W杯予選の第3戦、対ルーマニア戦(10月11日)が近づくにつれ、フランス代表の周囲が騒がしくなっている。

 まず9月28日には、カナル・プリュス局のサッカー番組で、元代表のクリストフ・デュガリー氏と対談したジネディーヌ・ジダン氏が、フランス・サッカー連盟(FFF)エスカレット会長の発言を批判した。

 会長はドメネク監督の続投を決めた7月3日のFFF理事会で、「“フランス98”(98年W杯優勝メンバーを中心とする団体)のキャンペーンは執拗で、ときに度を超している。代表チームは連盟の財産で、一派閥のものではない」と発言(レキップ紙報道)、98年の代表主将であったディディエ・デシャン氏の監督就任を何としても阻止したいようすが窺えた。これについてジダン氏は、「フランス98の派閥があるとか、監督人事に圧力をかけようとしたなんて、事実無根。こんな発言こそスキャンダルだ」と応じている。

 続いてユーロ2008で代表の正GKだったグレゴリー・クペ(アトレティコ・マドリー)がもう代表への返り咲きはないと判断し、フランス・フットボール誌上(9月30日付)でドメネク監督とFFFに対する厳しい批判を展開した。

 クペはインタビューで、ドメネク続投に疑問を抱いていることを初めて明かし、身代わりとしてクビを切られたのがチームドクターと広報担当であったことを「独裁」、「恥」、「不健康」と激しく断じた。

 こうした中、30日付のレキップ紙によると、FFFのエスカレット会長は11日の“決戦”を前にしばしの休養をとっているが、「ドメネク監督の続投は確実ではない」と発言した模様だ。会長は「理事会は非難にさらされているが、10月15日の会議では気持ちに忠実な決定をとる。試合結果で自動的に決まるなら会議は必要ないだろう」と、フランスが勝てばドメネク続投、という当初の考えとは違った結論になる可能性もあることを仄めかした。

 ドメネク監督の続投には、W杯予選最初の3試合で勝ち点5をあげることが条件づけられた。つまり1勝2引き分けが課題となった。ところが初戦のオーストリア戦に敗れ、次のセルビア戦は勝ったものの、11日のルーマニア戦が引き分けに終われば勝ち点は4にとどまる。会長の言葉は、“引き分けでも続投はあり得る”ととれなくもないが、ドメネク監督の不人気が影響して代表戦の観客動員、視聴率とも低迷するという国民の“代表離れ”が深刻なだけに、“勝っても交代”という選択肢があることを感じさせる。ドメネク続投をゴリ押しすれば、12月に予定されるFFFの会長選挙で自身の再選が危うくなることも考えに入れているはずだ。

 セルビア戦の前には、去就に関心をもつ報道陣に苛立ったドメネク監督が「ギロチンが廃止されてよかった。(...)あなた方は血の匂いに集まってきたんだろう」などとコメントし、かねてから監督の挑発的な発言に気をもんできたFFF関係者に不快感をもたらした。「人気があってチームの管理ができない人物よりは、発言がまずくても現場で正しい決定を下せる監督のほうがいい」とドメネク監督を支持してきたル・グラエット副会長さえも監督の不遜な態度には手を焼いているらしく、「我々は目隠ししているわけでも、耳栓をしているわけでもない」と意味深長な発言をしている。