多くの人がさまざまな楽しみ方をするサウナ

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「サ活」「サ道」「熱波師」など多くのサウナ用語を生んだサウナ浴ブームは今どうなっているのか?

サウナ愛好家の団体、一般社団法人日本サウナ・温冷浴総合研究所(日本サウナ総研)が2024年5月20日に発表した「日本のサウナ実態調査2024」によると、年に1回程度サウナに行く人は増えているが、逆に月に1〜数回以上行く人は減っているという。

「愛好家はどこに行ったのか?」と日本サウナ総研は疑問を投げかける――。同総研代表の立花玲二さんに、この謎の答えを聞いた。

サウナブームの報道、愛好家人口増加に影響はあったのか

2015年開始のタナカカツキさんの連載漫画『マンガ サ道〜マンガで読むサウナ道』(講談社)と、2019年にドラマ化したテレビ東京系「サ道」の大ヒットにより2010年代後半、空前のサウナブームが起こったといわれる。コロナ禍に見舞われてブームは去ったとも言われたが、実際はどうか...。

日本サウナ総研(千葉県船橋市、立花玲二さん代表)の調査は、18〜69歳の1万人(男性5015人、女性4985人)が対象だ。2016年から毎年、サウナ愛好家の動向調査を行なってきた。

調査では、「年に1回以上サウナに入る人」を「ライトサウナー」、「月に1回以上サウナに入る人」を「ミドルサウナー」、「月に4回以上サウナに入る人」を「ヘビーサウナー」とそれぞれ区分して調査、総務省統計局人口推計を用いたウエイトバックを行い、愛好家人口を推計してきた。

【図表1】が2016年から2023年までの愛好家推計人口の推移だ。興味深いのはコロナ直前の2019年までのグラフ。

メディアが「空前のサウナブーム」と報じた時期だが、愛好家全体の人口は約2800〜2900万人で、特に増えた傾向はみられない。むしろ、コロナ禍によって2020〜2021年年にガクンと減少した。

同総研では、「サウナブームが来ているとの報道があるが、人口推移を分析すると、大きな変化は観察されないということが当研究所の調査結果」としている。

注目されるのは、コロナ後の復調の過程でライトユーザーの数が大きく増加しているのに、2022年から2023年にかけてサウナに通う頻度が高いミドルユーザーとヘビーユーザーがかなり減っていることだ。

【図表2】がその人口変化だ。

年に1〜2回のライトユーザーが約25〜100%近く増えているのに、月に1回から15回以上のミドルとヘビーユーザーが約20〜40%も減った。サウナを愛する度合いが高い人々ほど行かなくなったのはなぜか。

調査報告では「愛好家はどこに行ったのか?」というタイトルをつけながら、理由については全く触れていない。

何も考えずに足が向く、生活の一部になることがサウナの魅力

J‐CASTニュースBiz編集部は、日本サウナ総研代表の立花玲二さんに話を聞いた。

――サウナの魅力はどこにあるのでしょうか。

立花玲二さん ひとりの愛好家として感じているのは、特に理由なくサウナに足が向いていることが、サウナに魅力を感じている表れなのかと思います。

もちろん、気持ちいい、考えごとをするのにも、ボーッとするのにも最適、複数で行っても楽しいなどなど、感じているよさは多々ありますが、サウナに行く際には「気持ちよくなりたいから行こう」などとは考えずに行っています。

もはや習慣と言えるかもしれませんが、何も考えずに足が向く、誰かの生活の一部になり得ること自体がサウナの魅力なのではと感じています。

――愛好家の推定人口はコロナまではライト、ミドル、ヘビーとも一定の人数を維持しています。ところが、2023年にライトが再び増え始めているのに、ミドルとヘビーが逆に減った理由は、ズバリ何ですか。

立花玲二さん 「わからない」が現状の答えです。まずは今回の結果が統計的に有意なものかの検証と、その原因についてはさまざまな角度からの深掘り、経年観察が必要だと考えています。

ただ、調査方法やこれまでの結果を踏まえ、「何かが起こっている可能性がある」というのが当研究所の所感です。

ただ、ライトとミドル、ヘビーの違いについて説明すると、頻度の高いユーザーが施設存続にとって不可欠で、業界の発展に寄与しているという点については異論がありません。しかし、だからと言ってライトが「本当のサウナ愛好家ではない」かというと、そうとも言い切れない気がするからです。

いろいろな楽しみ方をする人が、同じサウナで全員楽しめる施設を

――どういうことでしょうか。

立花玲二さん ミドル以上のユーザーとライトユーザーが別人かというと、そうでもないように思います。つまり、ミドルが翌年はライトの頻度になっていたり、逆にライトがミドルやベビーの頻度になったりするというようなユーザー内の頻度の変化もかなりの部分あるように思います。

――なるほど。ところで、サウナ愛好家全体が再びコロナ前のように戻ってきてもらうためには、何が重要でしょうか。サウナ業界はどう変わるべきだと思いますか。

立花玲二さん これも一概にはお答えしづらいですが、必要なのは施設側の新規客獲得よりも、既存ユーザーの頻度を上げるような取り組みかもしれませんし、頻度の変化は近年のコロナのようなサウナの外に原因がある場合があるかもしれません。

私自身がひとりの愛好家として、若干情緒的な話をすると、ひとりで静かに楽しみたい人も、複数でサウナを楽しみたい人も、純粋にサウナを楽しみたい人も、サウナ後のビールのために入る人など、いろいろな楽しみ方をする人たちが、同じサウナでそれぞれがちゃんと楽しめるような施設が増えるといいな、と思います。

これが冒頭申し上げた、何も考えずにサウナに行ったり、サウナが誰かの生活の一部になったりする理由になるのでは、と思います。

――今回の調査で、特に強調しておきたいことはありますか。

立花玲二さん 今回の調査に限ったことではありませんが、単純に人口が「増えた・減った」に一喜一憂するのではなく、この調査がユーザーの利用実態の把握や、顕在・潜在ニーズ、もしくはインサイト(顧客自身が自覚していない要求)の発見など、今後の業界の発展の一助となるような活用をされることを切に願っています。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)