦労していたようで、桑田版のようなカッコよさが感じられないのが惜しい。
単行本はひばり書房から全2巻で刊行されていたが、あまり知られていなかった印象がある。実際マンガショップシリーズが再刊されるまで桑田版以外のコミカライズ作品があったことを知らなかった読者もいるのではないだろうか(細かいことをいえばこの2作品以前に永島慎二による『ジャガーマン』もあるのだが)。
初出/講談社・少年マガジン(1967年42号〜1968年17号) 書誌/ひばり書房・シリーズ(全2巻) パンローリング・マンガショップシリーズ(全1巻) |
■ライター紹介
【猫目ユウ】
ミニコミ誌「TOWER」に関わりながらライターデビュー。主にアダルト系雑誌を中心にコラムやレビューを執筆。「GON!」「シーメール白書」「レディースコミック 微熱」では連載コーナーも担当。著書に『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』など。
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