やっぱり日本のダンスシーン、世界のダンスシーンの創世期からたくさんの人が、いろんな思いを持って頑張ってきた。今の恵まれた時代になってきて、選手の皆さんも長くダンスを続けることができて、さまざまなダンスシーンを見て、この時代を生きてきて、今がある。

だからこそ、パリという大きな舞台で、誰もが知るオリンピックで、誰もが見るテレビで流れるところで、ブレイキンをみせて、観客やファンだけでなく、世界中のいろんな人を感動させてくれたら嬉しい。たくさんの思いを多分背負っていると思うので、僕は(代表の)4人が最高のパフォーマンスをすることを祈っています」

◆Shigekix(半井重幸)は日本選手団の旗手に

相手を傷つけないブレイキンの「バトル」は、歴史や意味を持ったフォーマットなのだ。勝つためには、地位も身分も関係なく、身体一つで周りをアッと驚かせ、相手を圧倒するパフォーマンスを見せればいい。相手に触れず、エネルギーを爆発させ、周囲を感動させることを目指すマインドは、平和の祭典にふさわしい。

ちなみに、選手たちのユニフォームも珍しいことにお揃いではない。個性を発揮するカルチャーが尊重され、デザイン約60種から各々が選んだという。人々が自由と平等を求めた「革命広場」である、コンコルド広場で開催されることも意義深い。

不良の遊戯と訝しげに見られていたブレイキンは、先人たちの思いを積み重ねながら急速に発展した。オリンピック選手たちは、人間性でも多くの人を魅了するロールモデルのような逸材だ。日本のエース、Shigekix(半井重幸)は、日本選手団の旗手にもなった。

先人たちの葛藤や願いが込められたハレの舞台に挑む代表選手は、どんな言葉を残してパリへと発ったのか。

<取材・文/松山ようこ>