「売掛禁止」で大変貌を遂げた歌舞伎町ホスト…じつは女性利用客に思いもよらない被害が出ていた

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ツケ払い=売掛が終わった歌舞伎町は今

歌舞伎町で売掛が禁止になって、約半年が経過した。「売掛」がなくなった歌舞伎町はいま、どのように変化したのか。売掛があった時代に遊んでいたホス狂いの女性はいまどのように生きているのか。取材や聞き込みをもとに、その実状に迫った。

売掛とは、いわば「ツケ払い」のようなシステムのことを指す。

ホストクラブではこれまで、女性客が来店する際に売掛をし、その客にある程度収入が得られたタイミングや月末の決められた期日までにまとめて料金を支払ってもらう、という遊び方を採用していた。

一見すると便利なシステムであるが、これを逆手にとったホストが無理やり高額な売掛を迫ったり、実際に強引に売掛をして女性の支払い能力を遥かに超える金額となり、首が回らなくなったところで、女性を売春行為や風俗店に斡旋するという問題が起きていた。

それによって、昨今問題になっている”パパ活女子”による、詐欺行為が発端となり明るみに出たことで、大きく問題として取り上げられた。

記憶に新しい事件としては、23年8月、りりちゃんこと渡辺真衣容疑者(当時25)が男性の恋愛感情を利用して現金をだまし取る手口を記載したマニュアルを販売したなどとして、詐欺ほう助の疑いで逮捕されたのが印象的である。

最終営業日の「戦い」がなくなって悲しい

「売掛がなくなって、締め日の読み合いがなくなったのが残念」

そう肩を落とし語るのは、有菜さん(30歳・仮名)。以前は芸能活動やキャバクラなどの水商売をしていたという彼女は、華やかな顔立ちと女性らしい振る舞いが、夜の世界を生き向いてきた強かさを感じさせる。一見、高嶺の花のような容姿だが、笑うとクシャっとなる表情の可愛らしさと愛嬌で男性を魅了してきたのであろう。

23歳のころから約7年間、歌舞伎町で遊んできたという有菜さんは、売掛がなくなった歌舞伎町に残念そうな表情を浮かべる。

「締め日の後、入金できるかできないかで、ナンバーが変動するのが楽しかった」

売掛は通常日にも行われるが、メインで行われるのは、「締め日」という各ホストクラブの月末の最後の営業日だ。ホストクラブでは月の売り上げが翌月のランキング(通称、ナンバー)に反映される。

そのため、締め日での売り上げによってナンバーが変動するため、ホストやホス狂いにとって月の中で1番気合いの入る日となる。

締め日の売掛の入金日は店舗ごとに翌月の2〜10日まで設定されており、その入金日までに入金出来るかどうかが大切になる。

そのため、締め日でどれだけの予算で戦うか、どれだけの売掛で予算を膨らませることが出来るのか、ナンバーを争い合うホスト間での読み合いも、ホストクラブの1つの魅力であった。

お金をたくさん使うのが楽しい

ホストクラブはホストと客にとって、戦場であり、ホストと姫は王子と姫という関係であるだけでなく、ともに戦場を駆け抜ける”戦友”のような存在である。

「売掛は悪のシステムだ」という世間の声を有菜さんは即座に否定する。

「売掛がないと(仕事を)頑張れないって子もいたけど、私はでかい売掛ってより、飲みたいときの今日つけといて〜みたいな便利な感覚で使ってた。今日これだけしかお金持ってないけど、月の収入がこれくらいだから、その中なら大丈夫だよ。と伝えて月の予算内で遊ぶみたいな」

「(担当のことが)好きだからお金をつかう。売掛があるから仕事を頑張るわけではない」

有菜さんのように売掛を適当な範囲で使っていた女性からすると、売掛がなくなったことでむしろ遊びづらくなってしまったと語る。

さらに、有菜さんはホストクラブを楽しいと感じる理由について意見を述べた。

「ホストクラブが楽しいのは、大金を使ったことに対するアドレナリンが出るからです。ああ〜大金使っちゃったよ、この金があれば、あれもこれも買えたのに…という後悔やショックを認めたくない自分がいて、それを脳が自己防衛するために、快楽に変えてるんじゃないかなと思う」

ホストクラブは、アドレナリンが出て刺激があるから楽しい。

たしかに先述の締め日に対する売掛は、まさに快楽を感じるためにあると言えば、その通りである。

さらにホストクラブでは、様々な刺激を感じる仕掛けがなされている。

シャンパンを入れたとき、爆音のBGMとともにキャストに囲まれながらパフォーマンスを受けるシャンパンコールなどは、それの代表であるといえる。

またシャンパンコールをされている間は、ホストが周りの卓にいる女性を差し置いて自分のところへ来てくれているという優越感も感じられる。

ほかにも、自分の担当ホストをNo.1にしたときの快感や、その日の売り上げが1番高かったホストがその日の最後に歌うことが出来るラストソングなど、ホストクラブには、女性やホストが熱く燃え上がるようなイベントが多い。

それに全力で挑むことによってアドレナリンが出るのだとすれば、ホストクラブにはまる女性が多いのも頷ける。

それゆえ、売掛がなくなったことで1日に大きい額を使いづらくなってしまい、ホストクラブには刺激が少なくなってしまい、楽しさが半減してしまったと語る。

ホストクラブに行かなくなった女性はどこへ

「ホストクラブにいかなくなってからは、バーに通ってます(笑) バーも売掛禁止のところが増えたみたいで、(売掛は)出来ないんだけど、ホストクラブより安いし、たくさん通えるからいいかなって」

有菜さんいわく、ホストクラブに行かなくなった女性は、バーやメンズコンカフェに流れるパターンが多いという。

「イケメンが好き。推し活がしたい。イケメンにちやほやされたい。所詮遊びだってわかっていて、自分の中で夜のお店はエンターテインメント。だからやめられない」

つまり売掛がなくなったことによって女性が夜の街からいなくなったのではなく、自分の遊べる範囲で夜の街に残り続ける女性が増えたということである。

有菜さんのように、エンタメとして楽しめる女性ばかりであればいいが、中には担当にのめりこんで自分の限界以上にお金を使ってしまう女性も多く存在するだろう。

むしろ、今回の売掛規制は恐らくそのような女性のために発案されている。まだ夜の街に残り続けているそのような女性の問題がより深くならないことを祈るばかりだ。

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