「相談役・顧問」の数が多い企業ランキングTOP50

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(写真:saki/PIXTA)

コーポレートガバナンス改革が進む中、改革のメスが入ったのが「相談役・顧問制度」だ。退任した社長やCEOが、会社経営に責任を負わない相談役や顧問という形で会社に残る場合、現役の経営陣に対する不当な影響力を行使しているのではないか、実質的な経営トップが誰なのかが不明瞭になる、などの弊害が指摘されたことが背景にある。

しかし、会社経営に携わった人材を相談役や顧問にすることが会社の利益になっている場合もある。例えば、財界活動や顧客との関係維持、業務における過去の経験を後任に引き継ぐこと、などがそれに当たる。


『CSR企業総覧』(東洋経済新報社)。書影をクリックすると東洋経済STOREのサイトにジャンプします

『CSR企業総覧(ESG編)』2024年版の掲載データ(2023年「東洋経済CSR調査」回答情報ベース)によると、相談役・顧問制度の有無について、「あり」と回答した企業の割合は58.0%(対象1280社)。依然として6割近い会社が導入している。

そこで今回は、同データを基に、相談役・顧問制度の導入目的やメリットを見るために、相談役・顧問数の多い会社のランキングを作成した。対象は相談役・顧問制度が「あり」または「その他」の820社のうち、いずれかの人数を回答している524社。以後、ランキング上位企業の制度導入目的やメリットなどに触れていく。

相談役・顧問による知識・経験からの助言に期待

1位は前田建設工業、前田道路、前田製作所などを傘下に持つ持ち株会社インフロニア・ホールディングス。相談役・顧問数は67人だが、すべて顧問で相談役はいない。なお、これは傘下の前田建設工業のデータであり、外部招聘、常務理事、嘱託、非常勤顧問等を含んでいる点には注意が必要だ。制度の導入目的には、現経営陣への助言や対外活動を挙げており、顧問を置くことで業界団体や財界等への対外活動に十分対応できる体制を敷いている。

2位はキヤノン製造子会社のキヤノン電子(相談役0人、顧問30人。以下同)。同社も顧問のみで相談役はいない。各顧問から専門領域について助言を受けることを制度の導入目的としており、経営陣へ助言する顧問はいない。社外からの専門家の招致、定年後の継続的な参画を通じて、取り組みのレベルアップを図っている。

3位は準大手ゼネコンの戸田建設(2人、27人)。経営等における豊富な知識と経験や専門的知識に基づく有益な助言等が得られている点を制度導入のメリットと捉えている。

4位は茶葉製品・緑茶飲料最大手の伊藤園(0人、27人)。同社もすべて顧問で相談役はいない。制度の導入目的には、現経営陣への助言や対外活動を挙げる。顧問の高度な知識やスキルを経営判断に反映することで、継続的な事業活動が行えることを導入のメリットとしている。

5位は最大手ゼネコンの一角である鹿島(1人、23人)。同社は制度の導入目的として、相談役・顧問による対外活動を挙げるほか、後任への引き継ぎなどのため必要な措置・制度と考えている。

以下、6位の三菱地所オートバックスセブン(相談役・顧問数23人。以下同)、8位のアジア航測artience(旧東洋インキSCホールディングス(グループ全体のデータ))(21人)、10位の日立造船横浜ゴム(20人)と続く。

6割近い企業が相談役・顧問制度を導入する背景

制度の導入目的として「能力・知見の有効活用」を挙げている場合が多い。「現状の組織の機能や人材では対応が難しい、知見・経験を必要とするさまざまな経営課題への柔軟な対応が可能となること」をメリットとして挙げている企業もある。


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そのほか、「役員退任者や定年退職者の能力・知見が、業界の発展や会社の業績に貢献できる」と判断しているケースもある。いずれにしろ、就任する相談役・顧問の知識や経験を生かしたいというニーズは共通しているようだ。

2018年に「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の記載要領が一部改訂され、会社代表経験者を相談役・顧問にする場合は、役割や処遇などの情報公開が求められるようになった。

つまり、投資家等に客観的な判断材料を提供して理解を得ることで、相談役・顧問制度を廃止するのではなく、同制度の活用によるメリットを享受するという選択肢を企業は選べるようになった。6割近い企業が相談役・顧問制度を導入している背景には、こうした制度に関する認識の変化もあるのではないだろうか。

1〜50位


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(佐々木 浩生 : 東洋経済『CSR企業総覧』編集部)