お金に好かれる人はどんなことを考えているのか。ファイナンシャルプランナーの立川健悟さんは「お金で直接買えないものを大事にする。だから彼らの住む家は駅近が多い」という――。(第3回)

※本稿は、立川健悟『お金持ちは合理的』(すばる舎)の一部を再編集したものです。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio

■お金持ちは駅近が好き

お金持ちは、お金で直接買えないものにこそ価値があることを知っています。たとえば自宅から職場への通勤にかかる時間には、値札が付いているわけではないので直接買うことはできません。

しかし、たとえば現在の月給を労働時間で割って実質的な時給を計算すれば、通勤にどれくらいの費用がかかっているのか算出できます。あるいは、電車通勤なら定期代で、車通勤ならガソリン代などで、おおよその費用を計算することもできるでしょう。

通勤にかかっている時間は、決してタダではないのです。お金持ちは、こうした「時間コスト」にも敏感なのでしょう。通勤時間を最短にできる駅近物件を自宅として賃貸したり保有したりしている方が、かなりの割合を占めます。

もちろん、駅近の不動産となると家賃や価格もそれなりに大きなものになりますが、お金があるのでその点はほとんど気にしません。毎日、少しずつ積み重なる通勤時間を短縮することは、駅近物件に費やす金額よりも大きな価値があると判断しているのです。

ちなみに不動産オーナーや地主の方は、勤めに出ていないこともよくあります。しかしそれでも、日々の生活が便利で、病院やスーパー、よく使うお店、子どもの教育施設や行政関連施設などが集まっている駅前の栄えた場所に、徒歩数分でアクセスできる位置に自宅を構えているケースが多数派です。

■意外にもタワマンは不人気

代々の地主のような伝統的なお金持ちは郊外の豪邸に住んでいることもたまにはありますが、ここ1、2代のうちにお金持ちになったような方の場合には、ほとんどが駅近に住んでいます。

また、セレブなイメージのあるタワーマンションに住んでいる方は意外にも少ない印象があります。

相続税の圧縮効果がいずれ使えなくなることを見越したうえで、ちょっと買い物に出るのにもエレベーターでの移動が必須となる上層階での暮らしは、必ずしも住みやすいものとは言えないのではないか、またその住みごこちに比べて価格が高すぎるのではないか、という判断をしている方が多いのかもしれません。

いわゆる普通の分譲マンションの、最上階でもない中層階の少し広めの間取りの部屋に、ひっそりと暮らしているお金持ちはとてもたくさんいます。

生活や通勤の時間コストを節約でき、郊外の豪邸に比べて気軽に友人も呼べ、高額なタワーマンションのようにコストパフォーマンスが悪化していない駅近物件。

お金持ちとは、こういう“お金だけでは買えない価値”を手にするためなら、そして、それが自分にとって納得いくものであれば、惜しみなくお金を出す人たちです。

■お金持ちの情報収集手段

自宅の位置で短縮できる通勤時間と同様に、自分の頭の中にインプットされる知識にも、わかりやすい値札は付いていません。

しかし、繰り返しますがそういう“直接お金で買えないもの”こそが、人生を有利に、安全に生きていくには決定的に重要であることを、お金持ちはよく知っています。

そのため、新しい知識や情報、あるいは最近はやりの「リスキリング」のように、新しい技能やノウハウを身に付けられたり、友人・知人との会話に利用できたりする情報源には、惜しみなくお金を出すのも彼らの特徴です。

そうした情報をいち早く入手するのに手間を惜しむこともありません。ちなみに、お金持ちの方にオススメの情報収集手段を聞くと、ほぼ全員が一致して「本がよい」と答えます。

もちろん人によって違いがありますが、毎月何冊も本を買っている読書家のお金持ちは、実際に非常に多いと感じています。

写真=iStock.com/Kriangsak Koopattanakij
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kriangsak Koopattanakij

アメリカのBusiness Management degreeという雑誌に掲載された、読書量を調べた研究データによると、アメリカ人の富裕層のうちおよそ88%は、1日30分以上はビジネス書などの本を読んでいるとのこと。日本も同じ先進国ですから大勢は変わらないでしょう。

お金持ちのほうが本を多く読んでいるのは、一定の根拠があるという話です。

マイクロソフトの元CEOであるビル・ゲイツ氏は大の読書家として知られています。夏休み前や年末に、自身が読んだオススメ本を投資家に紹介することが恒例となっており、毎年注目を集めています。

■なぜテレビやネットではだめなのか

お金持ちの方々に言わせると、「テレビは原則として無料で視聴できるけれど、世間ですでにはやっていることを後追いする媒体だから情報鮮度が悪く、時間効率も悪いため最近は視聴時間が減った。またネットの情報は全体像を部分的に切り取ったものばかりで、必ずしも信頼が置けない。それに比べると、本は出版社が編集しているためある程度は信頼できるし、1冊読むことでその分野の知識を体系的にインプットできるのでよい」とのことです。

大変好奇心が旺盛なある知り合いのお金持ちは、「本は発売された時点での世間のニーズやトレンドを示していることが多いから、情報のインプット源としては最適だよ」とも言っていました。

