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<ひとり言>というと、「自分の世界に入り込んでいるみたい」「なんだか地味で暗い感じ」など、あまり良い印象を持たない方もいるのではないでしょうか。しかし、脳内科医の加藤俊徳先生は「ひとり言には脳を覚醒させ、眠っていた能力を伸ばす力がある!」と断言しています。そこで今回は、加藤先生の著書『なぜうまくいく人は「ひとり言」が多いのか?』より、脳科学的な視点から<ひとり言のメカニズム>を一部ご紹介します。

【図】落ち込んでいるときに効く2種類のひとり言

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「難しい言葉」よりも、「親近感のある言葉」を使う

以前、こんな実験をしたことがあります。

被験者がさまざまな単語を聞いたとき、脳がどのように反応するかを調べたのです。

すると、面白い結果になりました。

みなさんは「ライオン」や「ネコ」という言葉を聞いたときと、「三角形」や「四角形」という言葉を聞いたときの、どちらの方が脳が活性化すると思いますか?

答えは、「ライオン」や「ネコ」という言葉の方が、脳が活性化したのです。

両者の違いは何でしょうか?

「ライオン」や「ネコ」はいうまでもなく動物であり、その鳴き声や姿かたち、動きなどが連想しやすいものです。

一方の「三角形」や「四角形」は、より概念的な言葉です。

鳴き声のような付随した情報もありません。

私としては、概念的な言葉や難しい言葉の方が、それを理解しようとして脳がより働くのではないかと考えていましたが、見事に外れてしまいました。

他にも、さまざまな言葉で実験を繰り返しましたが、結果は同じでした。

より脳を活性化しやすいひとり言

このことから、脳を活性化させるひとり言と、そうでないひとり言の違いも見いだせると思います。

つまり、日常的で親近感があり、連想が広がりやすいひとり言の方が、より脳を活性化しやすいということです。


『なぜうまくいく人は「ひとり言」が多いのか?』(著:加藤俊徳/クロスメディア・パブリッシング)

たとえば、「昨今の情報社会は間違っている!」と嘆くよりも、「スマホばかりいじっていては、人間がダメになるよね」と、より具体的に問題点を提起する言葉でつぶやく方が、脳はより活性化するわけです。

スマホの話であれば、以下のように思考がどんどん広がっていきます。

「だって、スマホばかり見ていたら、他人との直の会話が減ってしまうでしょう」

「スマホで調べるから、人から聞かなくてもいいとなるし……」

「自分の周りに、もっと関心を向けるべきでは?」

といった具合に、思考を深めていくことができるのです。

ひとり言は、できるだけ簡単で、身近な言葉で話すようにしましょう。

その方が、脳はより活性化するわけです。

自分を鼓舞するひとり言をつぶやく

ひとり言は、使い方次第です。

落ち込んでいるとき、気分が暗いときに、「もうダメだ」とか、「どうせ私は〜」などとネガティブなひとり言をつぶやいたら、当然さらに気分がダウンしてしまいます。

では、そうしたときに、どういうひとり言をつぶやいたらいいのでしょうか?

1つは、自分を鼓舞するひとり言をつぶやくことです。

「大丈夫だって!」、「気にしない気にしない!」、「いまに良くなるって!」と、自分に言いきかせてみるのです。

言葉には、発した方向に脳を働かせる力がありますから、不思議と呪文のようにその言葉が効いてきます。少なくとも、ネガティブな言葉のように、脳がダウンすることはありません。

落ち込んでいるときはその原因を探るひとり言をつぶやく

もう1つは、落ち込んでいる理由や原因を探るひとり言をつぶやくことです。

「なんで落ち込んでいるんだろう?」「どうしてこんなに気分が暗いのか?」というように、なぜ? なぜ? と理由を詰めていくのです。

すると不思議なことに、気分が冷静になります。

疑問形でひとり言をつないでいくうちに、論理的で分析的な左脳が優勢になってくるからです。

「こうすれば、きっと良くなるはずだ」という解決の糸口が見えてきたり、「もしかして、これから良くなるんじゃないか?」と希望が見えてきたりします。

「感情系」の脳番地からどんなにネガティブな気分が湧き起こったとしても、それに流されたり溺れたりせず、むしろヒントにして、真の自分を見極めるという態度が必要だと思います。

とくに発達障害やうつ病を抱えている人は、思うように動けない自分に対して否定的になりがちです。

そればかりか周囲の声も、「なんで仕事をしないのか?」「もっと頑張れよ」などと、激励というより非難めいた言葉が多くなりがちです。

こうした声に押しつぶされて自己肯定感が削られてしまう人は、意識して自分を鼓舞する言葉をつぶやいたり、冷静になれる言葉をつぶやきましょう。

マイナスの言葉を相殺するくらいのプラスの言葉で、自己マネジメントをしていく必要があります。

※本稿は、『なぜうまくいく人は「ひとり言」が多いのか?』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。