表参道で「営巣」したシジュウカラ、その後どうなりました? 「いきもの東急不動産」赤根さんに聞く“都会のいきもの”のあり方
 

「祝 営巣」


2024年4月末、東急プラザ表参道「オモカド」に、大きな文字が踊りました。かわいい鳥があしらわれたインパクト大の入り口を記憶している方も多いかもしれません。


ここで祝っている「営巣」とは、シジュウカラが巣づくりに成功したということ。4月4日、「オモカド」の屋上庭園「おもはらの森」に設置した巣箱のひとつに、シジュウカラが「入居」したのです。


実はこの営巣、13年間挑戦し続けて成功は3度目という難易度の高さ。渋谷をはじめ、都心の生物多様性を保全する「いきもの東急不動産」の一環で、長い年月をかけて取り組まれてきたプロジェクトです。

あれから数カ月が経過しましたが、シジュウカラたちはどうなったのでしょうか。そして、今後どんな展望を見せていくのでしょうか。気になったので、「いきもの東急不動産プロジェクト」を推進している東急不動産 赤根広樹さんに聞いてみることにしました。


2年連続の営巣成功、そしてさらなる快挙が


2月27日に巣箱を設置し、シジュウカラの営巣が確認できたのは4月4日。試行錯誤を繰り返して制作した9種類の巣箱―「シジュウカラの邸宅」のうち、スタンダードな「ワンルームタイプ」に営巣したそうです。

営巣中の様子

現在、巣箱の穴にはシジュウカラがくちばしでつついた跡が残っています

その後、2週間ほど親鳥の巣箱への出入りが確認できず、赤根さんはやきもきしたそうですが、プロジェクトに参加している東京都市大学の北村亘准教授に聞くと、これは産卵していた何よりの証拠とのこと。

「営巣が済んだら卵を産み、孵(かえ)るのを待つ状態なので、親鳥としては巣箱の中に卵があることを周囲に知られたくないそうなんです。意図的に巣箱から離れていたんですね」

と、赤根さん。実際、4月25日には卵が確認でき、ゴールデンウィーク明けには親鳥がヒナたちにエサを運ぶ姿も見られるようになったそうです。

4月に営巣した巣箱は、地面から比較的低い位置に

営巣したのは地面から低い位置にある巣箱だったため、この頃には近くに寄ればエサを求めるヒナたちの鳴き声も聞こえていたんだとか。そして5月23日、親鳥とヒナたちは巣立っていきました。

赤根さんたちが驚いたのはその後です。なんと6月5日、「楕円ワンルームタイプ」の別の巣箱に、今年2例目の営巣が確認されたのです。赤根さんによると「最初に営巣した親鳥に比べて少しふくよかに見えたので、恐らく別の個体だと思います」とのこと。

今度は地面から高い位置の巣箱に営巣したようです

親鳥のストレスにならないよう、巣箱の中は未確認だそうですが、4月のケースから推察すると、間もなくヒナが産まれ、7月下旬には巣立っていくと考えられます。

渋谷圏に“いきものたちの中継地点”をつくる


東急不動産では、2012年に「いきもの東急不動産」をスタート。でも、そもそもなぜシジュウカラに着目し、巣箱を作る活動をしているのでしょうか。赤根さんは次のように説明してくれました。

「広域渋谷圏※1には明治神宮や代々木公園などの大規模緑地があり、都心でも生態系が整っています。このエリアに建物を建てる際は、エコロジカル・ネットワーク――つまり、都市に点在する緑をつなぐために、建物を緑化し、いきものたちの中継地点を形成することを意識しています」

※1 広域渋谷圏とは、東急グループの渋谷まちづくり戦略において定めた、渋谷駅から半径 2.5km のエリアのことを指します。


おもはらの森と同じくらいの高さにある「ハラカド」の屋上にも緑が

「また、シジュウカラは樹木や植物にいる昆虫などを食べて生活する鳥です。そうした性質のあるシジュウカラが生息できるということは、緑があって昆虫もいて、生態系が整っている場所になっている証拠。そうした環境を形成するために、この施設が開業した12年前からシジュウカラの営巣に向けた取り組みを行っています」


巣箱を設置したら鳥が入ってくれるものと思いがちですが、そう簡単ではありません。2012年から2016年までは5年連続で営巣失敗。当初は巣穴の直径を28mmから30mmに設定していましたが、似たようなサイズのスズメが先に入ってしまったそう。

