なんで自己啓発本は嫌われるの…「自己啓発本」大好き・紺野ぶるまが「読書はもっと自由でいい」と感じるワケ
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「カワイすぎる女芸人」と評されるルックスとは裏腹の、下ネタや毒舌がおなじみの芸風で人気の芸人・紺野ぶるま。
数々のお笑い賞レースでも実力が認められてきた彼女だが、幼少期からの闘病や高校中退など波乱な10代を送り、実は大の“自己啓発本好き”であることでも知られている。
結婚・出産を経験し、公私とも順風満帆に見える現在も自己啓発本は手放せない存在だという。紺野さん自身と自己啓発本の関わり方や自己啓発本の魅力、そして世の中にはびこる「自己啓発本嫌い」について語ってもらった。
何読んでいるのか聞かれるのが一番シンドイ問題
――前編記事では自己啓発本との関わり方や読む際のスタンスなどをお聞きしましたが、自己啓発本好きであることを、周りの芸人仲間にいじられることも多いのでは?
紺野:まず引かれますし、いじっていいのかわからない段階だと、けっこう気を使われますね。「病んでいるの?」って私めちゃくちゃ言われます。
――読書体験の入口が自己啓発本やビジネス書のパターンって実は意外とある気もする一方、文芸作品などにハマるタイミングがなかったのか少し気になりました。
紺野:私も小説もっとハマりたいんですけど、やっぱり自己啓発本は超えられないんですよね。より自分の生活に役に立つ、実用的なものが好きなのかもしれないです。
自分や自分の周りの心理・メンタル、言動にばかり興味が湧いてしまって。自分が不快に思った理由をぐるぐる考えて、それを解明することが単純に好きなんだと思います。自己啓発本にはコンプレックスとの向き合い方とか書いてあるので。
――小説でも良さそうなもんですけど、読み方や解釈の自由度が高い分、逆に取っ付きにくいのかもしれないですね。
紺野:それもあるし、自分の集中力も途切れちゃうんです。
でも、やっぱりちょっとした劣等感はあります。以前、私が参加させてもらった芸人によるビブリオバトルのイベントも、私の番が最後から2番目だったんですけど、どんどん肩身が狭くなってきて。
「え、今から私ここで一人だけ自己啓発本を紹介するの?」と。
――そのビブリオバトルを拝見しました。圧巻でした。書店員芸人のカモシダせぶんさんをはじめとする本好き芸人のみなさん面白かったんですけど、紺野さんの時だけ会場の雰囲気がなんか違いました。
紺野:本当ですか…。セミナー感出したからかな…。純文学の文庫本をいつも尻ポケットに入れて持ち歩いているような人に、「ぶるまは最近何読んでいるの?」って聞かれて『金持ち父さん 貧乏父さん』とか言うのは、やっぱり気が引けるんですよね。
自分はいい本だと思っているんですけど、小説よりはミーハー感が出るというか。
教養とか言ってる場合じゃない段階がある
紺野:私も生まれ変わるなら純文学とか読む人生のほうがいいと思う時もあります。思慮深そうでカッコいいし、雰囲気が出るじゃないですか。なんか自己啓発本ってバカにされがちですもん。
――趣味や嗜好って、それぞれの価値観がマウントを取り合う闘争らしいですからね。『ディスタンクシオン』(藤原書店)という社会学の本が『100分de名著』(Eテレ)で紹介されたとき、何かを好きになってハマることは何かを嫌悪することと必ずセットだという話を聞きました。
紺野:昔悩むと何かと海外旅行に行く友達がいて。
「海外に行くくらいなら東京の家で自己啓発本を読んで自分の現実と向き合ったらいいのに」とか密かに思っていました。
どんな本を読もうが、たくさん海外に行こうが、だいたい病むときは同じように病むんです! それなら安いほうがいいのにと。
――自己啓発本が苦手な読書好きみたいな人からすると、自己啓発本って毒にも薬にもならないイメージが正直あるのかもしれません。
細かい内容や知識的なものってどうせほとんどすぐ忘れてしまうし、名言のような含蓄あるフレーズやノウハウを得るだけなら別に読書という形式でなくても、音声メディアやSNSの動画でも代替え可能な気がします。
紺野:その気持ちもわかります。帯とかタイトルとか売り方がうまくて手に取ったけど、「何これ」みたいな啓発本も実際多いですからね。
私が啓発本好きなのは、自分にとってネガティブな物事に対して、前向きな姿勢で向き合えるようになるからなんですよね。
学術系の新書や小説が教養が身につくという意味で大事なことはわかるんですけど、私の場合は「勉強する」とか「小説読む」とかよりもっと前の場所にいると思います。
学校の勉強とかもそうですけど、勉強が本当に好きな子が一番勉強が得意で学力も高いじゃないですか?