お金持ちの方は、そうした書籍からの情報を少しでも早く手に入れるため、本を買う際には発売日前にネットで予約注文を入れ、発売当日に届くようにしていることもよくあります。

本を発売日に買うことで、最新かつ信頼性の高い情報をいち早く手に入れられますし、その最新情報を誰かに話すことで話のネタにすることもできるからです。

■本に支払うお金は自分への投資

お金持ちのお宅を訪問したとき、私がまったく知らない新しい知識や考え方を教えてもらい、そのあとに「実はこれ、今日発売の本に書いてあったんだけどね」と笑顔を向けられたことは、一度や二度ではありません。

「今日出たばかりの本の内容を知っている人は少ないから、そこに自分の意見や価値観などを少し加えて周囲に話すだけでも、すごい人だって勝手に勘違いしてくれるんだ(笑)」と教えてくれたお金持ちの方もいました。

いずれにせよ、信頼できて新鮮な情報には値段が付けられない価値があると考えて、積極的に買いに行っているのがお金持ちです。

私自身、「本を読むだけで、どんどんまわりと差が付くよ」と話してくれたお金持ちの言葉をきっかけに、本に支払うお金は自分への投資だと考えて、あまり制限せずに使うようにしたところ、仕事はもちろん私生活でも大きな変化が生まれたと実感しています。

興味のある本は必ず事前に注文し、発売日に自宅へ届くように手配していますし、書店に行けば「本日発売」のコーナーを必ず見るようにしています。みなさんも、ぜひ参考にしてみてください。

■パックではなく量り売りの食品を好む

「ウチの家族はお肉好きで、あればあるだけ食べちゃうから、パックのお肉は買わないの」そう話してくれたのは、とあるお金持ちの女性です。

時間や知識と同様に、「健康」もお金だけでは買えないプライスレスな貴重品。お金持ちは、お金では買えないものこそが人生にとって本当に大事なものだと理解していますから、健康を気にかけている人の割合が大きい印象があります。

ところで、健康のためにはバランスがとれた適度な量の食事、そして運動が欠かせません。一方で食欲というものは、生物としての原始的な欲求であるためか、どんな人にとっても制御するのが難しいものです。目の前に甘いお菓子や美味しそうな食べ物があれば、誰だってついつい食べすぎてしまいます。

このお金持ちの女性は、そうした家族や自分の意志の弱さをわかっているので、家族みんなが大好きなお肉については常に“量り売り”を利用しているとのことでした。パックのお肉では細かい量の調整が難しく、少し多めに料理を作ってしまうことも多いため、毎回、必要な量だけを買うようにしているそうです。

そもそもお金持ちの方も、毎日の食事は普通に家で作っている方が大半です。自宅にまで有名シェフに出張してもらって高級料理を食べるのはセレブイメージの定番ですが、あれはあくまでハレの行事。メイドさんや使用人に料理を作ってもらうのも、王族レベルのごく一部のスーパーセレブだけの世界です。

大半の家庭では普通にスーパーで食材を買ってきて、家で調理しています。そのほうがコスパもいいですし、健康にもよいからです。例として紹介した女性と同じように、量り売りを利用しているお金持ちの方々も結構多いように思います。

■食べ放題の店には行かない

お金持ちは、常に適量の食事をとることを意識している人が多いため、食べ放題やビュッフェ形式のレストランは概して不評です。

これらの形式のレストランでは、たくさんの種類の料理が並べられているので目移りしてしまい、ついあれもこれもと食べたくなってしまうものです。

立川健悟『お金持ちは合理的』(すばる舎)

行動経済学的にも「お金を払っているのだから、時間制限ギリギリまで食べて、少しでも元をとろう」と考える「サンクコスト効果」がはたらくとされます。

結果、気が付けば食べすぎてしまい、お腹も苦しくなりますし、中長期的に見れば健康に悪影響があることは確実でしょう。そのため、最初からそういうお店には行かない、という合理的な判断をするお金持ちが多いようです。

食べ放題やビュッフェ形式のレストランは一般の方には人気がありますが、それは「少しのお金でより多く食べられるのがお得」というコスパ優先の考え方を、プライスレスな健康にまで適用してしまっている状態です。

健康はお金では買えませんが、不健康はある意味、お金で買うこともできると言えるのかもしれません。

お金持ちは健康などのお金では買えない貴重なものに、コスパ優先の考え方はなじまないことをよく知っています。私たち自身の健康のためにも、彼らの考え方を見習いたいものです。

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立川 健悟(たつがわ・けんご)
ファイナンシャルプランナー
1980年、広島県生まれ。30歳のとき、新卒で入社した会社を辞め、不動産テック系のベンチャー企業へ転職。業界内の新規契約数で日本一となり、その実績を認められ執行役員に就任。その後、会社が株式上場を果たした際、主要株主の一人だったことで金融資産が3億円を超え、自身も富裕層の仲間入りを果たす。築き上げた資産を賢く使うための金融知識を持ち、自身の経験をもとに人生を豊かに生きる人を増やしたいとの想いから、ファイナンシャルプランナーに転職。「マネー現代」「Forbes JAPAN CAREER」などに寄稿。『お金持ちは合理的』(すばる舎)が初の著書。
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(ファイナンシャルプランナー 立川 健悟)