生まれたときから難病と闘ってきた「ちいりお」こと理央奈ちゃん(7歳)。約2年前に開設したYouTubeは、9か月ほどで100万人を突破しました。見る人を笑顔にする理央奈ちゃんのSNS発信を始めた理由を、「ちいりおママ」こと母の佳寿美さんにお聞きしました。(全4回中の3回)

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「背を伸ばしてあげることができないなら…」

4歳のころの理央奈ちゃん

── SNS発信は約3年前、理央奈ちゃんが年中さんのころにTikTokから始められたそうですね。

佳寿美さん:はい、そうです。理央奈は赤ちゃんのころから低身長症のために背が伸び悩んでいて、3歳くらいになっても赤ちゃんと比べられることが多くて。「もうしゃべるの?すごいね」なんて言われて、一人ひとりの方に「3歳なんです」と説明すること自体をしんどく感じるようになりました。それに、明らかに小さいとわかっていながら、その話題に絶対に触れてこない、腫れ物にさわるような接し方をする人も増えてきて、生きづらさのようなものを感じるようになったんです。この状況、どうにかならないだろうかとずっと思っていました。

背が伸び悩んでいることは医師に何度も相談していたんですけど、「様子を見ましょう」と言われるばかり。でも、4歳半のとき、「どうにかして背を伸ばしてあげたいんです。何かしてあげられることはないですか?」と相談したら、初めて「お母さんは、人間の魅力は身長ではないことを教えてあげてください。今はそれしかできることはありません」と言われたんです。

幼少期の理央奈ちゃん

そのとき、「ああ、この子の背を伸ばしてあげることはできないんだな」と悟って、もちろんショックだったけれど、「じゃあ、何かほかにしてあげられることはないかな」と気持ちを切り替えるきっかけにもなりました。

ちょうどそのころ、TikTokを見ていたら、いろんな病気の人たちが情報を発信していることに気づいたんです。「こういうことに困っています」みたいな。見ていて、イヤな気持ちには全然ならなかったし、逆に気づきもあって。そのうち、「私も理央奈のことを知ってくれる人を増やしてあげたいな」と思うようになり、TikTokでの発信を始めました。いっけん、まわりの子たちよりも小さいかもしれないけど、「理央奈はこんなにおもしろくて、かわいいんだよ」って伝えたかったんです。

パパにはいつも厳しい理央奈ちゃん。そのわけは…

パパのお膝の上は理央奈ちゃんの特等席とか

── 佳寿美さんの名前で発信されているinstagramでは、「うちも同じ病気です」というコメントがいくつかありますね。

佳寿美さん:そうなんです。長男も1歳半のときに「急性脳症」という、脳症と痙攣(けいれん)を引き起こす難病を発症していました。さいわい奇跡的に完治しましたが、理央奈も難病を持って生まれてきて、「うちの子たちばかりどうして?」という思いがありました。

でも、SNS発信するようになってからは、投稿を見てくれるみなさんが「うちも同じです」とコメントをくれるようになったんです。まわりの親御さんで、「外からはわかりづらいけど、うちの子は実はこういう疾患があるんです」と打ち明けてくださる方もいました。ほかにも、「元気づけられています」と言ってくれる方が増えて、今では「SNS発信してよかったなあ」と思っています。

病気と闘ってても…こんなにかわいい理央奈を知ってほしかった

── 理央奈ちゃんの動画はかわいくて大ファンです。おしゃべりもすごく上手ですね。

佳寿美さん:動画には、普段のありのままの理央奈が写っていて、そこに共感していただける方も増えてくれてありがたいですね。最初はけっこうふざけながら撮ることが多かったのですが、そのうちおしゃべりをしたり、パパにお説教したりする動画をアップしたら、「すごい!この子、おしゃべりが上手」みたいに褒めてもらえることが増えました。