そこで、スズメよりも細身のシジュウカラだけが巣穴を通れるよう、27mmに変更しました。また、「おもはらの森」の植生も昆虫が生活しやすい環境に変えていきます。こうした細やかな改善が、徐々に成果を上げていったのです。

緑豊かな「おもはらの森」

初めてシジュウカラの営巣が確認できたのは2017年。2回目が2023年で、今年は2年連続3回目の営巣成功となりました。そして今年は4月、6月と年に2回の営巣。北村准教授も「非常に珍しい例」と驚かれたそうです。

営巣に成功した要因として、赤根さんは「巣箱の設置個数を増やしたこと」を挙げました。昨年は5個でしたが、今年は9個を設置。また、巣箱の制作は木製家具メーカーの天童木工が担当。一般的な巣箱よりも大きめで、居住性にこだわった点も影響したのではないかと分析しています。

惜しくも入居はならなかったが「メゾネットタイプ」の巣箱も

シジュウカラの他にも、多くの鳥類・昆虫類が生息


冒頭でご紹介した“祝 営巣”ジャックでは、入り口のほか「オモカド」の各所に、シジュウカラを迎え入れようと試行錯誤する様子をストーリー仕立てで掲示。コミカルな文でありながら、シジュウカラの営巣に本気で取り組んでいる様子が伝わってきました。

営巣ジャック時の、東急プラザ表参道「オモカド」館内

来館者からは好意的な反応が多く、問い合わせやSNSでの反響も大きかったそう。「おもはらの森」では、誰でもシジュウカラになれる巨大巣箱イベントも実施しましたが、巨大巣箱の設置完了とほぼ同時にファミリーが中に入ってくれるなど、人気スポットになっていたようです。

「私たちは、経営方針として”環境経営”を掲げており、その一環で『いきもの東急不動産』プロジェクトをはじめました。原宿や渋谷はたくさんの人が集まり、遊べるスポットが多い場所。この都心のビルに野鳥が来て、卵を産んで巣立っていく――ということは中々想像しづらい。この『おもはらの森』で実際に目にしていただいて、『都会にも多くのいきものがいるんだ』と知っていただくことで、少しでも環境について考えるきっかけにしてもらえたら良いなと思っています」

営巣ジャック中に設置されていた「巨大巣箱」

“自然環境”という大きなテーマに取り組むには、1企業のみならず多くの人の協力が不可欠。そのためにはまず“知ってもらうことが大事”だと、赤根さんは「いきもの東急不動産」の意義を語っています。

シジュウカラの他にも、「おもはらの森」にはケヤキやクスノキ、シラカシといった様々な樹木が植えられ、飛来する鳥が飲水や水浴びをするための「バードバス」も設置。定期調査での観測では、取り組みを始めてからの12年間で、飛来した鳥類は累計22種、確認された昆虫類は累計158種に上るそうです。

バードバスでも、飛来した鳥類を観測できるようになっているそう

未来に向け、さらなる“エコロジカル・ネットワーク”を


1年で2回の営巣に成功する快挙を成し遂げた「シジュウカラの邸宅」プロジェクト。赤根さんたちはすでに来年を見据えているようです。

「シジュウカラは同じ巣穴に続けて入ることもあるそうなので、営巣した巣箱はそのままに。2例目のシジュウカラは少しふくよかで巣穴に入りづらそうにしていたので、例えば巣穴の下に止まり木をつけて入りやすくするなど、今年の巣箱から学んだことを活かしていきたいですね。営巣が始まる2月に向け、秋ごろから新たなスタートを切っていくつもりです」


そう語る赤根さんは、今後に向けてさらに大きな夢を明かしてくれました。

「1企業が環境保全を掲げても限界があります。当社の他の施設に展開していくのはもちろん、今後は広域渋谷圏の他の会社さんにお声かけさせていただき、一緒にエコロジカル・ネットワークを広げていきたいです。他にも、渋谷区や地元の小学校などとも連携して、よりいっそう輪を広げていけたらいいですよね」

人だけじゃなく、鳥や昆虫たちにとっても良い環境を、皆の手で。そんな「人類以外の不動産のあり方」を探る「いきもの東急不動産」の挑戦は、これからも続いていきます。

・いきもの東急不動産/プロジェクトムービーはこちら

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