後半から出場した石川直宏<br>(Photo by Kiminori SAWADA)

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70パーセント強のボール支配率を記録しながら、0−3で完敗してしまう。4月7日に行われたセルビア戦は、いかにも日本代表らしいゲームとなってしまった。

1−3で敗れた2月の韓国戦でも、ボール支配率は相手を上回っていた。闘莉王が前半終了間際に退場しながら、58・7パーセントを記録している。09年2月のオーストラリア戦も、ボール支配率では圧倒した。62・4パーセントである。しかし結果は、スコアレスドローだった。ボールを保持する時間が得点に反映されないのは、すでに何度も陥ってきた悪循環なのである。石川直宏が決定機を生かしていれば、試合の印象もスコアも変わっていたが、それにしても根本的な問題を解決することにはつながらない。

振り返ってみれば、試合前の練習は結果を暗示していた気がする。

日本のウォーミングアップは、18時40分から同59分まで行われた。身体をほぐす意味も兼ねた短い距離のパス交換に続き、タテ10メートル×ヨコ15メートルほどのスペースでのパスまわしへ移る。中村と岡崎がフリーマンで、4対4のボールまわしは常に6対4となる。

同じころ、セルビアはタテ10メートル×ヨコ20メートル強のスペースで、5対5のパスまわしをしていた。横幅が広いぶんだけ、日本より個々の動きがダイナミックだ。ボールまわしのテンポの確認はもちろん、攻守の切り替えを意識したトレーニングではないかと推測できた。

日本は約6分を、セルビアは約7分を、ボールまわしのトレーニングに費やした。その後は両チームともに選手がピッチへ散らばり、それぞれに身体を動かす。クリアをイメージしたヘディングを練習するCBがいて、シュートやクロスの感触を確かめる選手がいた。

両チームの違いが、はっきりと表れたのはここからだ。セルビアが両サイドからのクロスに合わせたシュートを繰り返したのに対して、日本はほぼシュート練習をしていない。中村、岡崎、興梠が、何本か打った程度である。身体をほぐし、パスまわしをして試合に向かったのは両チームに共通するが、セルビアはさらにシュート練習をしていたのだった。

だから日本はシュートが少なかった、などと断定するつもりはない。ただ、シュートに対する向き合い方の違いが表れていたのは確かだ。セルビアのシュート練習には、センターバックも加わっている。より実践的なウォーミングアップをしていたのは、日本ではなくセルビアだったと思う。

横パスやバックパスの多いボールポゼッションを見ながら、僕は狭いスペースでパスをまわしていた日本のウォーミングアップを思い出していた。同時に、セルビアのカウンターアタックにも彼らのボールまわしを重ね合わせていた。タテに長いスペースでのボールホルダーへのサポートが、カウンターでの飛び出しを思い起こさせたのだ。

ウォーミングアップの開始もセルビアが3分速く、終了もわずかに遅かった。メニューの合間にストレッチを入念にしていたのも印象的だった。キックオフからしっかりと身体が動き、なおかつ動きに重さを感じさせなかったのは、充分なウォーミングアップが下敷きになっていたと考える。

試合前の練習などという些細なものに理由を求めたくなるほど、日本のボールまわしはシュートに結びつかないものだった。選手の見極めができたのはこの試合の数少ない成果だが、それにしても使える選手が増えたわけではない。2軍以下のセルビアにホームで完敗してしまう現状は重く、それはまた、日本サッカーの現在地として南ア後にも持ち込まれていく。

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