今回は、リビングにおける小型PCの使い勝手を、この「mouse CA-A5A01」(マウスコンピューター)で試してみる

「mouse CA-A5A01」の長所

・「とにかくコンパクトなサイズ」

・「なにげにカッコイイデザイン」

・「必要で十分なインタフェース」

「mouse CA-A5A01」の短所

・「ちょっとだけうるさいクーラー」

・「ちょっとだけ非力な描画能力」

・「ちょっとだけ惜しい垂直同期クロック」

リビングにはやっぱりテレビが欲しい

唐突甚だしいとは思うけれど、

「ねえねえ、最近テレビ何見ているー?」

なんていう会話、最近したことあるかな?

「うーん、そういえば記憶ないなあ」

という人、多いのではないだろうか。

最近テレビを持たない人増えているようだし、何を隠そう私の息子君もテレビ持っていないっていうし。

一人暮らしの息子君が「PCの画面があれば仕事もオフタイムのコンテンツも事足りる」というのは分かる。

その両親である私(と同居している相方さん)は「テレビっ子」という言葉が当てはまる世代なので、仕事用にPC用のディスプレイはあるけれどそれはそれとして、リビングに(それなりに)大画面テレビを据えて、くつろぐ時間はその画面を見て過ごす、という姿勢が今でも普通になっている。

とはいえ、最近になってそんなテレビっ子だった私たちもストリーミングコンテンツを視聴する時間が増えている。なんなら、PCゲームを4K出力の大画面テレビでプレイしたほうがPC用ディスプレイより楽しんじゃね、と思っていたりする。

それから、イマドキの大画面テレビの中身はOSを導入してそのOSの上でテレビが見れらたり録画したり録画したデータを管理したり、なんなら、アプリをインストールしてそのアプリを通してストリーミングコンテンツを利用できたり、導入しているOSもAndroidやGoogle OSだったり……、あれ? これってタブレットやスマートフォンと同じじゃん。

とうことで、いまも大画面テレビが家族団らんの中心です、と思っていたけれど、テレビっ子だった私たちも実はタブレットやスマートフォンでコンテンツを楽しんでいるのと「メカ的には」変わらないというのがイマドキの情況だったりする。

……ただ。

大画面テレビの中で動いているOSは、Google OSにしてもAndroidにしても「使 い ず ら い」のですよお。ユーザーインタフェースとして制約がある(タッチパネルを組み込んでいないから操作で使えるのはリモコンのボタンと十字キーだけ)のは、まあ理解してあげるとして(いやいやいやいや、生活に密着した家電なら、より一層使いやすくないとだめじゃん)、挙動が不安定極まりないのはほんんんんんんとうに!困る(どこのメーカーのナニ、と名指しはしないけれど、あるとき突然導入していたアプリが動かなくなって、解決するにはHDDを録画データもろとも初期化するしかないとサポートから告げられたあの日を私は忘れない)!!

そんなこんな諸々のことを体験して「インタフェースとして頼りになるのは結局PC」と悟った私だった。大画面テレビの脇にPCを置いてHDMIで接続して入力を切り替えればPCのディスプレイとしてもテレビとしてもそのまま流用できる。4K対応なので解像度も3840×2160ドットとPC用ディスプレイとして十分すぎるし、私の所有しているテレビは垂直同期クロックが120Hzなのでゲーム用としても対応できる。

とはいえ、テレビの脇にPCを置くなら譲れない条件がある。それは、とにかく小さいこと。くつろぎの場であるリビングでPCの存在感を主張しないことが望ましい。

質実剛健で必要十分なスペック

マウスコンピューターの「mouse CA-A5A01」は、本体サイズが幅194×奥行き150×高さ28mmとコンパクトにまとまっている。加えて標準で2種類のスタンドが用意されているのもポイントだ。1つは本体を縦置きできるスタンドで、これを使えば幅73×奥行き153×高さ219mmとなる。もう一つはVESAマウンターで装着すると幅451×奥行き238×高さ149mmとなるが、VESA規格に合わせたネジ穴が用意されているので、ここに標準付属のネジを使って大画面テレビの背面に本体を固定できる。

幅194×奥行き150×高さ28mmととにかくコンパクトなmouse CA-A5A01

同梱されているスタンドを使えば……

かなりスタイリッシュなスリムタワー……、いや、これはもうプレートPCと呼びたい

パッケージにはVESAマウンターも標準で付属する

VESAマウント規格に対応したディスプレイやテレビの背面に固定可能だが、その場合、“本体抜き差し系”デバイスはとりあえず“差したまま”使うことになるだろう

ボディが黒塗りパネルのワンポイントに赤いラインをあしらうなど、クールな印象のデザインなので、コンパクトなインテリアのように大画面テレビの脇になじむだろう。

ワンポイントの赤いラインと側面中央にあるチーズのアイコンが“インテリア感”を演出している

横置きでは底面になる側面にはVISAマウンターに固定するためのネジ穴を設けている

本体搭載のインタフェースは正面がUSB 3.0 Type-C 1基にUSB 3.0 Type-Aが2基、USB 2.0 Type-Aが2基、そして、SDメモリーカードリーダーを備え、背面にはUSB 3.0 Type-Aが2基、1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-T有線LAN対応のRJ-45、マイク端子、ヘッドホン端子を用意している。

