リーグ8連覇とともにチャンピオンズリーグ(CL)初制覇を今シーズンの目標に掲げるフランスの王者リヨン。昨シーズン2冠を達成しながら、ペラン監督を解任し、ピュエル監督を迎えたのも、このより高い目標を実現するための選択だったと言える。

 その大事な初戦でリヨンは17日、難敵フィオレンティーナをホームに迎えた。試合は前半に2点を先行される苦しい展開。73分にようやくピキオンヌのゴールで1点を返し、試合終了間際の86分にゴール前28メートルのフリーキックという絶好の同点機を得る。

 蹴るのはもちろんジュニーニョ・ペルナンブカーノ。デルピエロ、ベッカムらと並ぶ世界屈指のプレースキッカーだ。ジュニーニョがリヨンでこれまでにフリーキックを直接蹴り込んであげたゴールは40点にのぼる。ペナルティーの地点は、まさにジュニーニョのもっとも得意とする距離。フィオレンティーナの守護神フレイが試合前から警戒していた場面を迎えたことになる。

 ボールをプレースし、助走に入ったジュニーニョの表情を中継カメラがとらえる。このときジュニーニョは大きく息をついたあと、ぱちぱちと2度ウィンクした。これが“サイン”だったと気づかされるのはその1秒後。相手の壁の背後にまわったベンゼマのシュートがゴールネットを揺らしたあとだった。ジュニーニョは、伝家の宝刀を抜かずに、ゴール前へ走り込んだ若きエースに絶妙のパスを出したのだった。

 リヨンにとって、ホームゲームとしていい試合内容だったとは言えない。しかし究極の場面で、冷静かつ頭脳的なサインプレーで同点に追いつくあたりは、強豪がしのぎをけずる大会で勝ち上がっていくために必要なしたたかさを身につけたことの証だろう。9シーズンぶりでCL本戦に返り咲いたフィオレンティーナに対し常連の貫禄を見せつける幕切れだった。