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●いつでも防災の意識と備えを!「まず用意しておきたい防災グッズ」を防災士に聞きました。

 台風やゲリラ豪雨なども含め、いつ、何が自分の身に起こるかわからない今、防災意識は常に持っておかなくてはなりません。

 いざというときにこれだけは用意しておきたいものとは?

 防災グッズを扱い、「防災ファーム」というオンラインショップや店舗を運営する『三和商事』の大西紀子さんに話を伺いました。

自宅で過ごす「在宅避難」に備えよう!【防災食編】

お話を伺った大西紀子さん

 災害時に避難所で過ごすことを考えてしまいがちですが、自宅に倒壊や焼損、浸水などの危険性がなく、自宅で過ごすことができる場合、「在宅避難」が推奨されています。

 在宅避難のメリットは、
1.いつもと同じ環境で過ごせること
2.自分や家族との生活なのでプライバシーがほぼ守られていること
3.ライフラインが復旧したときにすぐに対応できること

 実際、マンションなど集合住宅に住んでいる場合は特に、在宅避難になる可能性のほうが高いので、まずは在宅避難時に必要なものを準備しておきましょう。

 では、自宅に避難するというのはどういうことでしょうか?

 それは「建物に問題がなく、自宅で身の安全が確保できる場合は避難所に向かわず、しばらく自宅の中だけで過ごす」こと。ただ、電気、水道、ガスなどのライフラインが被害を受けて使えない状態であることが考えられます。ライフラインの復旧には3日~1週間かかると言われているので、食料や水は3日分、できれば7日分、備蓄するようにしましょう。

最低3日分、できれば1週間分の水と食料を

長期間保存ができる食品も種類が増えておいしくなっている

 まず思い浮かぶのは食べ物と水です。以前は、防災食品の味は二の次という印象でしたが、5~10年といった長期保存できるものでも種類が増え、味もかなりおいしくなっています。

 こうしたものを防災バッグなどに詰めておくことは大切ですが、ややコストがかかるので、まずは近年注目されているのは「ローリングストック」から始めましょう。

 レトルト食品、乾麺、フリーズドライ、缶詰など、身の回りの食材の多くが数か月~1年程度の賞味期限があり、買い置きしておけばそれがそのまま備蓄に繋がります。ローリングストックのいいところは、普段食べている好みの食品で味に慣れている点。食べ慣れない味付けや形状だと非常時のストレスの中、気持ちが休まらないこともあるかもしれません。いつもの味や好きなものなら、非常時でも気持ちを落ち着かせてくれたり、前向きになれたりします。

長期保存の食品は栄養価の高いものを選ぶのもポイント

 ライフラインが止まると通常の調理は難しくなるので、そのまま食べられるものや、カセットコンロなどで沸かしたお湯を使ったり、温めたりして食べられるものを選んでストックする習慣をつけましょう。1つ食べたら1つ買い足すというように、常にある程度のストックを自宅に置く習慣をつけてください。

水は通常販売されているものでも製造日から1年ぐらい保存できる

 最近では普段からミネラルウォーターなどをペットボトルで購入している人も多いと思います。断水時はそのまま飲む以外に顔を拭いたり、調理に使ったりする分も必要なので、1日に必要な水は1人あたり3L。これを人数分、最低3日、できれば1週間分準備しておくと安心です。

※ローリングストックの関連記事もチェック!
【保存版】普段使うもので災害に備える方法とは?プロが教える“常備したい防災グッズ&食品”

【防災グッズ編】1.どんな状況でも絶対に我慢できない「トイレ」の準備

いざという時でも我慢できないのがトイレ

 食べ物や水についてはある程度、想像しやすく、ローリングストックならすぐに備蓄できそうですよね。こちらでは、それ以外に絶対に必要なものをご紹介!

