「来年の桜を見るのは無理でしょう」医師から診断されたのは「ステージ4の末期がん」…経済アナリスト森永卓郎(67)が「余命4ヶ月の人生」を受け入れるまで
病院の医師から診断されたのは「ステージ4のがん」と「余命4ヶ月宣告」…。今も病魔と戦う森永卓郎さんの「がんとの向き合い方」を、岸博幸氏との対談本『遺言 絶望の日本を生き抜くために』(宝島社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
【顔、変わりすぎ…】ステージ4のがんで余命わずか、今も病魔と戦う森永卓郎さん
森永卓郎さん ©文藝春秋
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「余命10年」の人生プラン
森永 最初に、我々の共通項であるがんの話をしたいと思います。岸さんはいま、主治医からどのような診断を受けていますか?
岸 多発性骨髄腫です。これは分かりやすく言うと、血液のがんですね。
森永 病気が分かったのはいつだったのでしょうか?
岸 去年(2023年)の1月です。一昨年の夏頃から「どうも最近、疲れやすくなっているな」という自覚症状がありました。周囲からも「顔色が悪いよ」と言われていたのですが、ちょうどその年の秋に還暦(満60歳)を迎えたこともあり、これも年齢のせいかな、くらいに思っていたんです。
森永 最初は軽視していたんですね。
岸 そうなんです。ただ自分でも気になって、5年ぶりに人間ドックを受診したところ、クリニックの院長が「すぐに血液内科の専門医に診てもらったほうがいい」と言うわけですね。それで、この分野では著名なドクターの診察を受け、その日のうちに多発性骨髄腫であることが判明しました。
森永 そのとき、余命についての説明はありましたか?
岸 非常に婉曲な言い方ではありましたが、「治療を受けることによって10年から15年は大丈夫でしょう」と言われましたね。この多発性骨髄腫という病気は完治が難しいとされており、共存しながら生存期間をのばしていく。そういう考え方になります。
森永 そもそも、がんは基本的に完治が難しいですからね。そうすると、岸さんは「残り時間10年くらい」という人生プランで生きる。そういうイメージですか。
岸 まさにそうですね。
森永 いまはどんな治療を受けておられますか?
岸 昨年、自家造血幹細胞の移植を行いまして、現在は定期的な検査・注射と毎日の薬で治療が続いています。
森永 造血幹細胞移植は健康保険適用になるんですか?
岸 適用になりますが、全部はカバーされていなかったように思います。
森永 保険適用で高額療養費制度を活用した後で、ざっくり言うと毎月の医療費はどれくらいになりますか?
岸 いま現在ですと、すべて適用した後で毎月20万円弱の支払いがあります。
森永 なるほど……そうすると、全然払えないという金額でもないですね。
岸 自分の生活ではなんとかなっていますが、収入が低い方の場合、大変な出費だろうとは思いますよね。
「来年の桜を見るのは無理でしょう」
森永 私の話をしますと、がんとしてはものすごくレアなケースなんです。去年の11月に体重が落ちてきたことに主治医が気づき、そのアドバイスで人間ドックを受けたところ、CTの画像で肝動脈(肝臓に血液を送る血管)のまわりにモヤモヤとした影が写ったんですね。それを見て、検診をしてくれた病院の医師が「これはがんからの侵襲で、すでに転移しているのだから、ステージ4だ」と言うわけです。同時に、「このままだと来年の桜は見られないでしょう」とも言われました。
岸 いきなり、そんなことを言われたんですか。
森永 その後、どこにがんがあるのかを調べるPET検査を受けたところ、反応があったのは胃とすい臓だけだった。そこから徹底的に胃を調べましたが、どんなに検査しても何も出なかった。一方、すい臓を見てもどこにも病変がない。まったくきれいなままで腫瘍マーカーも正常値を示している。結局、胃がんでないことだけは100%確実だから、消去法ですい臓がんだろうという診断になりました。
岸 すい臓がんですか。
森永 すい臓がん、ステージ4、余命4カ月。だから、今年の桜は見られないだろうという結論は変わりませんでした。
岸 しかし、なんとか見ることができましたね。同じがんを患う者として、森永さんの生命力と執念には感服します。
森永 私は疑り深い性格で、最初の診断に納得しなかったものですから、がんの画像診断の名医中の名医と呼ばれている順天堂大学の先生に診てもらいました。結果はやはり同じで、すい臓がん、ステージ4でした。それでも私はまだ信用できなかった。
岸 すごいな、それは。
森永 その後、国立がん研究センターで、これも画像診断の名医と言われる医師にデータを診てもらったところ、そこでも同じ結論が出た。さすがに専門家3人が同じ診断を下したことで、医学知識のない私は抵抗することができなくなりました。
岸 やっと受け入れる気持ちになったわけですね。
〈「このままでは確実に死ぬな」立てない、食べられない、水も飲めない…“余命4ヶ月の森永卓郎(67)”が直面した「がん治療トラブル」の正体〉へ続く
(森永 卓郎,岸 博幸/Webオリジナル(外部転載))