飛田和緒が「いますぐ1品増やしたい」時に勧める「絶対失敗しない副菜」の極意

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料理は「加減」が難しい

夫は、「料理ができない」と思っている。

皮むき、せん切り、みじん切りを頼むと、丁寧できれい。しかも早い。

でも「カレーのじゃがいもみたいに適当に切って」と言うと、手が止まる。

冷凍コロッケやフライドポテトを「揚げといて」と言うと、手際よくやってくれる。が、ステーキ肉やサバの塩焼きを「適当にひっくり返して」と言うと、「え、どれくらい?」「どうなれば返していいの?」とちょっと慌てる。

私は、「夫は料理ができない」のではなく、「加減」がわからないのだと思っている。

加減は、伝えるのも、教えるのも、習得するのも難しい。

手と舌、どちらの経験も必要とする。

リモートワークで一日3食、ふたりの子どもの弁当作りを含めると、20年以上はほぼ毎日料理して、「加減」をつかんだつもりでいたが、先日、経験もスキルも数段上の先輩の料理をご馳走になり、打ちのめされた。

なんて難しいのだ、「加減」は。

料理本に載っているレシピの中には、簡単そうに見せてはいるが、本当はそうではないものがけっこうある。「これは加減が難しそうだぞ」と思われるものが、けっこうあるのだ。

だが、先月本屋に並んだ『副菜』(飛田和緒著 / 主婦と生活社)を開き、私が待ち望んだ本であることが見て取れた。

ここに載っている料理は、「加減」を必要としない。本の通りに作れば、本の通りの味に、つまり、料理家 飛田和緒の味になるのだ。

加減はいらないが“コツ”はある

たとえば、「はんぺんのチーズ焼き」。はんぺんにチーズをのせてオーブントースターで焼いてこしょうをふる。教えられるまでもないと思うかもしれないが、写真はすこぶるおいしそう。こんなに簡単でも、おいしそうに仕上げるには、3つのコツがある。

「十字に切れ目をいれること」

「焼き色がつくまで焼くこと」

「はんぺんがふっくらしている間に召し上がれ」

コツはあっても、加減は必要なし。誰が作っても、同じ見た目、同じ味になろう。

たとえば、「豆腐のしょうゆ煮」。小さい鍋に豆腐とひたひたのだし汁を入れて中火にかけ、煮立ったらみりんとしょうゆを同量入れて、弱火で煮る。豆腐が崩れるくらいやわらかく、しょうゆ色になるまで煮ると、しょうがやからしなどをのせて食べても、ご飯にのせて崩しながら食べても、お勧めとある。

写真に写る鍋の中の豆腐は、端が少し崩れ、色味に青ネギをのせることなどもせず、小鍋の中はただしょうゆ色。これがまたおいしそうなのだ。たぶんコツは、豆腐がちょうどおさまるくらいの鍋を選ぶことだろう。そうすればだし汁も調味料も最小限で済むし、見映えも整う(すき間だらけで、ほかの具が入っていないのは、見た目がさびしい)。

「加減」を恐れる夫に、ぜひとも贈りたい一冊である。

洗い物も包丁1つのオーブン焼き

はんぺんのチーズ焼き

材料(2〜3人分)

はんぺん 大1枚

溶けるスライスチーズ 1枚

粗びき黒こしょう 少々

作り方

1 耐熱皿にはんぺんを入れ、スライスチーズをのせ、十字に切り込みを入れる。

2 温めたオーブントースターでチーズに焼き色がつくまで5分ほど焼き、黒こしょうをふる。

メモ

チーズの種類によっては、焦げめがつかないものもありますので、様子を見ながら焼いてください。はんぺんがふっくらとふくらんでいる間にめし上がってください。

具は豆腐だけの潔さ

豆腐のしょうゆ煮

材料(2人分)

絹ごし豆腐 1丁 (300g)

だし汁 1〜11/2カップ

A しょうゆ、みりん 各大さじ2

作り方

1 豆腐は6等分に切り、小さめの鍋に入れ、ひたひたのだし汁を加えて中火にかける。

2 煮立ったらAを加えて弱火にし、ふたをずらしてのせ、豆腐がくずれるくらいやわらかくなってしょうゆ色になるまで、20分ほど煮る。

メモ

豆腐がくずれるほどよく煮込んで、豆腐にしょうゆの味を含ませます。ふたをぴったりとすると、豆腐がふくらんで盛り上がり、もろもろとくずれやすくなるので、沸騰したらふたをずらして煮てください。好みでしょうがやからしなどをのせて食べたり、ごはんにのせて、くずして食べるのもおすすめ。

◇「レシピ通りに作ったのに、おいしくない」。自分の腕を棚に上げ、料理本を酷評する光景はよくあるが、責任は料理家さんにはない。後編「『本通りにならないのは、だれのせい?』誰がやっても絶対失敗しない飛田和緒の『副菜』」では、レシピの「伝え方」の問題と共に、飛田さんの本からおすすめ2品を紹介する。

「本通りにならないのは、誰のせい?」誰がやっても絶対失敗しない飛田和緒の「副菜」