恐竜を滅ぼした大量絶滅から「わずか68万年」…!大躍進のスタートを飾った哺乳類の姿が衝撃的すぎる…なんと「牧羊犬並み」の大リスも登場

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新生代は、今から約6600万年前に始まって、現在まで続く、顕生代の区分です。古生代や中生代と比べると、圧倒的に短い期間ですが、地層に残るさまざまな「情報」は、新しい時代ほど詳しく、多く、残っています。つまり、「密度の濃い情報」という視点でいえば、新生代はとても「豊富な時代」です。

マンモスやサーベルタイガーなど、多くの哺乳類が登場した時代ですが、もちろん、この時代に登場した動物群のすべてが、子孫を残せたわけではありません。ある期間だけ栄え、そしてグループ丸ごと姿を消したものもいます。

そこで、好評のシリーズ『生命の大進化40億年史』の「新生代編」より、この時代の特徴的な生物種をご紹介していきましょう。今回は、いよいよ大躍進を遂げる哺乳類について取り上げます。

*本記事は、ブルーバックス『カラー図説 生命の大進化40億年史 新生代編 哺乳類の時代ーー多様化、氷河の時代、そして人類の誕生』より、内容を再構成・再編集してお届けします。

もっとも多様性をもつ哺乳類「齧歯類」のはじまり

現生哺乳類においてもっとも多様性をもつのは、リスやネズミの仲間である「齧歯類(げっしるい)」である。

初期の齧歯類の一つとして、「パラミス(Paramys)」を挙げておこう。暁新世から始新世にかけて隆盛を誇った齧歯類であり、その化石はアメリカをはじめ、カナダ、フランス、イギリス、ベルギーなど多地域にわたっている。

パラミスは、初期の齧歯類でありながらも、「齧歯類!」とわかる風貌の持ち主だ。尾が長く、「これはリスです」と紹介されれば、「ああ、こんなリスもいるのかもしれない」と思うだろう。

しかし実はなかなかの大型で、頭胴長は大きなものでは60センチメートルに達した。その点を考えると、「リスです」と紹介されても、その大きさには違和感を感じるかもしれない。

参考までに、現在の日本に生息するニホンリス(Sciurus lis)の頭胴長は20センチメートルほどである。

小型の牧羊犬に、「シェルティ」の愛称で知られる「シェットランド・シープドッグ」がいるが、その頭胴長が約75センチメートルである。つまり、パラミスは齧歯類でありながらも、現代の(小型とはいえ)牧羊犬にせまるようなサイズの持ち主だった。

もっとも、「齧歯類とわかる風貌」とはいっても、専門家から見ればいろいろと原始的であるという。

現生種では見られない多彩な哺乳類

暁新世の哺乳類のすべてが、現生種へとつながるグループというわけではない。暁新世世界においては、多くの哺乳類が存在感を見せていた。

例えば「エオコノドン(Eoconodon)」だ。どことなくタヌキを彷彿(ほうふつ)とさせるような、でも、明らかにタヌキではないこの動物は、アメリカとカナダで化石が発見されている。

エオコノドンの名前(属名)を与えられた種は複数報告されており、少なくともその中の一部は、白亜紀末の大量絶滅事件からわずか68万年後には出現し、そして、体重は最大で77キログラムに達したともみられている。

77キロである! シェルティ云うん々ぬんの齧歯類と比べてかなりの大型といえる。なにしろ、現代日本の成人男性の平均体重を超える大きさだ。ちなみに、こうしたデータを公開しているデンバー自然科学博物館のサイトによると、エオコノドンは嗅覚が優れていた可能性があるらしい。

中生代の哺乳類では、「メートル級」は少数派だった。しかし、暁新世より後の時代、次々とメートル級の大型哺乳類が出現する。その兆しともいえる存在の一つが、白亜紀末の大量絶滅事件からわずか68万年後にいたことになる。

長鼻類、登場

長鼻類(ちょうびるい)は、その字面が示唆するように、ゾウとゾウの仲間たちで構成されるグループである。

このグループにおける最古級の仲間たちが、暁新世に登場した。その一つが、「フォスファテリウム(Phosphatherium)」である。化石はモロッコから発見され、頭胴長は60センチメートルほどと推測されている。

もっとも、「長鼻類」といってもおそらくその鼻はごく普通の長さで、どちらかといえば、カバを細く小さくしたような姿をしていたとみられる。もっとも、部分化石しか知られていないため、謎の多い存在でもある。

いずれにしろ、長鼻類が現生種とは似つかない姿とサイズでスタートしたことは間違いなさそうだ。

フォスファテリウムが謎の多い存在であることに対し、全身復元骨格が組み立てられるほどにはわかっているモエリテリウムだ。

その姿は、一言で言えば、「胴長短足」。全長は2メートル近くあるにもかかわらず、肩の高さは60センチメートルほどしかない。現生ゾウ類のように長い牙はないけれども、やや長い切歯を備えていた(ゾウ類の「牙」は犬歯ではなく切歯である)。この後、長鼻類は大型哺乳類となっていくのだが、かれらについては、また機会を改めてご説明したい。

さて、暁新世に出現したものの、暁新世には目立った多様化をみせず、始新世になって、頭角を現し始めた。グループがある。「食肉類」をはじめとした、肉食性の哺乳類だ。イヌやネコの始祖があらわれたのもこの始新世だ。続いては、そうした肉食性哺乳類の始まりを見てみよう。

カラー図説 生命の大進化40億年史 シリーズ

全3巻で40億年の生命史が全部読める、好評シリーズの新生代編。哺乳類の多様化と進化を中心に、さまざまな種を取り上げながら、豊富な化石写真と復元画とともに解説していきます。

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