この本体搭載インタフェースの種類を見ると、このコンパクトなPCの仕様はとてもよく考えられているように思える。まず、USBの規格がType-CにしてもType-Aにしても3.0を採用する。3.2でも3.1でもない。そして、その数はType-Cが1基で他は正面の2基、背面の2基ともType-Aだ。正面にはType-Aはもう2基あるが(なので正面には4基のType-Aを用意していることになる)、それに至ってはUSB 2.0に対応する。また、カードリーダーはSDメモリーカードに対応する。こちらも最新の薄型ノートPCでは採用例が減少しているが、実はデジタルカメラのメディアとして未だ現役で、PCに差す機会が多いデバイスだ。

背面には映像出力インタフェースを備えるが、こちらはHDMI出力に加えて15ピンD-SUBのアナログ映像出力も用意している(ただ、HDMIの垂直同期クロックは60Hzまで)。

正面にはUSB 3.0 Type-Cと2基のUSB 3.0 Type-A、そして、2基のUSB 2.0 Type-ASDメモリーカードと“今でも日本で最も抜き差しするデバイスが多い”インタフェースを集めている

背面には2基のUSB 3.0 Type-Aに加えてHDMI出力にアナログRGB出力用の15ピンD-SUB、有線LAN用のRJ-45、マイク端子にヘッドホン端子を備える

USB 3.0にしてもアナログ映像出力にしてもSDメモリーカードにしても、最新の規格に対応するのではなく、「日本のユーザーが実際に最も使っていそうな規格を適確にそろえている」あたりに、熟慮を重ねた上で選ばれしインタフェースなんだろうなと納得できる構成と思わざるを得ない。個人的経験でも、デジカメの撮影データを吸い上げようとして最近のノートPCの本体にmicroSDスロットしかなくて(そしてmicroSD→SDメモリーカード変換アダプタを忘れて)難渋することがどれだけあったことか。

ただし、その一方で無線接続インタフェースでは、Wi-Fi 6E(IEEE 802.11 ax/ac/a/b/g/n準拠。ただし、最大2.4Gbps対応)が利用できるなど、こちらは最新規格をサポートしてきている。

電源はACアダプタを介して供給される

“第12世代”ハイエンドCPUに匹敵する処理能力

そのmouse CA-A5A01はCPUとシステムメモリ容量、ストレージ容量、OSによって構成のバリエーションを用意している。OSで選べるのはWindows 11 Home 64ビット版かWindows 11 Pro 64ビット版。そして、CPUはAMD Ryzen 5 7530UかAMD Ryzen 5 5500U、システムメモリ容量は16GBか32GB、ストレージ(SSD)容量は256GB、512GB、1TBからそれぞれ選択できる。CPUでAMD Ryzen 5 7530UとAMD Ryzen 5 5500Uの差額は2万円になる(2024年6月20日時点でAMD Ryzen 5 5500U搭載構成は通常より3千円安くなっている)。

今回試用した評価機材はAMD Ryzen 5 7530Uを搭載していた。システムメモリ容量は32GB(16GB×2)、ストレージ容量は1TBとラインアップでは最も上位の構成となる。

Ryzen 5 7530Uは、2023年1月に登場した「Ryzen 7030 Series for Mobile」のプロセッサだ。AMDにおけるAPU世代としてはZen 3を採用している。6コア12スレッドの構成で、動作クロックは基本で2GHz、最大ブーストクロックで4.5GHzとなる。TDPはデフォルトで15W。L3キャッシュメモリの容量は合計で16MBだ。

CPU-ZでRyzen 5 7530Uの仕様を確認する

GPU-Zで統合されたグラフィックスコアの仕様を確認する

Ryzen 5 7530Uを搭載したmouse CA-A5A01の処理能力を検証するため、ベンチマークテストのPCMark 10、CINEBENCH 2024、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark 8.0.4 x64を用いて測定した。加えて、ゲーム描画処理能力の“基礎体力”を測定するベンチマークテストとして3DMark Time Spy、ファイナルファンタジー XIV:黄金のレガシーを実施している。

なお、比較対象としてCPUにCore i7-1260Pを搭載し、ディスプレイ解像度が2560×1600ドット、システムメモリがLPDDR5-5200 16GB、ストレージがSSD 1TB(PCI Express 4.0 x4接続)のノートPCで測定したスコアを併記する。

比較対象がCore i7クラスと、ハイエンドながら世代的には前のモデルになるので、総合力を見るPCMark 10のスコアは総じてRyzen 5 7530Uを載せたmouse CA-A5A01が上回る(Ryzen 5 7530UのZen3アーキテクチャも今となっては最新世代ではないが)。一方、CINEBENCH R23を見るとMulti、singleともにわずかに下回る。また、ゲーミングベンチマークテストでDirectX 12における処理能力を測定する3DMark Night Raidは比較対象を大幅に上回る結果を出している。

最後に1つだけ超個人的な一言を。

「そもそもリビングにみんなが集まって大画面テレビを一緒に見る機会や必要性ってイマドキある?」という声が皆さん(それも若い世代)から聞こえてきそうな気がするのはしょうじきなところであったりする。

嗜好が細分化して個人個人で視聴したいコンテンツが異なり、さらに、個人の可処分時間が減っている(みんな忙しすぎ)このご時世。みんなが時間を合わせて集まって同じコンテンツを見る意義ってあるかな、と思いがちかも知れない。

だが、しかし。

超個人的思い出話をすると、みんなが同じ画面を向いて過ごす時間って意外と記憶に残るしなんとなく楽しい時間だったなと思えるんだよねと、ということは言い残しておきたいかな。

標準でワイヤレス接続のキーボード(無線レシーバーはUSBに接続する)とBluetooth接続マウスが付属する。ただ、「リビングでテレビのリモコンのようにPCを使いたい」ならば、キーボードとポインティングデバイスが一体化した製品はあると何かと快適になるだろう