日本全国に広がるコンビニエンスストア。「コンビニの勢力」を可視化してみました(写真:papa88/PIXTA)

昨今、ITを利用してさまざまなデータを集めることができます。しかし、データを漠然と見ていても、そこに隠された本質にたどりつくことは簡単ではありません。これを防ぐ1つの方法がデータの「可視化」です。可視化することで「思い込み」にとらわれていたことに気が付いたり、意外な事実を発見できたりすることがあります。ここでは、『ビジュアルでわかる日本』の著者である、「にゃんこそば」さんが、「コンビニの勢力」を可視化してみました。

現在も続くコンビニ「戦国時代」

日本全国、津々浦々に広がるコンビニエンスストア。遠くの街に出かけたときにも「だいたい、そこにある」という安心感が素敵ですが、地域によってセブン-イレブンばかりを見かけたり、またある地域ではご当地コンビニがまとまっていたりと、意外と地域差が大きいと感じます。

この地域差を可視化するために「コンビニ勢力図」を作成してみました(図1)。コンビニ大手6社を対象に、各市区町村を「店舗数が一番多いブランド」で塗り分けたものです。同率1位のブランドが複数ある場合、全国で店舗数が少ないほう(マイナーなほう)の色をつけました。


図1:(全国)店舗データを可視化すると、主要3社が得意な地域が一目でわかる

全国約5.7万店舗のコンビニチェーンのうち、一番多いのがセブン-イレブン(2.1万店)。業界2位のファミリーマート(1.7万店)に差をつけているものの、全国を“平定”できているわけではないことが読み取れます。大まかな傾向としては、関東地方と中国、九州北部ではセブン-イレブンが優位、中部地方ではファミリーマートが優位、東北北部や山陰、四国などではローソンが陣取っています(図2、3)。

地域差が生じる理由に、コンビニチェーンの統廃合


図2:(西日本)山陰地方や対馬、五島列島では、ポプラからローソンへの転換が進んでいる


図3:(東日本)中部地方ではサークルKがファミリーマートに吸収された

このような地域差が生じる理由の1つに、コンビニチェーンどうしの統廃合の歴史があります。かつて、名古屋などの中部地方にはサークルK(愛知県の総合スーパー「ユニー」傘下)が広がっていたのですが、2004年にサンクスと合併、さらに2016年にはファミリーマートと経営統合し、2018年までにすべての「サークルKサンクス」がファミリーマートに置き換わりました。

広島で生まれたポプラ(生活彩家、スリーエイトを含む)も、ローソンとの共同運営を徐々に進めています。こちらはファミリーマートと異なり、ポプラの店舗運営が一部継承されているのが特徴で、両社の共同ブランド店舗「ローソン・ポプラ」では、ポプラ時代に人気を博したポプ弁(あったかいご飯を後から詰める方式の弁当)が健在です。

北海道では大手チェーンより強いセイコーマート

北海道には本州と違う色が広がっていますね(図4)。地場のコンビニ、セイコーマートです。


図4:(北海道・東北)セイコーマートが北海道民の暮らしを支えている

セイコーマートは1971年に札幌で開業したコンビニチェーンで、2023年8月末現在、道内に1090店、本州に96店を構えています。もともと酒の卸売業を展開していた強みを活かして、取引先の酒屋をコンビニに業態転換。さらには弁当などの製造、流通を自社グループ内で行うことで仕入れコストを削減し、札幌から過疎地や離島までをカバーする一大チェーン店に成長していきました。店内厨房で調理する弁当や総菜「ホットシェフ」が人気です。


コンビニの陣取り合戦には「早い者勝ち」の側面が大きいため、セイコーマートの牙城と言える北海道(とくに道東、道北)には大手チェーンが長らく参入してきませんでした。

2023年8月、稚内市内にローソンが2店舗オープンしましたが、それまでの間、ローソンは約150キロ南(オホーツク海側)の紋別郡雄武町が最北でした。

セブン-イレブンは中川郡美深町(旭川と稚内の中間地点)、さらにファミリーマートは滝川市(札幌から旭川までの道のりを3分の2ほど進んだところ)までしか進出できていません。

セイコーマートの守備は堅く、この勢力図は今後もしばらく変わりそうにありません。

激しい競争が続くコンビニ業界。5年後、10年後の「コンビニ勢力図」はどうなるのでしょうか。

(にゃんこそば : データ可視化職人)