勉強できない子は、ちょっとしたきっかけで最初から自分はダメだって諦めていたり、勉強より他にやりたいことがあったりして、とにかく勉強する理由や意味を見出せない。それが勉強できる子との大きな違いで、一番の差だと思うんです。
大人でもじつは「勉強したくない」人がほとんどな気がします。しんどい、やる気が出ない、そういったネガティブな気持ちを前向きにするのが啓発本の力です。
難しい本を買ってもどうせ読めない。読書や勉強だけでなく、何かをはじめるために自己啓発本は読んでいいんじゃないかと思います。
――自己啓発本は教養的な意味で読む本ではないということですね。多くの人がその前提を誤解している気がします。
紺野:自己啓発本を読んだら、みんなが当たり前に頑張ってできるようなところの手前でつまずきがちな人間でも自己肯定感が高まって頑張れるかもしれない! そう思います。
啓発の仕方も、あの人はこれがいいって言ってたけど私には合わないとか、これはなんか心地いいとか、でも今日はこっちの気分とか、自己啓発本ってこの世にたくさんあるからきっと何となくでもマッチするものがあると思うんです。
――やはり読む本のジャンルで優劣を語るのはナンセンスですね。読書にはいろんな意味合いがあって、自由に読んでいいということですね。紺野さんの場合は、それが「物事に前向きになるため」ということですね。
紺野:私はいくつか本を出させてもらっているんですけど、それらを書けた理由も、言ってしまえば「自分がやりたいと思ったものは叶う」って自己啓発本に書いてあったからなんです。
「そっか。こんな私でも叶うんだ」とやる気が出て、勉強したり、いろんな日常の出来事にアンテナ張ったり、周りの人に「小説書いてみたい」って口に出したり。啓発本の言葉を借りれば、「引き寄せ」たんです。
――言霊を信じて。
紺野:宇宙にお願いしながら。
紺野ぶるまのオススメ啓発本3選
紺野:だいたい思うんですけど、啓発本にハマり過ぎていけないことってあるんですかね。自己肯定感高まりすぎて逆に働かなくなるみたいな?
――紺野さんのようにある程度いろんな分野の啓発本を読まれている方は大丈夫そうですけど、自分の頭で考えるのをやめて、啓発本に書かれていることに従って、人生の大きな決断を下しちゃうとかはあるのではないでしょうか。
紺野:確かに量子力学もカルトっぽいハマり方をする人がたまにいますね。それこそ宇宙の法則とか。
どっぷりハマって他者の考え方を否定したり、人を無理やり勧誘すると一気に人が離れて行きますよね。ただ千円ちょっと出して勝手に家で本読んでる分にはいいじゃないですか。
啓発本を読んでいても、いずれはつらい現実に向き合わなきゃいけないタイミングは来るんで。推し活だって、新興宗教だって、生活に支障が出るほどハマる人もいれば、ほどよい距離感で付き合っている人もいます。
――むしろ、アルコールなど他の依存先よりは比較的健康的な感じはします。
最後にそんな紺野さんから初心者にもオススメの啓発本を紹介していただきたいです。
紺野:やっぱりメンタル大事なんで、まずは布施努さんの『自分の最高を引き出す考え方 スポーツ心理学博士が語る結果を出し続ける人の違い』(日本能率協会マネジメントセンター)ですかね。
啓発本が好きな自分まで肯定してもらえるような本で、自己決定能力のあげ方をロジカルに説明してて超実用的な話が多くてオススメです。
実用的な啓発本だと、近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』も超実用的です。結局、売れている本は良いですね。本当に人生変わったので入り口としては良いと思います。
――「こんまりメソッド」には実生活でどれくらいコミットしているんですか。
紺野:100%です。お掃除って勉強するべきことだったんだ!と知らなくて損していることだらけでした。徹底的に実践しています。部屋を片付けると、本当に心も人間関係も同じように片付いていくんですよ。
心みたいな言葉を使った瞬間、また一気に警戒されちゃうんですけど。あと、有吉弘行さんの『お前なんかもう死んでいる プロ一発屋に学ぶ「生き残りの法則50」』(双葉文庫)も最高ですね。
――有吉さんの本はどんな内容なんですか?
紺野:一発あてて年収1億からゼロになっちゃったという時に結局は金だと悟ったみたいな話ですね。自己啓発をぶった切るといった趣旨の本なんですけど、この本も読み終わった後、「お金稼ぎたい」って思えて私めちゃくちゃ啓発されました。「実力ない奴ほど仕事のやりがいとかくだらないこと言うものだ」みたいな。
――辛辣ですけど、言い切っていて気持ちがいいですね。
紺野:甘いものとしょっぱいものみたいな感じで、取り合わせのバランス的にも、最初はこの3冊くらいから読むのが良いかもしれませんね。甘いの取り過ぎた分、有吉さんにしょっぱい刺激もらうみたいな感じで。
――ありがとうございました。自己啓発本の魅力、読み方がわかりました。
文・撮影:伊藤 綾