マンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソン監督は、チャンピオンズ・リーグの決勝戦を戦ったチェルシーのアブラム・グラント監督の功績を称賛。高い人気を誇ったままシーズン途中に退任したジョゼ・モウリーニョ前監督の影響が残る中、チームを率いたグラントの仕事ぶりを、「決して簡単なことではない」と評価している。

 昨年9月に退任したモウリーニョの後を受け、チェルシーの監督に就任したグラント。しかし、FWディディエ・ドログバやDFリカルド・カルバリョなど、ポルトガル人の前監督を敬愛する選手たちの移籍が囁かれ続け、さらに監督解任のウワサがつきまとう状況で指揮を執りつづけた。それでも、このイスラエル人監督は、見事にチーム状況を建て直し、プレミアリーグとチャンピオンズ・リーグの2冠に手が届く位置にまでチームを押し上げた。

 結局はライバルのマンUに両タイトルを奪われた形となったが、その手腕を評価する声は大きい。チャンピオンズ・リーグの決勝戦を戦ったマンUのファーガソン監督も、グラントの仕事は想像以上にハードだったはずだと語っている。

「グラントがポーツマスからチェルシーに来たとき、その仕事は監督であるモウリーニョをサポートすることだったはず。それが突然、監督に就任することになったんだ。しかも、一番難しい時期にね。大きな成功を収めた監督がクラブを去る場合、同時に選手の忠誠心をも持ち去ってしまうことがある。後を継ぐ監督にとっては、かなり厳しい状況だ。そういう意味でも、グラントは素晴らしい結果を残した」

 今シーズン、壮絶なタイトル争いを繰り広げた敵将から、慰めの言葉をかけられたグラント。シーズンが進むにつれて、徐々にチームをまとめ上げ、タイトルまで後一歩のところまで引き上げたイスラエル人監督の手腕を評価する声は後を絶たない。チェルシーではいまだ新監督の就任が囁かれ続けるが、この寡黙な指揮官が今後、就職先に困ることはなさそうだ。