ボルドー、アーセナル、リヨンで華々しく活躍し、フランス代表キャップ92試合、26ゴールを誇るシルバン・ヴィルトール(34)に現役引退の危機が訪れている。

 ヴィルトールは7日付のレキップ紙に掲載されたインタビューで、レンヌのラコンブ監督について「しゃべり過ぎ」、「お芝居が過ぎる」などの批判をあけすけに語ったことが原因で、即日クラブから当面の謹慎処分を言い渡された。

 ヴィルトールは昨年8月にリヨンで度重なる問題を起こし、クラブを追われるような形で古巣のレンヌに移籍した。レンヌでは大きな期待を背負いながらも、シーズン途中でラコンブ監督に交代したのを機に控えに回ることが多くなり、25試合出場で6ゴールと不本意なシーズンに終わった。

 ヴィルトールはインタビューで「ブリアンやパジスが疲れているときでさえ、自分を出さなかった。もはやサッカーの問題ではなく、個人的な問題だ」と出番が極端に減ったことに苛立ちをあらわにしている。

 さらにラコンブ監督はヴィルトールに「クラブにとっては出て行ってもらったほうがいい」とまで伝えたという。ヴィルトールも移籍を希望したが、これまでどのクラブからもオファーはなかったようだ。

 ラコンブ監督には、パリ・サンジェルマン(PSG)時代、ロテンやドラソーといった代表レベルの選手を“干した”前歴がある。ロテンは監督交代後にレギュラーに返り咲いたが、レキップ紙上で監督批判を展開したドラソーは、クラブから解雇され、その後も復帰できないまま引退に追い込まれた。

 監督批判が招いた今回の処分で、レンヌにおけるヴィルトールの居場所はほぼ完全になくなったと言ってよい。「出て行かざるを得ない状況」と語っていた本人にしてみれば、インタビューでの率直な発言は、決死の覚悟だったのかも知れない。

 ただし、高額の年俸を払ってまで、行く先々でトラブルを起こす34歳の“天然児”を引き取るクラブがあるのかは疑問。あるとすれば、今オフに経験と知名度を兼ね備えたスターの獲得に注力してきたPSGだろう。ヴィルトールはかねてからPSGでのプレーを希望していた。またオフの序盤に伝えられたPSGの補強リストの中に、ヴィルトールも名を連ねていたのは事実だ。「オファーはない」と話すヴィルトールだが、今回の発言がレンヌから厄介払いされることを意図的に狙ったものだとしたら、PSG入りという“ウルトラC”があり得ないとも言えない。