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巨大なフレームレス・サイドウインドウ

かつてのルノーは、今以上に勢いがあった。1980年代には、ミニバンのエスパスで市場を湧かせ、来る21世紀に向けて、ラグジュアリーなアヴァンタイムを投入。新カテゴリーの創出を狙った。

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デザイナーは、フォード・シエラやルノー・トゥインゴなど、斬新なスタイリングを得意とするパトリック・ルケマン氏。新型エスパス用プラットフォームの上に、アルミニウム製のボディフレームを構築し、FRPのパネルで大胆なフォルムを創出した。


ルノー・アヴァンタイム(2001〜2003年/英国仕様)

最大の特徴といえたのが、Bピラーのない巨大なフレームレス・サイドウインドウ。ドアを開くと、驚くほど広い開口部が出現する。ただし、極めてスタイリッシュではあるが、長く重いドアは構造的な負担が大きく密閉が難しい。

このドアの長さは、約1.4m。重さは片側だけで55kgあり、狭い場所での乗降性を考慮し、平行四辺形のヒンジが支えている。モノフォルムの頭上を彩る、サンルーフも巨大。新車当時は、量産車で最大の開口面積を誇った。

アヴァンタイムへ試乗したその頃のAUTOCARは、内容の方向性の乱れを指摘している。インテリアや乗り心地は快適志向でありながら、操縦性はスポーティ志向で、そのどちらも充分な水準には届いていなかったためだ。

ダッシュボードは未来的な見た目ながら、人間工学的な詰めが甘かった。シートは調整できる幅が狭く、リアシート側は空間に余裕がなかった。「大胆な考えですが、仕上がりは不完全。魅力の殆どは見た目にあります」。と、辛口に評価している。

魅力的なモダンクラシックとして再注目

欧州市場に用意されたエンジンは3種類。ベーシックなユニットが2.0L 4気筒ターボガソリンで、最高出力は164psと控えめ。最高速度は202km/hが主張された。

32.5kg-mと最大トルクに余裕があったのが、150psで2.2L 4気筒のターボディーゼル。6速MTを選択でき、最高速度は194km/hだった。


ルノー・アヴァンタイム(2001〜2003年/英国仕様)

トップユニットが、3.0L V6自然吸気ガソリン。最高出力は213psで、最高速度は6速MTなら220km/h、5速ATでは215km/hがうたわれた。ちなみに、AUTOCARのテストでは5速ATで206km/hを確認している。

この3択は、動力性能では目立った違いがなく、どれを選ぶべきか購入希望者を悩ませた。結果的に英国では、ディーゼルターボは殆ど売れていない。

英国でのトリムグレードは、ベースグレードの他に、2.0Lガソリンターボのダイナミックと、3.0Lガソリンのプリビレッジという2段階。欧州市場には、エンジンの種類によってヘリオス、エクスプレッションも設定されていた。

アヴァンタイムの販売は当初から伸び悩み、2003年に生産終了。生産数は8557台と少なく、右ハンドル車は英国で445台、日本へ207台が届けられたに過ぎない。

20年が経過した今、ユニークなコンセプトと大胆なスタイリングに、希少性も相まって、魅力的なモダンクラシックとして注目度は上昇中。専用部品の入手が難しいことが、維持するうえでの課題となっている。

オーナーの意見を聞いてみる

ルノー・アヴァンタイムの3.0L V6エンジン、プリビレッジ・グレードを15年間所有しているのが、ジョニー・エセックス氏。「2008年にロンドンで目にし、なんて素晴らしいクルマなんだと感動したんです。それが、購入したきっかけです」

「エセックス州からケント州まで、通勤に使ってきました。低速域では僅かにタイヤから振動が伝わりますが、素晴らしい高速クルーザーですよ。ATの方が、クルマの個性には合っていると思います」


ルノー・アヴァンタイム(2001〜2003年/英国仕様)

「走行距離は10万kmを超えたところ。点火コイルとスターターモーターの故障、ハンドブレーキ・ケーブルの伸び、燃料タンク上部からのガソリン漏れなどを解決してきました。定番といえる不具合のようです」

「今はアヴァンタイム・オーナーズクラブの管理人の1人で、英国に存在する96%のアヴァンタイムを把握しています。どのオーナーも大切に乗っていて、英国で販売されたボディカラーをすべてコレクションしている人もいるんですよ」

「自分のクルマでも、アヴァンタイムを見る度に笑顔になってしまいます。ガソリンスタンドでは、わざわざ近寄ってきて褒めてくれる人もいるほどです」

英国で掘り出し物を発見

ルノー・アヴァンタイム・ダイナミック 2.0(英国仕様)

登録:2003年式 走行:21万7400km  価格:4500ポンド(約85万円)

モナコブルーとシルバーのツートーンが魅力的。走行距離は長いものの、しっかり整備されてきた1台だ。フルレザーのインテリアは、新調したばかりとのこと。

ルノー・アヴァンタイム・ダイナミック 2.0(2003年式/英国仕様)">

ルノー・アヴァンタイム・ダイナミック 2.0(2003年式/英国仕様)

ホイールはパウダーコーティングし直され、ボディは部分的に再塗装されている。タイミングベルトも、6000kmほど前に交換済み。これまでの整備記録もひと通り揃っている。現在残っている不調は、CDチェンジャーとエアコンだという。

ルノー・アヴァンタイム・ダイナミック 2.0(英国仕様)

登録:2003年式 走行:12万8200km  価格:3950ポンド(約75万円)

お手頃価格の、2.0Lエンジンを積んだアヴァンタイム。塗装やホイールのコンディションは良好だという。走行距離は年式としては短めといえるが、オリジナルのキーと整備記録が残っておらず、改ざんされた可能性もゼロではない。

ただし、タイミングベルトは最近交換され、写真も残っている。ハーフレザーの内装も状態は悪くなさそう。フロントガラスにヒビがあり、交換が必要とのこと。

この続きは、ルノー・アヴァンタイム UK版中古車ガイド(2)にて。