理央奈のおしゃべりは日常だったから意外な気持ちでしたが、たくさんのコメントをいただいて「理央奈っておしゃべりが上手なんだ」って初めて気づいて。「いつもの理央奈のおしゃべりがこんなに喜んでもらえるだ」って、たくさんの人に理央奈を知ってもらえるきっかけになることもわかったんです。それからはおしゃべりする様子を多く撮るようになりました。

6歳の春。車いすでお出かけ中の理央奈ちゃん

── 理央奈ちゃんはお父さんへのツッコミがすごく上手ですが、お笑い好きのお父さんの影響だそうですね。

佳寿美さん:はい。夫は、理央奈が赤ちゃんのころからお笑いを仕込もうと頑張っていたんです。2歳年上の息子は同じことをしても冷めた感じだったんですけど、理央奈はすごくお笑いにハマって、いつのまにか自分からボケるように(笑)。

理央奈は、性格が明るくて、「人を笑わせたい」「笑顔になってほしい」という気持ちが強いなあって感じます。私と息子はあまりそういうタイプではないと思うんですけど、夫と理央奈は明らかに、「人に笑ってほしい」「楽しんでほしい」というサービス精神がすごくあると思います。

「パパへのお説教は、本当はもっと長いんです(笑)」

── 普段、YouTubeは、どんなスケジュールで撮影されているんですか?

佳寿美さん:ショート動画は、晩ご飯を食べているときや晩ご飯後の団らん、お風呂に入った後などのタイミングで、日常のひとコマを切りとるような感じで撮影しています。

実は、パパへのお説教って本当はもっと長いんです(笑)。お説教が始まったら撮影を始めて、一部を切り取っています。長い動画は、撮影も編集も結構時間がかかるんですけど、娘が「次はこういうのを撮りたい」ってリクエストしたものを週末にまとめて、夕飯の前とか時間があるときに撮影しています。

左から佳寿美さん、理央奈ちゃん、パパ。3人ともとってもいい笑顔

── 佳寿美さんはお仕事もされていて、家事と子育て、動画の撮影・編集と、すごくお忙しいと思います。たとえば、毎日の夕飯はどうされているんですか?

佳寿美さん:本当は家事代行サービスなどを利用したいところですが、田舎なのでなかなか難しくて…基本的に自分で作っていますね。家族の健康のために、できるだけ料理は手作りしたいんです。といっても、毎日「もう今日は無理。ご飯、(作らなくても)ええかな~」って言ってるんですけど(笑)。

理央奈ちゃん:それでも、いつも作ってくれる(隣にいるママを見てニッコリ)。

佳寿美さん:ときどき外食しちゃうけどね(笑)。

「動画は娘の気持ちにあわせて一緒に続けていきたい」

6歳のお正月。笑顔がとってもキュート!

── YouTubeでこれから何かやりたいことはありますか?

理央奈ちゃん:(YouTube登録者数)200万人!

佳寿美さん:(笑)。娘が「やりたい」って言ってくれる間はできる範囲で続けたいなって思っています。もしかしたら思春期になったら嫌がるかもしれないですけど。

といっても、最近、あまり更新できていなくて。YouTuberさんたちがすごくこまめに更新されているのを知ったときはびっくりしたんですけど、私たちは、細く長く、娘が「やりたい」と思う限りは一緒に動画をつくっていきたいなって思っています。

PROFILE ちいりおママ・佳寿美さん

1988年、愛媛県生まれ。「ちいりおママ」として、娘の「ちいりお」こと理央奈ちゃん(7歳)の日常をYouTubeやInstagramで発信中。フォロワーは合わせて200万人を超える。大学卒業後、地元の信用金庫へ入行。第一子出産後は家族が経営する会社で勤務している。お笑い好きの明るい夫、9歳の長男、理央奈ちゃんの4人家族。理央奈ちゃんとの共著に『今日もさわやかに麗しくいきましょう』。

取材・文/高梨真紀 写真提供/ちいりおママ