近年、スポーツの競技会場などで性的な目的で女性アスリートの画像や動画が撮影され、インターネットで拡散される被害が続出しています。この対抗策として、スポーツメーカーのミズノは赤外線を吸収する特長を備えた生地を作成したことを発表しました。また、2024年のパリオリンピックで一部の選手がこの生地を使ったユニフォームを着用することが報じられています。

アスリートを盗撮被害から守る赤外線防透け生地を開発|ミズノ株式会社

https://corp.mizuno.com/jp/articles/0042



Paris 2024: New material to combat voyeurism in women's sport

https://www.lemonde.fr/en/sports/article/2024/06/21/paris-2024-new-material-to-combat-voyeurism-in-women-s-sport_6675404_9.html

Japan’s Olympic athletes will wear outfits designed to block infrared cameras - The Verge

https://www.theverge.com/2024/6/26/24186660/olympics-athletes-mizuno-privacy-photography-paris

スポーツの競技団体や競技主催者は盗撮被害を未然に防ぎたいとの考えから、これまで競技会場での呼びかけや撮影に関する制限といった対策を行ってきました。しかし、撮影機器の高機能化もあって競技場内での撮影を完全にコントロールして盗撮被害を根絶するのは困難とのこと。

また、近年では暗視ゴーグルやサーマルカメラなどで使用されるような赤外線技術を使ったカメラを用いて、アスリートが着用するユニフォームの内側の下着や体を盗撮するといった被害も発生しています。

対策として日本オリンピック委員会(JOC)はアスリートを傷つける性的目的のSNS投稿やWEB掲載の情報提供フォームを設置しています。実際に2021年に東京オリンピックが開催された際には、情報提供数の急増が確認されています。



そこでミズノは、機能性材料に精通する住友金属鉱山株式会社や複合材料技術に精通する共同印刷株式会社と共同で、アスリートを赤外線による盗撮から守りながら、ユニフォームにも使える伸縮性を兼ね備えた「赤外線防透け生地」を開発しました。

ミズノは「赤外線防透け生地」の性能テストとして「一般的なユニフォーム用の生地の裏側に『赤外線防透け生地』を配置し、生地越しにランドルト環を撮影する」というテストを実施しました。



実験の結果が以下。「赤外線防透け生地」を用いると、可視光カメラでも赤外線カメラでもランドルト環の透過をほとんど防げることが分かります。



ミズノの開発チームは「トップアスリートがこの生地を使うことで、『盗撮は許されない』という認識が社会全体に広がることを願っています」と述べています。また、ミズノは「悪質な盗撮からアスリートを守り、競技に集中できる環境を提供することは、『心・技・体』の『心』をサポートすることにつながるほか、選手ファーストの観点においても大切な取り組みであると考えています」と言及。

実際に2024年のパリオリンピックでは、日本のバレーボールや体操競技、卓球、陸上競技などの選手が今回開発された生地を使ったユニフォームを着用するとのことで、ミズノは「今回開発した『赤外線防透け生地』をスポーツウエアに応用することで、アスリートの赤外線盗撮被害抑制に貢献できればと考えています」と語りました。