 まずは「トイレ」。在宅避難なら自宅のトイレが使えると思いがちですが、大きな地震のあとは水洗トイレが使用不可に。怖いのは一見使えるように見えて、例えば汚水管に亀裂が入っていたり、破損してしまっているケースです。そこで浴槽に溜めておいた水を流してしまうと、集合住宅などは下の階に汚水が漏れ出てしまったり、建物の中で漏水して復旧に時間がかかってしまうこともあります。

専用の袋と吸水シートがセットになっているものがおすすめ

 そこで“非常用トイレ”を成人なら1日6~7回×家族の人数×最低3日分、できれば一週間分を用意しましょう。非常用トイレは専用の袋と水分を固めるシートまたは粉末がセットになっています。おすすめはシートタイプ。

シートは水分を吸うとすぐにゲル状に固まり、シートの下に水分が残らない

 非常用トイレ袋「くるくるトイレ」はひも付きの袋と吸水シートがセットになったもので、袋の中にシートをセットして使います。シートからはみ出すぐらいの水分でもあっという間に吸収し、瞬時にゲル状に固めてくれます。

 水分を吸収した後のシートをめくると下の袋はほぼ濡れていません。これだけの吸収力があるのでこぼれる心配がないのもいい点です。

袋のひもを引いて匂いがもれないようにしっかり縛る

 使い終わったら袋のひもを引いて、くるくるっと縛って燃えるゴミに捨てればOK。自宅で使用するときは、袋をトイレの便座にセットして使えば、後始末は必要ですが、普段と同じ環境で使えるのでストレスが軽減できます。

1回分の非常用トイレは常に持ち歩こう

 また、1回分のトイレは、自宅に備えておくのとは別に、常にバッグの中に入れておくことをおすすめします。大きな地震はもとより、台風やゲリラ豪雨などでも、公衆トイレやコンビニなどのトイレが使えなくなる可能性が高いので、万一の場合に備えて毎日持ち歩くバッグやポーチの中に入れておくようにしましょう。

【グッズ2】頭を守るための防災用ヘルメットがあると安心

飛来落下物用・墜落時用(兼用型)のヘルメット。ワンサイズなので合うものをチョイス

 地震では家の中のものが倒れたり、落ちてきたりする心配があります。建物に問題がないとしても、余震などに備えて頭を守る「防災用ヘルメット」を用意しておくと安心。避難訓練のようにズット机の下に隠れているわけにはいかないので、安心できる状況になるまでヘルメットをかぶって生活するのが賢明です。

 バイクや自転車用ヘルメットで代用しようと考える人もいるかもしれませんが、安全性を考えたら防災用がおすすめ。最近は折りたたみ式や、蛇腹のようになっていて、必要なとき以外はコンパクトに収納できるものもありますよ。

コンパクトにたためるタイプは収納も便利 [食楽web]

 そのほか、地震による落下物で足を怪我することもあるので、厚底スリッパなども用意しましょう。ガラスが割れることもあるので、底がしっかりしていることが大切。スリッパでなくても履かなくなったスニーカーなどでもOK。日中は明るいのでガラスなどを避けることができますが、夜は停電することも考えて、枕元に置いておくのがおすすめです。

【グッズ3】自分の居場所を知らせる「フエ」は肌身離さず持っていたい

耳に一番届きやすい音が出る防災防犯ホイッスル

 食料や水、トイレ、ヘルメットなど自宅でストックしておくもののほかに、日々の生活で常に身につけておきたいのが「フエ」です。物が倒れて閉じ込められたり、下敷きになってしまったりしたときに、自分の居場所を知らせるのに役立つ重要な防災グッズです。

 物に圧迫されて思うように声が出ない、声がなかなか届かないというケースに、軽く吹くだけではっきりと大きな音を出すフエがあれば安心です。防災用のフエは耳に一番届きやすい音が出るのもポイント。バッグやスマホなどに付けて、常に身につけておきたいですね。

トイレや生ごみなどの処理には防臭袋も便利

 他にも、あると便利なアイテムは色々あります。「懐中電灯」は手回しで充電できるタイプもありますが、手回しする負担もあるので電池と併用できるものがおすすめ。またスマートフォンが使えれば、連絡を取るだけでなく、ライト、ラジオ、時計などいろいろな機能が使えます。できれば充電に使える「ポータブル電源」なども用意しておくと安心です。

ヘルメットに付けるランプは両手があくので便利

 災害は誰にでもいつでも起こる可能性があるもの。在宅避難のための準備は最低限整えておきましょう。状況によっては、自宅から逃げなくてはならない場合や、避難所に行かなければならない場合もあります。常に防災に対する意識を持ち、少しずつ防災グッズを揃えていきましょう。

●DATA
防災ファーム

https://bousaifarm.com/
※店舗は現在、改装中ですが、事前に問い合わせて予約をすれば、直接商品を見ることができます。

(取材・文◎Ayako)