志村三丁目で見つけた“環八最北端の店”「立ち喰いそば・うどん石かわ」 沼津の鰹出汁がきいた「なす天そば」が絶品だった〉から続く

「環八通り沿いに立ち食いそば屋は何軒ある?」調査は2日目に突入した(1日目編を読む)。前回は赤羽岩淵から出発して、東武東上線の上板橋付近までを調査。今回は上板橋付近をスタート地点に、荻窪まで歩いて調査することにした。

【画像】多種の天ぷらが揃う「そば処ながみ」のメニューをみる

 環八と聞けば、主要幹線道路を短絡する便利で重要な幹線道路で、沿線には大きな工場やショッピングモールなどがあるのだろうと短絡的に想像していた。それなら立ち食いそば屋もあっていいはずだというわけである。

 調査方法は以下の通りである。

〈環八の歩き方・実施方法

・赤羽岩淵から出発して、そのまま環八の内側(羽田方面)の道路の歩道を歩く。
・高架やトンネル部分は側道を歩く。
・脇道に面した部分にある店はカウントしない。
・何日かに分けて終点の羽田付近まで徒歩で移動する。〉


2日目は上板橋付近から荻窪までを歩く

1日目を一緒に歩いてくれた友人は逃亡してしまった

 9月6日、午前10時過ぎ、晴れ。今日も完璧な夏の空だ。東武東上線上板橋駅に降り立った。1日目より気温も湿度も高い。熱中症が心配だ。今日は同行者なしで一人で歩く。過酷な調査ゆえ1日目に一緒に歩いてくれた友人B氏は逃亡してしまった。

東武東上線上板橋駅近くを横断する歩道陸橋からスタート

 この場所はまだ北町若木トンネル内に環八通りの本線がある。東武東上線を渡るとトンネル上の緑地帯に出る。すると高架が見えてきて、川越街道と交差する交差点が現れる。ここを通過するとしばらく側道を歩く。反対側には自衛隊練馬駐屯地が広がる。

 このあたりは、お好み焼き屋やラーメン屋が点在する程度でしばらくは閑散としている。遠くにスーパーの「ライフ平和台店」の看板がみえてくると、焼き鳥屋やグリルなどと一緒に「長寿庵」の看板がみえてきた。

 今日はあいにく開店前だったが、元気に営業しているようだ。赤羽岩淵の起点から約7キロで初めての街そば屋である。そして平和台の交差点までくると、こちらは大きな交差点で地中化工事の真っ只中。その交差点の反対側にそば屋の看板を発見した。「そば処ながみ」である。

「そば処ながみ」のつゆは出汁のうまさと返しのバランスが抜群だ

 平和台の一帯は今まで歩いてきた中でもっとも発展している地域のようにみえる。メトロ有楽町線・副都心線の駅がすぐそばにあることもあり、交差点で待つ人も多い。「そば処ながみ」にさっそく入店し「天玉そば」(490円)を注文。店主の方に店の歴史などを聞いてみた。

 店は昭和60(1985)年頃の創業である。先代から引き継いで今は二代目が切り盛りしている。創業当時は環八ではなく池袋谷原線の方に面していたのだが、道路拡張などによって、交差点の真正面に立地することになったとか。近くにはヤマダ電機やライフもあり人の流れも多いという。この日も常連客が次々と入って来る。

 提供するそばは仕入れの茹で麺だが、天ぷらはすべて自家製で、日によって多種がそろう。つゆも自家製で昔から作り方を変えていないという。つゆをひとくち飲んでみる。

 出汁のうまさと返しのバランスが抜群だ。天ぷらは揚げ置きだがカリッと揚げられており、つゆがしみると一層うまさを増していくタイプである。1時間ほど歩いた後の温かいそばはまた格別だ。

 環八通りに立ち食いそば屋がいくつあるか調査している、と店主に告げると「そんな面白いことしてるのかい! うちは立ち食いじゃないけど大衆そば屋だからカウントしていいよ」と大いにウケてくれた。しかも「ここから南側はないんじゃないのかなあ…」不穏な言葉もいただいた。

