授業中に教師から「出っ歯」とからかわれた日を、今も忘れません…(写真はイメージ。写真提供:photoAC)

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時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは群馬県の50代の方からのお便り。中学生の頃、教師から「出っ歯」とからかわれたことが忘れられず、バイトをしてお金を貯め、矯正治療をしたのですが――。

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あの日から

中学1年生の頃、授業中に教師から「出っ歯」とからかわれた日を、今も忘れません。発端は、皆の前で教科書を読む時に何度もつっかえたこと。歯並びが悪いからだとでも言いたかったのでしょう。クラスメイトに笑われるなか、私は何も言い返せませんでした。

それからは歯を隠すために、登校時は常にマスクを着けるようになりました。するとあの教師が、「風邪を感染させたら迷惑だから、欠席しろ」「マスクしてると強盗に見えるぞ」などとまた心ないことを言ってきます。マスクが外せないのはお前のせいだよ! と殴りたくなる気持ちをグッとこらえました。

高校生となった私は、ついにある決意をします。「バイトでお金を貯めて、歯の矯正をする!」。それから3年間、やりたかった部活を諦めてバイトに精を出すことにしました。

実は校則ではバイトは禁止。見つからないようにしていましたが、ある日担任にバレて停学処分になってしまいます。仕方なく辞めましたが、引き下がるわけにはいきません。別のところで再び働き始めました。

裏方の作業で、人と接する機会がない職場です。おかげで卒業するまでバレずに済みました。

卒業後、ようやく十分にお金が貯まり、念願の矯正治療を開始。仕上がった自分の歯を鏡で見て、これが私! と感動しました。同時に怒りがこみ上げてきます。なんでアイツのせいで、大金を払って矯正しなくてはならなかったんだ、と。

きれいになった喜びよりも、教師への怒りがいつまでも消えないことにモヤモヤし、ついには体調を崩して過敏性腸症候群と診断されました。

そんな日々に別れを告げるべく、ある日私は再び決意します。直接あの教師に謝罪してもらおう、と。さっそく電話をしようとしたのですが、その前になんとなく近くに置いてあった新聞が気になったのです。

吸い寄せられるように目をやったお悔やみ欄に、なんとあの教師の名前が。思わず二度見してしまいましたが、間違いありません。謝罪してほしくても、もうこの思いは伝わらないのだ。こんなことならもっと早く会いに行くべきだった……。

彼を反面教師として、自分は言葉に気をつけようと心に決めました。

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