中山エミリ

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森高千里、宮沢りえに始まり、数多くの人気女優を輩出した登竜門といえば、大塚製薬「ポカリスエット」のCMである。歴代を通じて透明感あふれる作品のイメージだが、4代目・中山エミリの場合は、テイストの違う撮影の連続だった。中山エミリに当時の話を聞いた。

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「ポカリスエットのCMというと、これぞ青春って感じでキラキラしたイメージですよね。でも私の時は、とにかくガチでチャレンジするという内容。思っていたのとは違っていました」

CMが放送された95〜96年当時、まだ高校2年生だった中山が出演したのは「チャレンジシリーズ」だった。中でも2作目にあたる「ダチョウ編」は、強く印象に残っている読者も多いことだろう。

自力でダチョウの背中にまたがって走り出す。それをクリアするまで、チャレンジし続ける撮影である。ダチョウレース、卵で作った工芸品や羽を利用した扇子など、ダチョウ産業で栄える南アフリカの町・オーツホーンで撮影された。

「ダチョウって乗るものだとは思っていないから、最初は冗談かと思っていました。それが現地入りしてから2日半、ひたすらダチョウに乗る練習です。ダチョウって、足は太くて恐竜みたいなんですが、性格は怖がりで仲間を見つけるとそこに走っていく習性がある。だから撮影中は、止まっていてもらうため顔に袋をかぶせていました。(乗馬用の)馬みたいに鞍がなくて、背中に直接乗るんですよ。『足は体に巻きつけて、羽の束を持つように』って指導されるんですが、全然できない。最初はダチョウが立ち上がった瞬間に振り落とされていましたからね」

たとえ動物といえども、何度も触れ合えば心を通わせることができるようになると思うが…。

「いやいや、それがダチョウって体の割に脳が小さくて、スプーン1杯くらい。私のことなんて覚えられないんです。散々一緒に練習したのに、次の日会うと、まるで初めて会ったかのように接してくる(笑)。何度も何度も落とされましたね。落ち方が悪いと一瞬息が止まるくらい痛くて。アフリカの大地って、コンクリートより硬いんですよ(笑)。その転んでいる姿を遠くでモニターチェックしているスタッフさんが『いい画が撮れたぞー』って喜んでいるのがわかるんです。もう、ひどいでしょう(笑)」

苦労の甲斐あって、実際のCMでは見事な「ダチョウ乗り」の成功シーンも流されている。「乗れた! 乗れたよ〜!」とはしゃぐ姿を見れば、今ならその本気度も理解できよう。

「成功したのはほんの何秒間しかないんですが、体感としては1〜2キロも進んでいる感じでした。あれ以来、剝製には乗りましたが、生きたダチョウには二度と乗っていません」

CMでは、アフリカの大自然をバックにゾウとも共演している。

「現地のサーカスの方が撮影のために連れてきてくれたんです。アフリカって、どこにでもゾウがいるわけじゃなくて、地元でも初めてゾウを見る方たちが多くて喜んでいましたね。そのゾウの横でポカリを飲むシーンを撮影していたら、向こうは『何それ?』って感じ。口を大きく開けてねだってきたので、ひと口あげたら、すごくおいしそうでした。ポカリはゾウが飲んでもおいしいみたいです(笑)」

なかばドキュメンタリーという手法で、中山の真剣なチャレンジを追い続ける同シリーズ。他の2作品も好評だった。

「『自転車編』はニュージーランドで撮影しました。ただでさえ普段、自転車なんて家の近所くらいでしか乗ったことがないのに、乗り慣れていないロードバイクなんだから大変でしたよ(笑)。吊り橋を渡ったり、険しい山道で自転車を押したり、ゴール地点の海までひたすら懸命にこぎ続けました。つらい表情はお芝居ではなく、本当にただただ苦しかっただけなんです」