そば屋がない...炎天下をひたすら歩く

 「やはり熱中症対策には、アツいそばつゆが一番だ」と呟きながら、つゆを飲み干し店を後にした。いい休憩時間だった。平和台からは淡々と歩いていく。すぐに「ヤマダ電機平和台駅前店」、さらにステーキの「ビッグボーイ練馬平和台店」、そして「丸亀製麺環八平和台店」が現れた。

 さらに「はま寿司」がみえてきたところで、本線は「練馬春日町トンネル」に入り、大江戸線練馬春日町駅を通過する。このあたりは側道のためか飲食店はほとんどない。そして目白通りに向かってまた高架構造になる。とにかく、トンネルと高架の連続で外食施設はほとんどない。ただ炎天下をひたすら歩くのみ。

 そしてしばらく行くとすぐにまた「練馬トンネル」となり、西武池袋線を通過する。このあたりは牧歌的な雰囲気といえばいいだろうか。樹木が多く大変綺麗なエリアだ。しばらく行くと環八はやや左に進路を変え井荻方面へ進んでいき、「井荻トンネル」へと入って行く。

 千川通りを過ぎて新青梅街道の手前に「はま寿司杉並井草店」とインド料理の店を発見したが、それ以外に目立った外食店はない。そのまま側道を南下すると井荻駅に到着し、側道は一旦西武新宿線で遮断される。

 その代わりすごい立派な地下道があってそこを通って南側に移動する。ここまで起点の赤羽岩淵から13キロほど、今日出発した東武東上線上板橋付近から7.5キロ。12時を過ぎて猛暑がますます襲いかかる。

井荻駅前で街そばを発見!しかし...

 井荻駅前は側道とはいえ駅前なので商店が多い。「ファッションセンターしまむら」や「ピーコックストア」が入る大型ビルも登場した。

 そしてその先に街そば「寿々木屋」が現れた。ちょうど昼時で満席。残念ながら先を急いだ。

「鰻の成瀬」をみながらさらに南下。「オーケー下井草店」がみえた所で早稲田通りを横断する。荻窪までもうすぐだ。だんだんと高いビルが増えてくる。環八の渋滞が凄い。道路反対側に町中華「ことぶき食堂」も健在であったが、そば屋を発見することはできなかった。

 青梅街道を横断して環八はまたアンダーパスに入る。そこが中央線荻窪駅付近である。起点の赤羽岩淵から23キロ、今日のスタート地点からは10キロ。荻窪到着は午後2時を過ぎていた。

“立ち食いそば屋”はまたもや1軒のみ

 上板橋〜荻窪までのまとめだ。この区間はほとんどが高架かトンネルで側道を歩くコースだった。車がビュンビュン走っているところはあまり目撃できず、自分の思い描いていた環八とは少し様子が違っていた。

 平和台一帯は非常に活気があり、車も人も多かった。平和台から荻窪までは高台の樹木が多い側道が多く、幹線道路や鉄道と交差する割には静かなエリアだった。

 立ち食いそば屋は平和台に1軒。街そば屋は2軒だった。ついでにラーメン屋は2軒。丸亀製麺は1軒だった。赤羽岩淵から荻窪まで歩いて、立ち食いそば屋はたった2軒、街そば屋は2軒という驚愕の結果だった。

 さて、荻窪以南の羽田までの環八はどんな賑わいをみせるのだろうか。立ち食いそば屋がたくさん現れるだろうか楽しみだ。

 荻窪では秋祭りの準備が進められていた。猛暑の中4時間位歩くともうヘトヘトだ。直射日光で日焼けもするしダメージがでかい。またしてもひとりハンセー会(飲み会)が不可欠になってきた。

 ところで、2017年に始まった文春オンラインの連載が200回となりました。ひとえに読者の皆様があってこそだと実感しております。拙い記事にお付き合いいただきありがとうございます。今後も大衆そばの世界を細々とお知らせしていこうと思います。

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そば処ながみ

住所:東京都練馬区北町6-32-37
営業時間:火〜金 7:30〜15:00
定休日:月土日祝

(坂崎 仁紀)