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 火曜夜にロンドンで行われたチャンピオンズリーグ準々決勝1stレグ、アーセナルvsバイエルンは、最終的に物議を醸すジャッジもありながら両者痛み分けという結果で、ミュンヘンでのセカンドレグへと臨むことになった。

 特に今回は、ドルトムント、さらに昇格組ハイデンハイムにも敗れたバイエルンが、最近絶好調でプレミアリーグ首位に立つアーセナルと敵地で対戦するとあって、下馬評では不利との見方が強く、実際に試合開始からガナーズはハイプレスから素早いボール奪取。前半12分にはサカが幸先良く先制点を沈める。さらに16分にはホワイトが追加点のチャンスを逸する不運もあったが、それまでの圧倒的なパフォーマンスから、その痛手はさほど大きくない印象を与えていた。

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バイエルンが奮起も誤審から流れは一変

 しかし、試合はこの後大きく動き出す。週末のブライトン戦から先発を入れ替えたアーセナル(ジンチェンコとガブリエウ・ジェズスに代わってキヴィオルとガブリエル・マルティネッリ)が噛み合わず、パスミスを察知したサネがゴレツカに経由、最後は長期離脱から復活後好調のニャブリが同点ゴールを決める。さらに32分、サネはホワイトからファウルを受けてPKを獲得。これをハリー・ケインがしっかりと決めて2-1と逆転に成功した。

 結果的にアーセナルは、サネが36分に追加点の絶好機を逸したため、むしろ2-1と最小得点差で前半を折り返すことに成功する。しかしそれでも、後半もなかなか波に乗れないアーセナルは、バイエルンの猛攻に防戦一方。そして67分、試合再開の笛後、GKラヤが蹴ったボールをガブリエウが手に取ってピッチに置き直し、バックパスでGKに戻したが、なんとナイボリ主審は試合をそのまま続行させる判断を下した。

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主審「あんな初歩的ミスは、CL準々決勝で吹かない」

 当然ながらバイエルンの選手たちはこのことについて抗議するも、トゥヘル監督によれば「主審からの説明は、あんな初歩的ミスは、CL準々決勝で吹かないと説明したそうだ」と呆れ顔。「これはルールの解釈として、前代未聞の信じられない解釈だよね。確実にPKだというのに」と述べており、ジョシュア・キミヒも「初歩的かどうかじゃなく、これが試合の決め手になりえたものなのに」と悔しさを滲ませ、ケインは「僕が目にした中で、最も明白なPK。まぁ、これもサッカーなのだろう」と付け加えている。

 そもそもトゥヘル監督自身、このジャッジだけでなく、試合全体を通して主審から不利な判断を受けていたと感じていたようだ。「微妙な判定はすべて相手側に有利に働いた。例えば、サカに対する最初のファウルは警告に値するものであった」と不満を吐露。そんな苛立ちの中、後半76分にアーセナルは後半最初のチャンスでトロサールがゴールを決め、逆に90分にはコマンが決勝弾を沈める絶好機を迎えるも、ポストに阻まれ万事休すとなった。

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イングランドではサカを巡るジャッジが波紋

 しかし、イングランドではむしろ試合最後の場面、サカが相手PA内でGKノイアーに足を取られPKにならなかったことが大いに議論となっているが、しかしこれは先ほど「最も明白なPK」と話したケインが「五分五分」と表現したように、全く別の話である。「もしもあれが自軍であれば、もちろんPKになってほしいとは思うけどね。」

 トゥヘル監督はさらに、「確かに接触はあった。しかし、明らかに遅すぎる接触であり、サカはすでにボールから離れた場所にいた。つまり、チャンスがない状態でノイアーの足にぶつかったのだ」と説明。また当のアルテタ監督は、「彼らが確認してPKではなかったと言っているのだから」と非常に客観的な反応を見せており、おそらくはその前の物議を醸したPK判定を意識してのことだろう。

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「終わったと言われても、意外としぶとい」バイエルン

 そして敢えて2つの物議を醸したPKの場面についての言及を避けたスペイン人指揮官は、「むしろ追加点を決めて2−0とすべきだった。それができていれば違う試合展開になったかもしれないが、普段をは大いに異なり今日は、我々は多くの部分で本来の期待に応えることができなかった。これほどのレベルの戦いになると、1つのミスが命取りになるものだよ。それが今回手にした最大の教訓だ」と警鐘を鳴らす。「途中から出場した選手たちは非常に精力的で、大きな違いを生んでくれていた」

 一方で最終的にバイエルンは、試合前にエベール競技取締役が求めていたような、「ドイツを代表する使命」を果たす形で、UEFAからバイエルンファンの入場を禁止される苦境にあっても、ロンドンの地でドレーセンCEOが笑顔で振り返られる奮闘ぶりをみせていた。「もう終わりといわれても、意外としぶとさを見せることがある。今日はそんな日だね。この苦しい1ヶ月で、今日は本当に素晴らしい日となった。本来の姿で激しく見事な闘いぶりを見せていたよ。誇れるもので、2−2以上の内容があった」

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ニャブリが負傷で再離脱、デイヴィスは出場停止

 これでバイエルンにとって今、唯一残されたタイトル獲得の機会であるチャンピオンズリーグ決勝の舞台となるウェンブレイの地へ、前回優勝を果たした11年ぶりに帰還できるかどうかは、ひとまずは次のミュンヘンでのアーセナル戦次第となった。ただ「素晴らしいゴールを決めてくれたニャブリが、負傷からできるだけ早く回復を果たせるように願っているよ」と付け加えたように、先ほどの疑惑の判定からわずか2分後に負傷交代を余儀なくされたことは懸念材料だ。

 チームドクターによる治療後、プレー続行不可能との判断が下されており、現時点では詳細は不明ながら、試合後にトゥヘル監督は「ニャブリは再び大腿部に負傷を抱えてしまった。確実に離脱を余儀なくされてしまう。これは明らかに我々にとって大きな問題であり、これからの戦いに向けて解決策を見出さなくてはならない」とコメント。さらに次戦のアーセナルとのセカンドレグでは、デイヴィスが累積警告による出場停止のため、2つの入れ替えと「選手たちは今日と同じ情熱とクオリティを持った戦い」を見せなくてはならない。

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