健康のためにビタミンAやビタミンB、ビタミンCなど複数の栄養素から作られたマルチビタミンのサプリメントを摂取しているという人は、アメリカでは成人の3分の1に及びます。しかし、アメリカ・メリーランド州の国立がん研究所による約40万人を対象とした調査で、毎日マルチビタミンのサプリメントを摂取しても寿命は延びないことが報告されました。

Multivitamin Use and Mortality Risk in 3 Prospective US Cohorts | Nutrition, Obesity, Exercise | JAMA Network Open | JAMA Network

https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2820369



Daily multivitamins do not help people live longer, major study finds | Nutrition | The Guardian

https://www.theguardian.com/science/article/2024/jun/26/daily-multivitamins-may-increase-risk-of-early-death-major-study-finds

アメリカでは、成人の3分の1が病気予防を目的としてマルチビタミンを摂取していることが報告されているほか、イギリスの成人の半数近くが週に1回以上マルチビタミンのサプリメントや栄養補助食品を摂取していると答えるなど、マルチビタミンのサプリメント市場は世界中で活況を呈しています。

しかし、これまでの研究でβ-カロテンのサプリメントは肺がんや心臓病のリスクを高める可能性があることが報告されています。また、マルチビタミンのサプリメントの多くに配合されている鉄分は、鉄過剰を引き起こし、心血管疾患や糖尿病、認知症のリスクを高める可能性が指摘されています。



国立がん研究所のエリカ・ロフトフィールド氏らの研究チームは、アメリカの健康な成人39万124人を対象とした、毎日のマルチビタミン摂取に関する3つの主要な健康研究のデータを分析しました。

分析の結果、毎日のマルチビタミンのサプリメント摂取が死亡リスクを低下させる明確な証拠は発見されず、代わりに使用者の死亡リスクが約4%高まることが報告されました。研究チームは死亡リスクが高まった要因について「マルチビタミンによる健康被害だけでなく、重篤な病気を発症した時点からマルチビタミンの摂取を始めた患者もいるため」と分析しています。

一方で、ジョージ・ワシントン大学のニール・バーナード氏は「ビタミンCは船乗りによく見られた壊血病を救ってきただけでなく、β-カロテンやビタミンC、ビタミンE、亜鉛は重度の視力喪失につながる可能性のある加齢黄斑変性症の進行を遅らせることが可能です。また、一部の研究では『マルチビタミンが老年期の認知機能低下を遅らせる可能性がある』との結果が示されています」と述べています。

しかし、バーナード氏は「マルチビタミンのサプリメントには科学的根拠がなく、サプリメントの効果を過剰に期待すべきではありません」と指摘。「マルチビタミンのサプリメントを摂取する代わりに、飽和脂肪酸とコレステロールを制限しながら、幅広い栄養素を摂取できる健康的な食品を食べる必要があります」と語りました。



また、登録栄養士でアストン医科大学のデュアン・メラー氏は「マルチビタミンのサプリメントが死亡リスクを大幅に低下させないという分析結果は驚くことではありません。サプリメントを摂取したからといって、それだけでは不健康な食生活を治すことは不可能です。少なくとも、ヴィーガンやベジタリアンといった人々が不足しがちなビタミンDやビタミンB12といった栄養素のサプリメントを摂取する場合には役立ちます」と述べています。