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 1.FCハイデンハイムとの一戦はバイエルン・ミュンヘンにとって、ハーフタイムまでに2-0とリードを奪うなど、思惑通りの展開で試合を進めていた。だが昇格組を相手にし、最終的にここから逆転を許したこの45分間の出来事は、バイエルン史上1度も起きたことのなかった屈辱となっている。試合後にトーマス・トゥヘル監督が強い苛立ちを示したことに、さして驚きを覚える人はいないだろう。「どうやって勝ち試合を捨てられるんだ?完全に掌握していたはずだ!我々は集中力と継続性に致命的な問題を抱えている。それは一時期的なものではなく、試合の中でも顕著だ。今回の試合がまさに典型だ!」

ハイデンハイム指揮官、肉離れも「気持ちいい」

 その逆の指揮官が大いに喜びを覚えていることもまた、さして驚く必要もないだろう。逆転した79分のクラインディーンストのゴールの際に、勢い余って足に肉離れを抱えたものの、「気持ちいいくらいだ!」とコメント。前半終了時点では「選手たちはすっかり意気消沈していた」というが、そこでの檄と3選手同時交代でシステムを4-4-2に修正したことにより、主審を務めていたロベルト・シュレーダー審判員が循環機能の問題で第4審判員交代を余儀なくされた不穏な空気を、勇猛果敢にドイツ王者に牙を向いた選手たちは、50分、51分と立て続けにゴールを決めた末、勢いそのままに王者を一気に寄り切ってしまった。

フロイントSD「到底許されない、しかも2試合連続で?」

 特にそれらの失点は「選手たちに事前に指摘していた」ような相手GKからのロングフィードなどから生まれており、そこでのキム・ミンジェやデイヴィース、ウパメカノら「このレベルでは到底許されない緩慢さと対人戦での姿勢」から、後半だけで昇格組を相手に3失点も喫する結果となっている。改めてフロイントSDは「こんなパフォーマンスを、もうこれ以上つづけるようなことがあってはならない。しかも2週連続で?ひどいもんだよ!これから火曜のCLアーセナル戦までに力を蓄えなくてはならない」と選手たちへ奮起を促した。

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エベール取締役もトゥヘル監督続投を明言

 あくまでフロイントSDもエベール競技取締役も、トゥヘル監督への責任追及する考えがないことを強調しており、次節では累積警告で不在となるが「その後の数週間も間違いなく、我々はトゥヘル監督とともに戦うよ。我々はそのつもりだ。これはコーチングだけの問題ではない」と説明。このチーム状況はあくまでトゥヘル監督だけの責任ではなく「これまでの経過の中で生じてきた」問題によるものとみており、昨季はドルトムントに残り数分までリーグ首位の座を許し「今季はレバークーゼンというリーグ王者にふさわしいチームが登場したということ」との考えを述べている。

バイエルンが陥った苦難のシーズン

 今回バイエルン公式戦通算700試合目が不名誉な試合となってしまったトーマス・ミュラーは「火曜日に向けてまた闘志に火がつくよ。確かにチーム状況はそこまでいいものではない。それはわかっている。だからといって指を咥えてみてるわけにもいかないだろ」と意気込みをみせたが、それにしてもドイツ杯では3部を相手に敗退、11連覇中のリーグ戦では4月を待たずして白旗宣言、現在は2位の座さえシュツットガルトに勝ち点で並ばれているのか。「名前的にみれば今シーズンだって、とても良い選手たちが揃ってはいるんだけどね」と語ったのは、元バイエルン主将、ミヒャエル・バラック氏だ。

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元主将バラック「この数年間での間違ったチーム作りの結果」

 ”カピターノ”はバイエルンが三冠を達成した2020年とは全く異なり、「選手たちの間で、ある種の気の緩みが生じてしまったのか、自発的にモチベーションを高めていく姿がもはやみられない」と指摘。その理由として「過去数年間で下してしまった判断を、今のクラブ首脳陣は正していかなくてはならないだろう。ハングリーさの改善を目指し、チーム内のヒエラルキーや、あとサラリー面での構造という点でも、再び絶対的な安定感を取り戻していかなくては」と説明する。

バラック氏「2年でトゥヘル、ナーゲルスマンをたて続けに解任した」

 そして、この夏をもってトーマス・トゥヘル監督が退任することについて、「この2年間でバイエルンは、ユリアン・ナーゲルスマン監督やトーマス・トゥヘル監督といった、2人のトップコーチを解任することになった。そこはちゃんと目を背けないようにしないといけない。」と強調し、「今はラングニック氏に注目して新たな改革を試みているとも聞くが、2年前だってクラブはナーゲルスマン監督と共に、同様の試みを長期的プランで行っていた。それがわずか1年で終了している。」と、忍耐力の必要性を説いた。

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ナーゲルスマン監督については復帰の可能性も

 ちなみにそのナーゲルスマン監督については、トゥヘル監督の後任候補として復帰の可能性も取り沙汰されているところ。伝えられるところではエベール競技取締役もウリ・へーネス名誉会長も否定的ではないのだが、しかしながら前任での退任に至った経緯もあり、クラブの全てが乗り気というわけではない模様。それ以外の候補としてはラングニック氏のほか、ブライトンのデ・ゼルビ監督も挙がっている。

フロイントSD「私は高く評価しているが・・・」

 スカイに対して、フロイントSDは「私はナーゲルスマン監督を高く評価しており、ただそれは彼1人に限ったことではない」とコメント。「以前にここで指揮をとっていたということは特別な状況であり、誰もが彼の強みを知っていることだろう。ただ現時点で重要なことは最高の感触をもって迎えられる人物を見出すことにある」とし、「時間をかけて判断していくことも重要なことだ」と語った。「大事なことは早さではない、適切さにあるものだよ」

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